第三羽 手助けを
「モルクさん、何か力になれませんか?」
「ん?」
「私はこれでも冒険者です。強さでならそれなりに力になれるかもしれません」
「あ、うん」
グッと両手の拳を握って言えば生返事を返すモルクさん。
(それなりって、Sランクパーティを敗走させた魔物を、目の前でワンパンで倒しておいて何を言ってるんだ)
何故か理解できないものを見るような目を向けられてしまった。やはり見た目が子供だから信用されないのでしょうか?
エコ志向で抑え気味だったのですがもっと派手に蛇を倒すべきでしたかね?
「ううむ……」
「会長!!」
悩む素振りを見せるモルクさんに、店から出て駆け寄ってくる人が1人。眼鏡をかけた真面目そうなかわいらしい女性です。馬車とモルクさんに視線を何度か往復させたあと、少し怒ったように彼に詰め寄った。邪魔にならないようにそっと避ける。
「本当に物資を持ってきたのですか!? 危ないのはわかっていましたよね!?」
「あー、まあね。アレキサンダーなら行けると思って……」
「無事だったから良かったものの……!! 噂の魔物に出会っていたら貴方が危険だったんですよ!」
「あー……うん。ごめんね?」
さすがにこの流れで出会ったどころか襲われて死にかけましたなんて言い出す勇気はモルクにはなかった。同時に隠したままでいる事もできそうにもない。
「全く……。でも会長のおかげで在庫不足が解消出来そうです。ありがとうございます。皆を呼んで荷物を下ろしましょうか」
「あー、それなんだけどね……」
バツが悪そうに顔を掻いたモルクは観念して白状することにした。
「はい、どうしました?」
「荷物なんだけど、……無いんだ」
「……え? 耳が遠くなってしまったみたいなのでもう一度お願いしてもいいですか?」
「だからね、荷物全部落としてきたんだ」
「え……ええええ!? な、なんでそんなことになったんですか!?」
「噂の魔物に襲われちゃってね……」
「えぇぇ!? 大丈夫ですか!? いやここにいるって事は無事だったんですよね!? 足ありますよね!? 良く逃げ切れましたね!?」
「化けて出たわけじゃないから大丈夫だよ。それと逃げ切れなかったけどそこのメルさんが倒してくれたんだ。メルさん。この娘は私の秘書をしてくれているダラムだ」
「あ、どうも。初めまして、メルと言います。よろしくおねがいしますね、ダラムさん」
「あ、はい。ご丁寧にどうも。ダラムです。………………へ?」
ペコリと腰を折って会釈すれば同じように返してくれる。頭を上げたダラムさんが、そこでピシリと固まった。
私とモルクさんの間を視線が高速で右往左往する。忙しそうな人ですね……。
「この子が……あの魔物を……? 本当に?」
「信じづらいかもしれないけど、私が嘘を吐かないのは知っているだろう?」
それを聞いたダラムさんの表情を見て、私はすぐさま耳を塞ぐ。
そうすればすぐにダラムさんは地を震わせるほどの叫び声を上げたのだった。
……ごめんなさい。さすがにちょっとうるさいです。
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