第26話 親の愛って何?
私って、自分が思っている以上に独りよがりな人間なのかな。
今日はリーたんの誕生日。
7月7日。
リーたんが自分で決めた誕生日。
この異世界に転生してから、初めての誕生日パーティー。
今飾りつけしているんだけど、どうしても手が進まない……。
リーたんがこの家から出て行っちゃう。
私のそばからいなくなっちゃう。
今生の別れじゃない。
いつかまた会えるのは分かってる。
でも、どうしても寂しくて、嬉しくて、悲しくて、祝いたくて、そして叫びそうになっちゃう。
私がずっとリーたんと一緒に生きてきたんだ。
リーたんは私の人生の全てなんだ。
なんで他の人のところに行くの。
だから、どこにも行かないでほしい。
ずっと私に守らせてほしい。
でも、それじゃいけない……。
前世の私——ううん、僕のお母さん。
お母さんだったら、こういう時どうしたんだろう。
もし僕がどこかに旅立つことになったら、お母さんはどんな反応をしたのだろう。
わからない。
そんなこと、一度もなかったから。
だけど、なんとなく……。
笑顔で見送ってくれる気がする。……うん。
その裏で泣いても、僕の前では笑顔に徹してくれて、少しでも僕が気持ちよく旅立てるようにする。
自分よりも子供のことを優先して、いっぱいいっぱいになっても、それを子供に見せようとはしない。
そんな人だった。
僕はそんな人に、24年も愛情を注いでもらったんだ。
だったら、僕も――私も、そうするしかないんだと思う。
でも、あぁ……。
イヤだなぁ。
来年もリーたんの誕生日パーティーをしたいなぁ。
「ママ、ダイジョーブ?」
「あ、ミーちゃん」
やばい。
ちょっと涙が出てた。
って、もうこんな時間じゃん!
この後料理を作らないとだから、飾りつけをすぐに終わらせないと。
間に合わなくなっちゃう!
「ママ、泣いてたノ?」
「大丈夫よ。」
「……フリーゼのコト?」
この子って、なんでこんなに鋭いんだろう。
意外と見られてるのかな?
「ちょっと悩んでいただけだから、大丈夫よ」
「……ママには」
「うん。ありがとう」
ミーちゃんがいるのは本当にありがたい。
暴走するときがあるけど、いつも私のことを気にかけてくれるし、空気を明るくしてくれる。
「ねえ、ママ」
「なに?」
「もしボクがいなくなっても、同じように悲しんでくれる?」
「うん。当たり前でしょ。ミーちゃんも私の娘だもん」
ミーちゃん、私の顔を遠慮気味に見てる。
本当にキレイな顔立ちをしてるなぁ。
この表情、どこかで見た覚えがあるような……。
いつだったっけ。
「じゃあ、ボクはフリーゼより大事?」
「それは比べられないよ。どっちも大事だから」
どっちが大事とかじゃない。
どっちも大事。
同じ娘。
まあ、リーたんは元々幼馴染だけど。
優劣をつけちゃいけない。
同じように愛して、接して、抱きしめないといけない。
それが、正しい親だよね。
「ママ、ありがとう」
「どうしたの? 急に」
かわいいし、すんごくジ~ンと来るんだけど。
「突然現れたのに、ボクを受け入れてくれて」
そっか。
気にしてたんだ。
「うん。最初はびっくりしたけど、すぐにいい子だなーってわかったから。それに、嬉しかったの。ママって呼んでくれて。いっぱいいっぱい甘えてくれて」
「ママ……」
「だから、こちらこそありがとう。娘になってくれて」
「ウン!」
「ボクはママとずっと一緒にいるからね」
「うん。ありがとう」
ミーちゃん、私にはもったいないぐらいのいい子。
食べちゃいたい。
……いや、本当に食べられるサイズだから、微妙にシャレになっていないか。
「そういえばリーたんは?」
「部屋に引きこもってるヨ? 呼んでくル?」
「大丈夫。飾りつけはもう少しで終わるから、次は料理かな」
「料理っ! ボクも手伝ってもイイ?」
「お、いいわね!」
娘に料理を教える!
最高のシチュエーションじゃない!
じゃあ、早速料理してみようかしら。
あら。
ミーちゃん、水の妖精だから洗い物もすぐに終わるし、熱湯を出してくれるし、いつもより料理がはかどっちゃう!
これならすぐに準備が終わっちゃいそう。
でも、なんでだろう。
すごく胸がザワザワする。
何かを見落としてる?
私、何かミスしてる?
わかんない。
これが女の勘ってやつなのかな。
そういえば、リーたんの顔、家に帰ってきてからちゃんと見てないなぁ。
ちょっと心配。
でも、大丈夫。
私はまだ笑える。
笑えているなら、問題ないはずよ。




