第25話 親子関係の危機!?
領主様の屋敷に戻ってきたけど、さっきまでの光景って夢だったのかな。
魔王軍の大軍が押し寄せてきて、領主様が魔法一発で解決しちゃった。
まだ、夢の中にいる気分。
現実味が無さすぎる。
村はずっと穏やかな雰囲気で、何も変わってない。
私の大好きなアンファンスの空気。
雰囲気。
村人たち。
街並み。
大好きな世界。
でも、ちょっと怖い。
この平穏って、本当に大丈夫なの?
足元がグラグラして、簡単に壊れたりしない?
お願いだから、神様。
私から幸せを奪わないで。
リーたんのお世話をして、ミーちゃんと遊んで、イーリャンやフォレッタに会いに行ったり……。
今はちょっと女になったせいで戸惑うことも多いけど。
それでも今、すんごい幸せなんです。
この生活を守るために、私にできることってあるのかな。
私には何もない。
リーたんみたいに天才なわけじゃない。
領主様やミーちゃんみたいにすごい力があるわけでもない。
ほんの少し魔物と戦えて、家事ができるだけの人間。
きっと、私にできることなんて、これぐらいしかないと思う。
「お待たせしました。ミースさん、フリーゼさん、ミーちゃんさん」
領主様。
全然涼しい顔をしてる。
でも、戦場で見た時と比べると、どこか気が抜けてるっていうか、凛々しさが抜け落ちてる気がするなぁ。
どっちかというと、こっちの方が好きだけど。
「すごかったです」
「ありがとう、ミースさん」
えっと、一応前置きした方が失礼ないよね?
「領主様。質問をしてもいいですか?」
「どうぞ」
「もしかして、ずっとさっきみたいなことをしているんですか?」
つまり、ひとりで魔王軍と戦い続けているの?
「ええ。それが僕がこの土地にいる理由ですから」
「過去に何回も?」
「はい」
……やっぱりそうなんだ。
全然知らなかった。
「……領主様。ありがとうございます」
「えっと、突然どうしたの?」
「アンファンスを、私の大好きな場所を守っていただいて、本当にありがとうございます」
「お礼を言われるようなことじゃないよ。領主としての義務さ」
「それでもお礼を言いたいんです。当たり前なんかじゃない。あなたがしていることは、私にとっては感謝してもしきれないことなんです」
「…………ふふっ」
えっと。
言いたいこと言ったのはいいんだけど、この雰囲気どうしよう。
領主様、すごく感動しているような……。
しかも、なんだか頬が赤いし、目がちょっと熱っぽい?
様子おかしくない?
「ネー。なんでやられるってわかってて、魔王軍はアンファンスに攻めにくるノ?」
確かに。
そこに気付くなんて、ミーちゃん天才!
タイミングも抜群!
「おそらくは口減らしだと思う。魔王軍にも色々あるからね」
「……口減らし」
「ウゲェー」
それってつまり、増えすぎたから戦争で数を減らすってことだよね。
食料を作るのには限界があるから。
やっぱり、この世界って過酷だ。
「ミーちゃんさん、さすがミースさんから生まれた妖精だね。とても優しい」
げっ。
「やっぱり、知っていたんですか。私がミーちゃんを産んだこと」
「調査したからね」
「……私、不敬罪になるんですか?」
「それってつまり、王族に妖精の血が流れているからってこと?」
「…………はい」
「はは。そんなことにこだわるのは、王都で政治に固執している人たちだけだから」
つまり、領主様は問題視していないってこと?
「じゃあ、なんで私を調査なんて……」
「あ、そうだよね」
他の理由、何かあるんだ。
「あなたとは、実は初対面ではなくて――」
初対面じゃない?
え?
記憶にないんだけど……。
「ゴホン!!!」
うわっ!
びっくりしたっ!
メイド長さん、いきなり咳払いしてどうしたの!?
「主。その話は後にしてください。それよりも、お呼び出しした件を伝えた方がよろしいかと」
「あ。そうだった」
懐から何かを取り出した?
「3人を呼んだ理由は、これなんだ」
なにこれ。
封筒?
しかも、かなりいい紙を使ってる。
ん?
この箒とか杖の紋章、見たことない。
「フリーゼさん宛ての」
リーたんなら意味がわかるのかな?
「これ、魔法学校からの勧誘だ……」
「え」
勧誘?
魔法学校?
どういうこと?
「中身は確認していないけど、おそらく特待生としての勧誘だろうね」
え。
ちょっと待って。
心も頭も追いつかないんだけど。
トクタイセイってどういう意味?
「王都の魔法学校と言えば、この国で最も権威のある教育機関だ。」
「……はい」
そんなにすごい場所なんだ。
さすがリーたんだけど、私が気になるのはひとつだけ。
「あの、魔法学校には親もついていけるんですよね?」
「いえ。魔法学校は完全な寮制度。親族でも入ることはできないと思います」
「……え?」
つまり、リーたんが私の元から離れて、魔法学校に行っちゃうの?
リーたんがいなくなる?
アンファンスから。今の家から。
私、そんなの耐えられないんだけど。
で、でも――
これってすごく嬉しいこと……だよね?




