第30話 私の心はブラックホール
「……なにもする気が起きない」
リーたんが出て行ってから、どれくらいたったかな……。
部屋にいない。
本をめくる音が聞こえない。
料理を用意したのに、食卓にいない。
水浴びしてって小言を言う必要もないし、靴下が裏返しになっているのにイラつかないのに、虚しくて仕方がない。
そんな日々。
たぶん1か月とか、10年とか、それぐらい……。
日にちを数える気にもなれない……へへへ……。
「ねえ、ママ、まだ2日しか経ってないヨ?」
「あ~~~。そうだったっけ……」
ミーちゃんが心配そうに私の顔を、のぞき込んできてる。
今日もかわいい。
「フリーゼのこと、心配ナノ?」
「心配はしてないよ。イーリャンと一緒にいるはずだから」
リーたんが家出するなら、行先はある程度予想できちゃう。
あの子は人見知りだから、それ以外は論外。絶対に話しかけることもできない。
フォレッタのところは絶対に避けるし、あそこしかありえない。
「じゃあ、なんでそんなに思い詰めてるノ? ボク、心配」
「なんだろう。いきなり心から芯が抜け落ちた気がする……」
今まで、リーたんのことを考えて行動してきた。
お金を稼ぐのも、家事をするのも、リーたんが少しでも健やかに成長できますようにって、願っていたから。
ママになってから――ううん、ママになる前、ただの異性の幼馴染として接していた時から、そういう気持ちがあった。
幼馴染だけど、私には前世があったから。
この女の子が大きくなるまで、見守りたい。
ずっとずっと抱きしめていた。
だけど、リーたんが出ていったことで、心にぽっかりと穴が開いちゃった。
ううん。
ぽっかりなんて生やさしい擬態語で表せない。
音も光も吸い込んじゃいそうなほど、
やる気も元気も吸い込んでしまうブラックホールができたみたい。
うん。これならしっくりくる。
「私って、なんのために生きていたんだっけ……」
「……ママ」
なんだか、すごく疲れてきちゃった。
私の存在意義ってなんなんだろう。
体に力入んないし。
頭がぼーっとするし。
このまま雲になってどこかに飛んでいきたいなぁ。
…………ん?
ミーちゃん、いつの間にかいなくなってる。
見捨てられたのかな。
仕方ないよね。
こんな私だもん。
って。
あれ、なんか怪獣みたいな足音が聞こえはじめて――
まさか強盗!?
うわ、いきなりこっちに来て――
「天誅っ!!!」
「ぐえっ!?」
思いっきり蹴り飛ばされた!?
なにごと!?!?
こんな大胆な強盗いるっ!?!?!?
「全く、世話が焼けますね」
あ、この声。
この金髪。
このシスター服。
「あれ、フォレッタ……なんで?」
「ミーちゃん様から懇願されましたので」
「あー」
ミーちゃんがフォレッタを呼びに行ったのか。
だから、突然いなくなっていたんだ。
その当のミーちゃんはフォレッタに抱きしめられて、すんごいイヤな顔してるし。
すんごい猫かわいがりされたんだろうなぁ。
「ほっといてよ。フォレッタはあんまり関係ない話じゃん」
「育児放棄してその言い草。もう一発蹴り飛ばしますよ?」
「……ごめんなさい」
「素直でよろしい」
フォレッタのキレイな瞳ににらまれると、嘘をつけないの、ほんとずるい。
「フリーゼちゃんが家出したそうですね。ミース、見損ないましたよ」
「そうね」
「彼女、わたくしのところには来ていませんわ」
「だろうね」
「あなた、フリーゼちゃんに何か吹き込みましたか?」
「いや、自業自得でしょ……」
「はて、わたくしはフリーゼちゃんのことが大好きなだけですのに……」
え、この人、自覚なかったの……?
リーたんのことを可愛がっては、野良猫みたいに嫌がられていたのに。
「……はあ。ツッコム気力もないとは重症ですね」
え。
さっきのってボケてたの?
わかりづらいんだけどっ!
「では、食堂に行きますよ」
「……食欲ない」
動く気力もないんだから、外食なんて行けるわけがない。
「どうせあなたのことですから、お腹が空いているからマイナス思考になっているだけですよ」
「……そんな単純じゃないし」
「あら、わたくしから見れば、ミースはかなりの単純おバカですよ?」
くっ。
否定しきれない自分が悔しい。
「もちろん、あなたの奢りでお願いしますね」
「……はあ。わかったわよ」
こうなってしまったフォレッタは絶対に引かないと思うし、仕方ない。
「誕生日パーティーとプレゼントで財布が軽くなっているから、手加減してよね」
「大丈夫ですよ。わたくしは質より量を好みますので」
だから、恐ろしいんだよなぁ。
フォレッタ……酒場……うっ、頭がっ!
「さあ、行きましょう!」
でも、まあ。
こんなに楽しみそうな顔を見てしまうと、断る気力も湧いてこないのよねぇ。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
また、☆評価や応援、感想にもいつも救われていますm(__)m
大大大大大大大大大大感謝!!!!!!!!!!




