第38話 ママはいつでもやってくる
本当に危なかった……。
魔物、多すぎるでしょ。
途中かなり強いオークに出会ったし、かなりキツかった……!
でも……でも……っ!
ギリギリ間に合ったっ!!!
リーたん。
ああ。
リーたんだ。
この青い髪。
青い瞳。
かわいい顔。
小さな体。
ミントみたいにさわやかな匂い。
どこからどう見ても、リーたんそのもの。
やっと会えた。
ずっとずっと会いたかった。
抱きしめたかった。
いっぱいおしゃべりして、ごめんねって言いたかった。
だけど、それは後だよね。
この魔王軍をなんとかしてから。
とりあえず、今はこれだけは伝えておきたい。
「リーたん、おかえり、大好きだよ」
「……ミース、来たんだ」
「当たり前でしょ。私は」
もっとカッコつけた方がいいのかもしれないけど、これが私の本心。
「お前……」
「久しぶりね」
オーク将軍。
これがはじめましてじゃないのよねぇ。
キノコ山でバトって痛み分けになったことがあるのよ。
領主様とも出会っていたし、本当に重要なイベントだったのねぇ。
まあ、私にとってはリーたんとの仲直りの方が大事すぎたから、あんまり語らなかったけど。
「ねえ、引いてくれない?」
「すまんな。これでも俺は魔王様に忠誠を誓った戦士だ。その少女を見過ごすことはできん」
「へー。この子が目当てなんだ。魔王軍ってよっぽど暇なのね」
「それだけの力を秘めているのだ、その娘は」
へー。
魔王軍にとってもかなり重要なんだ。
さすが天才のリーたん。
でも――
「私にとっては宝物よ。それに、こんなに泣いているじゃない。だから、絶対に渡せない」
「お前はその少女のなんなのだ?」
そんなの決まってる。
「私はフリーゼのママよ。まあ、血は繋がってないけどね。それでも、この世界の誰よりもフリーゼのことを愛してる」
「……ほう。孤児だと聞いていたが、そういうわけか。ふははっ!」
「何がおかしいの?」
「それでよくママと名乗れたものだな」
何を言いたいの?
「お前はそのフリーゼという娘が人間だと思って育ててきたのではないか? 魔法に秀でていて、髪と瞳が青いだけの小娘だと」
「やめてっ!!!」
リーたん、大丈夫。
「そのフリーゼは純粋な人間ではない。魔物の血が混ざった、半端者だ」
「…………ミース」
許せない。
リーたんに、こんな辛そうな顔をさせるなんて。
こいつは許せないし、私にも腹が立つ。
いいわ。
言ってやる。
「そんなの関係ないに決まってるでしょ!」
「ほう?」
「私はリーたんのママになるって、この世界の全てに誓ったの。フリーゼがどんな生まれかなんて関係ない! 全部全部受け入れて、抱きしめてあげる。それがママの役目でしょっ!!」
「……ミース」
ふう。叫んだらスッキリした。
「ふむ。ならば、貴様と2人で魔王軍に来ないか? 特別な地位を約束しよう」
リーたん、こんなこと言ってますけど?
……うん。そうだよね。
「こんな強引な勧誘をする魔王軍なんて願い下げよ。私たちはこのアンファンスが大好きなの!」
「そうか。覚悟は決まっているようだな。しかし、それだけの力があるのか?」
「――っ!」
ちょっと!
いきなり殴ってこないでよ!!!
しかも相変わらず、早いし重い……!
一撃一撃が砲弾みたいな威力なのは、反則じゃない!?
ミーちゃんが必死に衝撃を受け流してくれているけど、限界があるわよ!?
あーもー!
防御してるのって性に合わないっ。
よしっ。
拳が頬にクリーンヒットした!
「悪くない。だが、踏み込みが甘いなっ!」
「うそぉっ!?」
まったく効いてる様子がないんだけどっ。
水のドレスでも薄皮ぐらいしか切れてないし、岩を相手にしてる気分。
「そんなものか!?」
これでも転生時にもらったチートスキルをフル活用してるんだけどなぁ!
うろ……うろぼ……なんとかって言うスキルっ。
動作を繰り返すほど、その習熟度が無限にあがるっていう効果。
これで至高の土下座を会得したんだけど、まあ、私は飽き性だから宝の持ち腐れなのよねっ!
くそっ。
流石に疲れてきちゃった。
「もう終わりか?」
「隠し玉があるかもしれないわよ?」
「ふん。動きを見ればわかる。そんなものはない。そうだろ?」
「本当厄介ねぇ……」
「俺も武人だ。女子供は殺したくない。どうだ、考え直してみないか?」
あーもー!
しつこいなぁ!!
私たちはもう決めてるの。
魔王軍なんかには入らないって!
「ははっ。何が武人よ。領主様がいない隙を狙った卑怯者の癖に」
「そうか。残念だよ」
「――っ!」
拳、はやっ!
目で追うのがやっとっ。
これが全力!?
やばい、このままじゃやられるっ!!!
「ミースっ!!!」
うわっ、後ろから魔法が飛んできて、オーク将軍を怯ませた……?
これってリーたんの魔法!?
「リーたん、なんで!?」
相手はリーたんが目的なんだよ!?
動けるようになったんなら、早く逃げないと――
「わたしは守られるだけじゃない。ミースの横に立ちたい」
リーたんの瞳、すごく熱い。
ああ、そっか。
私と一緒に立ち向かってくれるんだ。
強いなぁ、リーたんは。
僕と全然違う。
前世の僕は何からも逃げていた。立ち向かわなかった。
自分の不幸を盾にして、ふさぎ込んでばかりで、とっても惨めだった。
彩夏に顔を見せられない生き方をしてた。
その結果、唯一僕に優しくしてくれたお母さんを壊すことになるとも知らずに。
でも、リーたんは違う。
私のために勇気を奮い立たせてくれた。
まっすぐに、揺るがない瞳で私を見ている。
出会った時はあんなに小さくて、引っ込み思案で、泣いてばっかりだったフリーゼが……。
全く。
成長が早すぎるのよ。
「ミース、帰ったらアップルパイ食べたい」
「ええ。とびっきりのを作るわ」
「ほう。ふたりで来るか。面白いっ!」
じゃあ、さくっと倒して帰らないとね!!!
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
完結まで 残り2話
また、明日は2話同時投稿して完結させる予定です




