第39話 ママの力は無限大
ひとりで勝てないなら、ふたりで戦えばいいっ!
なんでこんな簡単に気づかなかったんだろう。
リーたんとなら絶対に負ける気がしない。
力がみなぎってくる。
すごい。世界がキラキラ輝いてる。
「だが、付け焼刃の連携など無意味」
「そうかしら、ねっ!!!」
見せてあげるわ、私たち親子の絆!
「初手から突撃など、愚の骨頂!!!」
そりゃ普通にカウンターされますよね。
でもっ!
「ミースっ!」
「うん!」
こっちだねっ!
「な――っ!」
ビンゴ!
左に急旋回したら、リーたんの氷魔法が脇スレスレに通り過ぎて行って――オーク将軍の眉間に直撃!
最高の気分ね!!!
「ふふん。どうかしら?」
「まぐれか……?」
「今から証明してあげる、わっ!」
ほら。
また突っ込んであげるわよ。
「ミース!」
「ほいさっ!」
今度は、右!
左!
ジャンプっ!
「ぐっ、ぬぅ……!」
あはははははははははは。
さいっっっっっっっっっこう!!!
リーたんの魔法、全部直撃してるじゃん!
これ、めっちゃ楽しいかも!!
「ふざけるなぁっ!」
「甘いっ!!!」
どう?
私に隠れて、リーたんが見えないでしょ?
あなたがリーたんの魔法を見た時には、すでに避けられる距離じゃない。
一瞬でも間違えれば私が魔法を受けちゃう。だけど、そんなことはありえないのよ!
こっちはずっとずっとリーたんのことを考えて生きてるんだ!
リーたんの考えなら手に取るようにわかる。
声を聞けば、全部理解できちゃう。
「ミース……!」
「……なるほどねっ!」
「もう見破ったぞ。このタイミン――ぬおっ!?」
あはははははははっ。
リーたんの考えていた通りだ。
そろそろタイミングを見切られる。だから、合図から少し遅らせてからの魔法発射。
合図直後の魔法。
タイミングをずらした魔法。
織り交ぜたら、絶対対処できないでしょっ!
「このっ、鬱陶しい!!」
「私のリーたんに手を出そうとすんじゃないわよ!」
「……ぐっ」
よしっ。
関節を狙えば、私でもひるませることぐらいはできた。
これならリーたんに近づくことも防げる。
「まだまだこれからよっ!」
「舐めるなあああああああああああああああああああ!!!」
うそおおおおっ!!!!
オーク将軍、手からビームみたいなものを出してきたんだけど……っ!
まだそんな力があったの!?
武闘家じゃなかったの!?
「……ミース」
背後にはリーたんがいるし、私が止めるしかないっ。
「こんのおおおおおおおおおおおおおお!!!」
踏ん張れ、私の足。
私の腕。
多分、これは相手の切り札。
もうボロボロで限界なのはわかってる。
でも、
これをしのげ切れれば、私たちの勝ちなんだからっ!
「――っ!」
でも、やばい。
リーたんが魔法で援護してくれているけど、押し負けてる……っ!
あーもー!
腕がちぎれそう!
足もガクガクっ。
息を吸うのも辛いし、もう体力の限界。
水のドレスでも防ぎきれてないし、皮膚が焼けていくっ!
このままじゃ、ふたりとも死んじゃう。
……こうなったら、なんとかリーたんだけを蹴り飛ばして――
「負けないで、ママぁっ!!!!!」
……………………
………………
…………
えっ。
うそ…………。
今、リーたんがママって言った!?!?
うそ。
ありえない。
いや、現実じゃん、これ。
ついに言ってもらえたんだよ。
ママって。
こんなの、諦めるわけにいかないじゃん!!!!
どこにいるのよっ。
娘を置いて死ぬママなんて!!!
痛みなんてなんぼのもん!
疲れなんて吹っ飛んだ!
私の細胞ひとつひとつがリーたんの『ママ』に喜んで、暴れまわってる!!!
これなら――っ!
「私の娘は宇宙いちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
こんな逆境ぐらい、跳ねのけられちゃうんだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……はあ……はあ……」
もう体が動かない。
さっきの状態は火事場の馬鹿力ってあつだったのかな。
もう立ち上がるのもやっと。
あいつは……?
オーク将軍は……?
「まだ、まだだっ!」
よかった。
あっちも力を使い果たしていたみたい。
というか、消えかけてる。
「俺はまだ魔王様に……拾って頂いた恩に報い切れていない。こんなところで死ぬわけにはいかないのだっ!!!」
すごい。
まだこんな声を出せるなんて。
それだけ、魔王様への忠誠が大事なんだね。
「いい戦いだったよ」
「……慰めなどいらん」
あら、素直じゃないわね。
「あなたはすごく頑張ってた。それは戦っていた私が一番知ってる」
「……だが、俺は負けた」
「そうね。でも、正々堂々と戦ってくれた。ありがとう」
オーク将軍。
ずっと卑怯な手を使っていなかったのよね。
周囲の魔物をけしかけることもできるはずだったのに、2対1になってもしてこなかった。
「慢心していただけだ。なあ、俺はどうして負けた?」
「うーん、愛が足りなかったんじゃないかな。最後の最後に踏みとどまるための力だから」
「ははっ! そうか。愛か……。そんなもの、魔物にはないな。口惜しいな」
…………あ、消えちゃった。
強力な魔物が死んだら灰と魔力になって消えちゃう光景って、すごく不思議。
「ママっ!」
「……リーたん、動いて大丈夫なの?」
「こっちのセリフ!」
ああ、生きていてよかった。
リーたんを抱きしめられる。
「ごめんね。リーたん、ちゃんと話し合わなくて」
「わたしこそごめんなさい……。わたし、ミースと一緒にいたいっ。このアンファンスで暮らしていたい。魔法学校にも魔王軍にも行く気なんてないから……」
そうだったんだ。
嬉しい。
「改めてよろしくね、リーたん」
「……うん!」
よかった。
雨降って地固まるって言うんだっけ、こういうの。
「……ん?」
あれ?
何このジェット機みたいな音……。
――って!
空から何か飛んできてるんだけど!?
何事!?
新手!?!?
「ミースさん、無事かい!?」
「あれ、領主様、どうして……?」
「魔王軍襲来の報を聞き、文字通り王都から飛んできたんだ」
わーお。
馬車で10日以上かかるはずなんだけど。
相も変わらず規格外。
「まさか魔王軍幹部を倒したの!?」
「まあ、そうですけど……」
「もっと詳しく――」
あ、ちょっと待って。
「し――――っ」
「……ああ」
リーたん、私の膝の上で寝ちゃった。
それだけ疲れたんだよね。
頑張ったんだよね。
偉いぞ、リーたん。
「それでは、お話は改めて。報酬になんでも願いを叶えてみせるから、考えておいて」
「はい」
願いかぁ。
パッと何も思いつかないなぁ。
「……すー……すー……」
リーたん、とっても気持ちよさそうに寝てる。
膝から重みを感じる。
寝息もかわいい。
ああ、この気持ち、どうやって言葉にしよう。
「生まれてきてくれてありがとう。リーたん」
ただ、今はこの子と一緒にいる幸せを噛みしめていたい。
それが私の願いかな。
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