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第28話 ミースなんてしらないっ!

「今日はリーたんの誕生日~♪ シチューにチキンにアップルパイ♪ 隣の客はよく柿食う客だ~~~♪」



 テーブルいっぱいに広がる料理たち。

 パーティーでは栄養バランスを考えるなんて野暮!

 好きなものを好きなだけ並べて、好きなだけ食べてもいい!


 飾りつけは色々と苦労したなぁ。

 前世の世界だったら、折り紙を切って、輪っかにして繋げていたんだけど……。

 この世界にはそんなものがあるわけない。


 折り紙どころか、紙自体がかなりの高級品。リーたんの研究費の大部分が紙に溶けてるぐらい。

 飾り付けに使うなんて、夢のまた夢よ。

 

 だからお花を摘んできて、部屋中に飾ることにしたの!

 ちょっと大変だったけど、すごくファンシーでいい感じになった! さすが私。



「7月7日は」

「何その歌」

 

 

 そういえば、この世界でのバースデーソングってあるのかな。



「リーたん、バースデーソングを知らない?」

「んー」



 お、リーたんが歌いはじめてくれた。


 久しぶりに聞くけど、本当にキレイな歌声してるなぁ。

 でも、うーん……。

 音痴じゃないけど、機械みたいに音程とリズムをなぞっているだけなのよねー。

 感情がこもってない! 感情がっ!

 ちなみに私は音痴です。歌うのは好きだけど音痴です。はい。


 まあ、これもリーたんの個性よね。

 理知的で精一杯。

 すごくリーたんの歌声って感じ。よき……。


 ……それにしても、リーたんが歌っているバースデーソングは中々物騒ね。


 曲調はとてもメルヘンなのに、歌詞がすごい。

 魔物を殺せとか。魔王をつぶせとか。生首を掲げて進行しろとか、そんなことをふわっと言ってる……。


 なんでこんなのが広まってるの!?

 教育によろしくありまへんで!?



「なしなし! その歌はなし!」

「え、なんで」

「私の知っているバースデーソングにしましょう」

「せっかく覚えたのに……」



 え。この子、クールに澄ましていたくせに楽しみにしてたの?

 ……ああ、尊い。



「これはどう?」



 私が知ってる誕生日の歌。


 Happy Birthday to you♪

 Happy Birthday to you♪


 Happy Birthday dear リ~~~~~たん♪

 

 Happy Birthday to you♪


 おめでと~~~~~~~。

 パチパチパチ~~~。


 

 ふふふ。どう?

 私の歌うバースデーソング。


 ——って、2人ともそんなに微妙そうな顔をしないでよっ!

 


「トゥーユーとか、ディアってどういう意味?」

「トゥーユーはあなたへ、ディアは親愛なるって意味だったかな」

「ミースが住んでいた世界の言葉?」

「うーん。違う国の言葉なの。あ、でも最後の『おめでとう』はちゃんと私がいた国の言葉」



 ほとんどが英語なのよねぇ。

 


「なんで外国の歌なんて歌うの?」



 う~~ん。

 確かに、この世界では不思議に思うわよね。

 この世界はネットでつながっている訳じゃないし、異文化交流も(さか)んじゃない。


 外国の歌を口ずさむ機会なんてほとんど無いと思う。


 だからこそ、説明しようとすると難しいわね。

 


「ミースの国の歌はないの?」



 日本語でバースデーソングってあったのかしら。

 ……思い出せない。

 


「なかったわね」

「不思議。なんで?」

「まあ、外国の歌が広まっていたからかしら。新しく作る必要もないし」

「こんな中身のない歌詞が?」

「お祝いの歌ってそれぐらいでちょうどよくない? 頭を空っぽにできるし」

「……うーん。確かにそうか」



 お、意外と素直。

 もうひとりの娘はどうかしら。



「ミーちゃんも覚えた?」

「うん。バッチリ! ママの言葉は一言残さず覚えてるモン!」

「それはそれで怖いなー」



 この子のヤンデレ気質、誰に似たのかしら。

 まあ、かわいいからヨシ!


 

「それじゃあ、準備も整ったし、早速」



 リーたんの誕生日パーティーだ!

 これで13歳。


 私の年齢は今よくわかんないことになっているから気にしない!


 誕生日の歌を歌って、お待ちかねのロウソク消し~~~。

 細いロウソクは頑張って作った!

 13本!


 ちょっと不格好だけど、なんとか火が点いてくれた。ほっ。


 ちなみに、ケーキを作るのは難しいからパイにさしちゃった。



「これを吹き消せばいいの?」

「そう。お願い」

「なんで?」

「私の世界では、そうしてたの」



 まあ、なんでロウソクを消すようになったのかは、わからないけど。

 よくよく考えれば意味不明だけど、盛り上がるのよね~。



「ミースもそうしてたの?」

「前世で、子供の時わね」

「……そうなんだ」



 そういえば前世の話って、あんまりしてこなかったわね。

 リーたんに聞かれたこと、ほとんどないし。

 ……もしかしてあんまり触れてはいけない話題だと思われてる?


 まあ実際、そんなに語る内容もないんだけど。


 

「じゃあ、吹く」

「うん」

「……すぅ」



 ああああああああああああああああああああああああああ!!!


 頬を膨らませてる!!!

 必死に息を吹きかけてる!!!


 全部消しきれなくて、もう一回やってる!!!!


 可愛すぎるうううううううううううう!!!

 天使!?

 女神!?!?

 そんなもん目じゃないんだけどっ!!!


 なんでカメラがないの!?

 カメラごときがないなんて、この世界、滅んだ方がいいんじゃない!?

 私が滅ぼそうか!?!?

 

 ええいっ!

 私のフロッピーディスク並みの脳内メモリに焼き付けるしかないっ!



「ママ、落ち着いて」

「あばばばばばばばばばばばば」



 ……ふう。

 ミーちゃんに水を掛けられて落ち着いたわ。


 水はきっちり回収してもらって、桶に溜めてもらいましょう。

 


「じゃあ、忘れないうちにプレゼントを渡すわね」

「おー」



 ちゃんとラッピング――とまではいかなかったけど。

 麻の袋を頑張って花とかで飾ってみました。


 気に入ってくれるといいんだけど……。



「なにこれ」

「羽根ペンとインク。今のはもうボロボロになってたでしょ? ちょっと奮発して買っちゃった」

「……ふふ」



 お、結構気に入ってくれてるみたい。

 よかったー。


 リーたんはあんまり見た目にこだわらないから、実用性重視が一番だと思って、シンプルなものにしてみたの。


 それに、もうひとつ理由があったりする。



「魔法学校に行っても、私のことを思い出してくれると思って」



 子供の将来を考えて、出来るだけ

 これが正しい親のあり方ってものよね。

 うん。


 

「…………は?」



 あれ?

 リーたんの目つきが変わった……?


 さっきまではちょっとにこやかだったのに、今はメチャクチャ鋭いんだけど……。



「なんでそんな話になるの?」

「え、だって、魔法学校からのお誘いが来てたし……」



 え。

 私、何も間違ってること言ってないよね?


 何か勘違いしてた?


 

「ねえ、ミース」



 怖いんだけど。

 えっ。


 この怖さ、オギャらせてくれって土下座した時よりヤバイ。


 

「この妖精がいるから、わたし、もういらないの?」

「ち、ちがう」



 そんなこと、一度も考えたことないっ!


 

「何なの!? 絶対わたしを家から追い出そうとしてるよね!?」

「そんなわけ……」

「じゃあ、なんでわたしが魔法学校に行くことを、そんなに喜んでるの!?!?」

「だって、すごいことなんでしょ……? リーたんにとっていいことじゃ――」

「そんな話してないっ!!!!」



 え。

 なんて言えばいいの?


 リーたん、泣かないでよ。



「いい加減にシテっ!」



 ミーちゃん、そんなに感情的にならないで。

 リーたんにも何か考えが――



「ママがどんだけ頑張って用意してたか、フリーゼ全然見てなかったでショ!? そのプレゼントだって、すごく悩んで用意してたんだヨ。こんなにサイコーのママなのに、なんでそんなこと言うノ!?」

「……ミーちゃん」



 そんな風に考えてくれてたんだ……。

 ありがとう。



「ミース、その妖精の肩を持つの?」



 いや、そんなこと言ってなくて……。

 どっちも娘なの。

 どっちも大事なの……。


 え、これっておかしいのかな?

 正しくないの?

 私、わからなくなってきちゃった……。


 と、とりあえず、謝ったほうがいいよね?



「フリーゼ、ごめ――」

「もうミースなんて知らないっ!!!」

「待ってっ!」



 これが(こと)顛末(てんまつ)


 私、全部伝えきれてなかったのかな。

 リーたんは私の言葉をどうとらえたの?


 わかんない。

 わかるわけない。

 私、バカだもん。


 まあ、とりあえず。

 ちゃっちゃか切り替えよう。私バカだもん。切り替えるのなんてすぐ。うん。そう。


 さてっ!

 私が今からやるべきことはひとつだ。


 イーリャンの部屋の前で、ひたすら土下座しまくってやるうっ!!!

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