第36話 魔王軍襲来 その②
わー。
すごい人だかり。
このアンファンスって、こんなに人がいたんだ。
みんな冒険者で、少しでも戦える人たち。
あれ、もう戦いは始まっているみたい。魔物の死体の山ができてる。
先行してきた魔物がすでに入ってきてるのかな。
まだ数は多くないけど、どんどん増えていきそう。
あ、冒険者ギルドの受付嬢さんが私に気付いたみたい。
「ミースさんも来て頂けたんですか」
「ええ、もちろん。アンファンスの力になりたいですから」
「ありがとうございます。特別報酬が出るので頑張ってください」
「やったっ! ちょうど金欠だったんだです!!」
「期待してますからね」
あ、もう次の人のところに行っちゃった。
本当に忙しそう。
さて、ここにリーたんはいるかなぁ。
「そいやっ!」
「天誅ううううううう!!!」
うわっ! なんだあの騒がしい2人組。
ひとりがボールを持ち上げて、もうひとりが蹴り飛ばしてる……?
かなりいいコンビネーションをしてなぁ――って。
あれ、知ってる顔じゃん。
「イーリャン、フォレッタ、何をしていらっしゃるんですか……?」
「あ、ミース。やっぱり来よったか」
「遅いですよ。こっちはもう温まっています」
この2人が一緒にいるの、少し珍しいなぁ。
仲が悪いわけじゃないんだけど。
「ボールを蹴って、何をしてるの?」
「モンスターをぶっ潰す練習ですよ」
え、すごいこと考えるなぁ。
たしかに砲弾ぐらいの威力ありそう。
「さすがに接近戦は分が悪いですから、ゴブリンぐらいならつぶせます」
「ウチはボールの供給役や」
いやー。
敵じゃなくてよかった。魔法使いでもない人間から砲弾が飛んでくるなんて、軽くホラーだよ。
でも。
「別に、2人とも冒険者じゃないんだから、後ろの方にいても……」
「そんなん言うても、こんなピンチに何もしないわけにはいかんやん。ウチらは元々よそ者なんやし」
「そりゃそうだけど、危ないよ?」
「こうなってしまった以上、どこにいても危険地帯ですよ。それなら、自らの戦った方がマシです」
「そりゃそうだけど……。ケガするかもよ?」
2人には危険なことしてほしくないなぁ。
もしものことを考えると、苦しくなっちゃう。
「自分は戦うのに、わたくしたちはいけないと? あなたはなんて傲慢なんですか?」
「……ごめんなさい。確かにそうだ」
「まあまあ、ミースもウチらのことを心配してるんやから」
「イーリャンはミースを甘やかしすぎなんです」
2人は私の両親かっ。
まあ、この話は一旦横に置いておこう。
他に聞きたいことあるし。
「イーチャン、フリーゼはどこ?」
「先に来ているはずなんやけど、姿が見えへんなぁ」
「わかった。ありがとう」
じゃあ、魔物を討伐している間に出会えるかな。
なんとなくだけど、今日中に絶対会える気がするんだ。
これが女の勘ってやつ?
「フリーゼを探しに行くんか?」
「ううん。迎えに行くの」
「……そっか」
ん?
なんだかイーリャンの様子がおかしい?
「ミース、ウチ、あんさんのこと大好きよ?」
突然なんなんだろう。
でも、ちゃんと応えないといけない気がする。
「私も大好きだよ、イーリャン」
もちろん、幼馴染としてね。
「よし、ミース、全力で行ってきい!」
「うん!」
行こう!
私は武闘家。
前衛だし、このアンファンスの中でも強い方。
だから、先陣を切ろう。
でも、どこから攻めようかなぁ。
「ママ、アッチ」
「どうしたの? ミーちゃん」
「知ってる匂いがイル」
「誰の?」
「あの、仲直りキノコを採りに行った時のアイツ……」
「……あー。なるほど」
キノコ山での出来事って、意外と重要だったのかな?
私にとってはリーたんに無視されたショックの方が酷かったからなぁ。
おわっ、魔物の大軍がいる。
これを突破しないと先には進めなさそう。
「結構いるなー」
ゴブリンとかスライムとかハーピーとか、視界いっぱいに広がってる。
すごい。
行進しているだけで地面が揺れているし、鳴き声の大合唱で肌がピリピリしちゃう。
無双ゲーをリアルで見ると、こんな感じになるのかな。
でも、領主様が蹴散らしてくれた時よりは全然少ない。
後ろのみんなのためにも、出来るだけ倒しながら進もう。
「じゃあ、行くよ、ミーちゃん!」
「ウン!!!」
ミーちゃんが私の中に入ってくるの、何回経験してもムズムズするなぁ。
全身の細胞に雲が入り込んでくるみたい。
あと、問題は――
「これ、おかしくない?」
「似合ってるヨ!」
格好が変身ヒロインみたいになるのよねぇ。
水のドレスを身にまとってる感じ。
これが美少女だったらいいよ?
私、そこそこ年のいったおばさんなんだけど……。
フォレッタの下品な笑い声が聞こえてるけど、後で覚えてなさいよ?
というか、よくこの距離で見えてるわね。
この状態はミーちゃんが私の中の水分とか血液を操作して、身体能力をあげてくれてるの。
あと、水のドレスは一見キレイだけど、表面が細かく振動していて、刃物みたいにスパスパ切れちゃう。
見た目の割にかなり強力なのよねー。
「押し通るっ!!!!」
いざ行かん!
魔物の群れの中!!
こんな雑魚たち、全然問題ない!!
本当に無双ゲーみたい。
これがミーちゃんの力っ!!
ふははははははははははははは!!!!
「ママの力でもあるヨ?」
あれ、少し進んだら、魔物の様子が変わってきた?
「…………」
魔物が凍ってる。
これって、まさか……。
「ママっ!」
「うん、リーたんだ」
やっと会える。
言いたいこと、いっぱいある。
でも、魔法を使っているってことは、もう戦ってる!?
リーたんなら大丈夫だと思うけど、胸がザワザワする。
急がないとっ!!!




