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第29話 フリーゼ、はじめての家出

 扉の向こうから、すごくうるさい声が聞こえる……。

 いない振りいない振り。


 

「リーたああああああん、ごめんなさ———い!!!」

「あーもー!! いい加減にしいや!」

「イーリャン、止めないでっ! 私はリーたんと話さないといけないのっ!」

「ここはウチの部屋の前やぞ! 文句を言う権利はあるやろっ!! それに、ここにはいない言うとるやろがい!!」

「……ママ、帰ろう? 周囲の目が痛いヨ……」



 外ではかなり恐ろしいことになっていそう。

 泣き叫ぶミース。

 追い返そうとするイーリャン。

 恥ずかしがる妖精。

 

 わたしが原因だけど、正直、あそこに混ざりたくない。


 あ、やっと終わったみたい。

 イーリャンが部屋に戻ってきた。



「はあ、全く。しょうもないことにウチを巻き込んで……。せっかくの休みが台無しや」

「ごめん」

「そういう時はありがとうって言うんやで、リーたん(・・・・)

「……やめて」



 ミース以外の人に『リーたん』って呼ばれるのは、正直ムズかゆい。



「昨夜、雨に濡れたあんさんを見た時はビックリしすぎて、腰を抜かすかと思ったわ。捨て猫かっちゅう話よ」

「……捨て猫かぁ」



 案外間違っていないかも。



「ウチのところなんかより、フォレッタのところの方がよかったんやないか? ミースなんて一発で追い出すで?」

「……フォレッタは怖いから」

「まあ、あんさんの視点ではそうやろなぁ」



 フォレッタはわたしのことを、すごく可愛がろうとするから……

 部屋はわたしのぬいぐるみでいっぱいだし、ミースと違って、怖い……。


 ミースより熱量がやばい。怖い。できれば近寄りたくない。



「それで、ケンカの原因はなんや?」

「ケンカなんかしてないし……」

「……はあ。じゃあ、なんで家出なんかしてるんや?」



 そんなダメな子を見るような目で見ないで。



「ミースからの誕生日プレゼントをもらったから」

「それって羽根ペンやろ? 何が不満やったんや?」

「知ってたんだ」

「ウチが勧めたんやで。ミース、すごく悩んで決めてたわ~」



 その光景はありありと目に浮かぶ。

 ミースにしてはセンスがいいと思っていたら、イーリャンが関わっていたなら納得。



「それで、ミースはどんな失言を言い放ちおったんや?」

「なんで言動だと思ったの」



 そんなこと言ってないのに。


 

「お前さんの態度から予測したんや。羽根ペンの話をしても苦々しい顔をしてへんかったからな」



 イーリャン、なんで人の表情を見ただけで、こんなに色々わかるんだろう。

 わたしは人の表情を見ても、考えていることが全然わかんないのに。


 

「ミースがわたしを追い出そうとしてたから」

「それ、あんさんの勘違いやないか? なんて言ってたんや?」

「『魔法学校に行っても、私のことを思い出してくれると思って』って……」

「ん? あんさん、魔法学校に行くんか?」

「誘いが来ただけ」

「あー。なるほどなぁ……」



 イーリャン、何か納得したみたい。

 やっぱり、こういう時は頼りになる。

 


「フリーゼは魔法学校へどう返事するつもりなん?」

「……わかんない」

「はあ!? 断るつもりやの!?」

「わかんないって言ってるじゃん」



 まだ決められない。

 考えるのも面倒だから、魔法の研究だけしていたい。



「それに、今はあの妖精がいるし」

「ミーちゃんやったっけ」

「ずっとミースと一緒にいるし、本当の親子みたいに仲良くしてるから」

「嫉妬しとるんか?」

「そんなんじゃない。わたしの居場所」

「どっちも不器用やなぁ……」



「イーリャン、どうすればいい?」

「勝手にしぃや。ウチにできることはあらへんし、何かをする必要もあらへん」



 なにそれ。

 ニタニタした顔、気持ち悪いんだけど。



「ほら、この本でも読んどきー」

「なにこれ」



 投げ渡されたんだけど――って!



「魂に関する魔法の本!」

「ドラゴンスケイルは流石に手に入らへんかったから、これでヒントになればええんやけど」



 早速読もう!

 今すぐ読もう!!



「よだれを垂らすんやあらへんよ?」



 ……危ない。

 

 早速開いて、読んで……。


 ふむふむ。

 この本はかなり読みやすい。


 文章が理路整然としている。


 お、魂の魔法についての結論が書いてある。



「…………え?」



 そんなこと、あり得るの?

 

 

「魂に干渉する魔法は、人間には扱えない……」

「ん? なんなん?」



 あれ。

 わたし、TS魔法で……。


 魂に干渉して……。



「ねえ、イーリャン。わたしの髪の色って珍しいんでしょ」

「そやね。青色の髪なんて、フリーゼ以外に見たことあらへん」

「魔物の血って、何色か知ってる?」

「青色やね」



 ……だよね。



「わたし達って、孤児だよね。親に捨てられた」

「そやね。今更、それがどうしたん?」



 ひとつの仮説が思い浮かんで……。

 

 わたし。

 もうミースのところに戻らない方がいいのかな。


 ううん。

 まだ可能性が浮上しただけ。


 

 好奇心。


 

 ずっとずっと、それに振り回されてきた。

 魔法の研究をしているのも、知りたいから。


 魔法はどこまでできるの?

 どこまで広まるの?

 限界はどこにあるの?


 わたしって、なんで捨てられたの?


 知りたくなくても、絶対に抗えないことを知っている。

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