表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すれ違い  作者: 北西みなみ
蛇足編
23/27

フィアの大好き! カイルさま日記

注:これは、カイル日記です。カイル部分だけ抜き出して読んでいるものです。本当の日記だと、流石にもっと他の人とのことを書いてます。誕生日なのに、カイルとの思い出しか書かないほど、フィアナの世界は狭くないです。

○月一日

 明後日は、待ちに待ったカイル兄様が来る日。

 この日のために、一週間分のお勉強を先取りしておいたので、毎日の反復以外は、全部カイル兄様といられる。

 本当は、私の部屋で一緒に寝たかったけど、今回は駄目だといわれて、お客様のお部屋に泊まるらしい。客室は狭いので騒げないけど、その分近くにいられるから、客室で泊まるのも面白そう。寝巻きで廊下を歩くのはいけないので、寝巻きを持っていって、あちらで着替えればいいかしら。次の日の着替えも忘れないようにしないといけないので、持っていくもの多そう。メイドに持ちやすい籠を用意してもらおうかな。


○月二日

 お母様に叱られた。自分の部屋で寝るんじゃなくて、一緒に寝るのが駄目なんだって。カイル兄様にぽんぽんってしてもらうとよく眠れるのに。淑女は一人で寝るものよって。つまらない。


○月三日

 今日は、カイル兄様がきた。

 私にはお花の形の飴をくれた。とっても嬉しい! お母様とお姉様には、まぁるいチョコレートを持ってきた。一つ分けてもらったけど、苦かった。あんなの食べられないけど、お母様たちはとっても美味しいみたい。

 私ももっと大きくなれば、あれが美味しくなるのかしら? そう思うと、とっても可愛いお花の飴が、少し子供っぽく見えた。カイル兄様は、大人の女の人がお好きかしら?

 

○月四日

 今日は、カイル兄様と街に行った。きらきらの小物を見ていたら、カイル兄様が消えた。慌てて追いかけたら、何か買っていたみたい。すぐに隠されてしまったけれど、……うさぎさん? カイル兄様、ぬいぐるみがお好きなのかしら? フィアのお気に入りの子をあげたら喜ぶかなぁ?


○月五日

 朝、カイル兄様のお部屋に行ったら、カイル兄様がいなかった。代わりに、昨日のうさぎさんがお手紙持ってた。

 フィアナへって書いてあるので見てみたら、『誕生日おめでとう。ボクとボクの首に掛かってるものは、この部屋に泊まっている人間からのプレゼントだよ』って書いてあった。

 うさぎさんは、きらきらの宝石が付いた指輪の紐をぶら下げてた。すごい! フィアの指にぴったり! 宝石を光にかざしていると、カイル兄様が「気に入ってくれた?」って。思わず抱きついちゃったけど、誕生日だったからかな? 注意せずにぎゅーってしてくれた。カイル兄様、大好き!


○月六日

 今日はお兄様がカイル兄様を独り占めしてしまった。私だって一緒にいたいのに、お兄様が連れていってしまうと、追いつけない。一体二人で何を話しているの?

 つまらないので、お庭を見ていたら、ちょっとうとうとしたみたい。起きたら、カイル兄様が優しく「おいで」って手を差し出してくれた。戻ったら、お昼の時間を過ぎていたから怒られたけど、カイル兄様が庇ってくれた。お昼の後は、カイル兄様をとられずにすんだ。ずーっとくっついていたので、お兄様は諦めたみたい。


○月七日

 今日は、近くまで用事があって来た、というキルトン一家が、挨拶に寄ってきた。

 キルトンには、私達と同年代の子供もいる。せっかくカイル兄様と一緒にいたのに、子供は子供同士、と、キルトンの相手をすることになった。だけど、私と同い年の女の子が、カイル兄様を気に入ったらしく、ひたすらカイル兄様を追いかけていた。私がカイル兄様と一緒にいると、必ず間に割って入って、自分の方に顔を向けさせた。おかげで、キルトンが帰るまで、カイル兄様と殆ど話せなかった。

 お兄様は、可愛い子だったじゃないか、と笑っていたので、カイル兄様もそう思う? と聞いたら、そうだね、と言われてしまった。だけど、フィアとどっちが可愛い? って聞いたら、フィアナ以上に可愛いものなんてないよって。えへへー。カイル兄様の一番はフィアなの。フィアもカイル兄様が一番なのよ。


  :

  :

  :


○月四日

 今日は、カイル様はクラスの方に頼まれて、街へ行ってしまった。いつもクラスの方は「一緒にどうですか?」と聞いてくださるのに、今日は「沢山寄る所があるのでごめんなさい」と言われてしまった。残念。

 クラスで待たせてもらったけれど、本当に色々回ったらしく、戻ってくるのが遅かった。けれど、待っていると言ったわけでもない私に「待たせてすまない」と言って、きゅっと抱きしめてくださったので、少し恥ずかしかったけど、幸せ。

 その後は二人のお茶会。カイル様はいつも、私の髪をいじってキスをする。周りに誰もいないときなら、髪じゃなくてほっぺでもいいのよ? って言ったら、してくださるかしら? 恥ずかしくて、言えないけれど。


○月五日

 侍女に、庭を見ろと言われた。何かと思って見てみたら、何とカイル様がいらっしゃった。え!? と見直していると、文字が書かれている紙を向けられた。えーと。「お」「め」「で」「と」「う」。「おめでとう」だ! 夜なので、叫びたいのもとんでいきたいのも我慢して、大きく手を振った。私のありがとうに気付いたカイル様は、にっこり笑って、闇の中へ消えていった。

 暫く見送って、くるっと振り向くと、机の上に可愛い犬のぬいぐるみが。慌てて、咥えている手紙を見る。

 『誕生日おめでとう。どうしても一番にお祝いしたかったので、皆に協力してもらった。他の者の就寝の邪魔をしないことを条件に、庭にいく許可をもらったので、心配はいらない。本当は応接室で会いたかったが、許可が下りなかった。朝になったら、今までの分まで祝わせてほしい。まずはよい夢を。   カイル・グラント』

 思わず、わんちゃんをぎゅむっと抱きしめてしまった。形崩れてない? ごめんね、わんちゃん。

 朝、なるべく誰にも会わないように一気に外へ。やっぱり、カイル様が待っていてくださった。改めて「誕生日おめでとう」と言われ、幸せになる。一緒に朝ご飯を食べ、お昼も一緒。プレゼントはカイル様の瞳にそっくりなアイスブルーの石。イヤリングとネックレス、指輪に髪留め。それから花束をくれた。色とりどりのガーベラに、かすみ草の、とっても可愛い花束。

 思わず抱きついたら、耳元でそっと「生まれてきてくれてありがとう」って。それから、泣き出しちゃった私の瞼に、頬に、そしてそしてそして、唇に、ちゅって。きゃー!! どうしましょどうしましょ! 思い出すだけで叫びだしたくなっちゃうこの気持ち、どうすればいいの?


○月六日

 今日は、手を見てはうっとり。胸元を見てはうっとり。耳で揺れる感触にうっとり。部屋に戻れば、花の香りにうっとり。

 本当は、全部つけるのは生徒としてはどうかと思うので、明日からは髪留めと指輪くらいにする予定だけど、今日は特別。カイル様に見せたら、とっても優しく、可愛いと褒めてくださった。

 とっても幸せなので、カイル様のお誕生日にはどうしようか考えていたら、カイル様に悩んでいるのがばれてしまった。カイル様は、プレゼントなら、私がいいって。一日、カイル様のことだけを考えて、カイル様だけを見て、カイル様と過ごす。他の人のことは考えず、話題に出したりもしないこと。今年は丁度休日だし、カイル様がそう望むので、それは実行しようと思う。だけど、それとは別に、何か形になるものを送りたい。時間はまだまだあるので、今度探してみようと思うけれど、学園に商人を呼ぶのはどうすればいいのかしら?

 そのまま悩んでいたら、余所見をしないで、と言われてしまった。ごめんなさい、カイル様のことを考えていたのだけれど。


○月七日




カチャ。


扉の開く音に、日記を閉じ、後ろ手に隠そうとする。


「お待たせいたしまし……って、きゃーっ!」


が、ばれた。まぁ当然か。


「ななな、何勝手に見てますの、カイル様!」


耳も手も真っ赤になったフィアナに、日記をひったくられる。


「いや、ちょうど目に入ってしまって。いつもくれていた手紙と似たような内容なのだろうな、と、つい」


「ひ、人の日記を見るなんて許されませんのよ」


涙目で上目遣いのフィアナも可愛いな、と思いつつ、ここは素直に謝る。確かに勝手に見ていいものではなかった。


「すまない。もっとフィアナを知りたくて。今度はきちんと聞いてからにする」


「う、あ、な……」


湯気の出そうな赤さで、口をパクパク動かすフィアナに謝り、指に髪を絡める。そのまま顔を寄せようとして、ふと日記の内容が思い出された。


ふむ、と考え、そのまま頬に唇を落とす。フィアナは反応を示さない。まだ怒っているようだ。だが拒否されないということは、二人きりなら頬にしてもいいというのは本当なのだろう。いいことを知った。これからは、挨拶だけでなく、いつでも頬にすることにしよう。


私はすねて動かなくなってしまったお姫さまを膝に乗せ、必死に謝った。


その途中、鼻の頭を甘噛みした私に顔を見せまいとばかりに、胸に頭突きをして俯いてしまったフィアナが機嫌を直してくれたのは、それから数時間後のことだった。

本人は謝ってるというカイルさん。傍から見りゃ、口説いてます。必死になればなるほど口説き度があがります。対フィアナにおける通常運転です。使用人は、平常心を保つスキルはMaxレベルで所持してます。

しかしカイルが基準のフィアナ、例えカイルと別れたとしても、他の人が口説いてきても、それと認識しなくなっていそう。。


因みに、カイルのプレゼントの石は、ブルーオパールとアクアマリン、ブルーダイアモンドです。ん? ブルーオパールは殆どトリートじゃないかって? いやいや、天然ものもないわけじゃないですよ。ほぼ透明な青に近いコモンブルー。カイル君は、物凄く頑張って探したのです、はい。


花言葉は、ピンクのガーベラ:感謝、白のガーベラ:希望、赤のガーベラ:愛情、黄色のガーベラ:優しさ、オレンジのガーベラ:君は僕の太陽、かすみ草:永遠の愛、です。宝石言葉は、オパール:幸福、アクアマリン:幸せな結婚、ダイアモンド:永遠の愛、です。色付きだとちょっと違う、とか言うのは気にしちゃいけないところです。宝石言葉も花言葉も、複数あるので、自分の好きなものを採用すればいいのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ