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第19話 首を長~~~~~くしています

 ミースが女になってから、もうどれくらい経った?

 もう1週間ぐらい……。


 ミースを元に戻す方法、まだ見つかってない……。


 転生者の魂が特殊だから、かなり難しい。多分、神様とか天使がいじっていそう。

 この研究に先駆者なんていないし、全部手探り。


 だからこそ、それが楽しくてしょうがない。

 それに、この問題を解決できたら、TS魔法をさらに進化させられるかもしれない。


 今でも領主様に報告できるぐらいの完成度だけど、まだまだ先が見えるなら、妥協をしたくない。

 とことんまで、魔法の限界に迫りたい。


 まだまだ腑に落ちないことはいっぱい。

 でも、絶対に解き明かす。


 まあ、一番腑に落ちないのは、当の変身者本人が呑気にしていることなんだけど。



「今日はお仕事に行ってくるね」

「んー」

「いっぱい稼いでくるから待っててね」

「いってらっしゃい」



 お仕事ってことは、冒険者稼業か。

 ミース、結構いろんなことができるのに、なんで冒険者をやってるんだろう。


 お料理。

 掃除。

 洗濯。

 読み書き。

 数字だって人並み以上に扱える。


 あんまり頭がよくないはずなのに、なんでもできる。

 転生しているなら、納得できる。


 転生者。

 ここよりもずっとずっと文明が発展した世界からやってきた、不思議な人たち。


 転生者が元いた世界はちょっと気になる。

 どこの街にも学校があって、水に困らなくて、この世界にはないものがたくさんあって、魔物もいない。

 そんな楽園みたいな場所。


 でも、魔法はないらしい。

 魔法がないなら、いくら便利でも面白くない。

 この世界に生まれて、わたしは本当によかった。そこだけは生みの親に感謝してる。

 捨てたのは絶対に許さないけど。


 わたしは今の生活に満足してる。

 魔法の研究で食べていけてるし。


 そういえば、ミースはなんで冒険者なんて続けてるんだろう。


 聞いたことなかった。

 孤児院から脱走してすぐの時は、冒険者になるのは理解できた。

 子供がお金を稼ぐ方法は、あまり多くないから。

 でも、大人の姿になった今でも続けているのは何で?

 

 まあいいや。


 本を読んで、魔法の研究をしよう。

 そうしているうちに、ミースは帰ってくる。


 って、げ。


インクが切れてる。

 これじゃ書けない……。


 ミースはもう行っちゃったけど、あいつ(・・・)はいるかも。



「ねえ、いる? 妖精」

「なにナニ? 珍しいネ、フリーゼがボクを呼ぶナンテ!」



 なんでミースの部屋から出てきた?

 まあ、いいけど。


 

「インク出して」

「えー、そんなことも出来ないノ?」

「……早く出して」



 妖精って、そんなに憎たらしい顔が出来たんだ。



「えー。なんでボクがそんなことしないといけないノ?」 

「へぇ。じゃあ、出来ないんだ」

「そんなこと言ってないジャン!」

「じゃあ、証明して」

「やってやル!」



 お。

 瓶の中がインクでいっぱいになった。

 質もいいし、これなら問題なさそう。

 


「ありがとう」

「……ア」



 これでインクはゲット。

 あの妖精、なんだか騒いでいるけど、無視しとこう。

 そのうち飽きるでしょ。


 じゃあ、行こう。

 魔法の広大な世界へ。




 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 あれ、もう暗くなってきてる。

 ミースは帰ってきてない……よね。

 帰ってきてたら、家がこんなに寂しく見えないし。


 ……なにかあったのかな。


 話を聞こうにも、あの妖精は寝てるし。

 ミースとそっくりのいびきをかきながら。


 ミースに限って、万が一は無いと思うし、村中で騒ぎになっているはず。


 まだまだ魔法の研究をしていたいけど、落ち着かない。


 玄関のそばに椅子を持って行って、そこで本を読んでよう。

 その方が心が落ち着く。


 ……うん。

 …………なるほど。


 ……ふむふむ。

 …………ほう。


 ………………全く頭に入ってこない。


 全く、結構いい感じに進んでたのに。

 お腹が空いているせいなのかな。


 もう日が沈んできて、文字も読めなくなってきた。

 風も冷たくなってきたし……。

 でも、家の中に戻る気にはなれないし……。


 このままじゃ風邪ひくかも。


 さっさと帰ってきてよ。

 ミース。



「あれ、リーたん?」

「あ、ミース」



 あれ、いつの間にか帰ってきてた?

 わたし、そんなに深く考え事をしてた?



「ごめんごめん、遅くなっちゃって」

「別に、待ってないけど」

「じゃあ、なんでこんなところにいるの?」

「ちょっと風に当たりたかっただけ」



 ミースが調子に乗らないようにしておかないと。

 調子になると、いつもトラブルを起こすし。



「ねえ、結構お金稼げたから、今日は食堂に行かない? もう遅くなっちゃったけど」

「……食堂」



 チーパオ商会が運営している、アンファンス唯一の食堂。

 この村だと、ちょっとお祝いする時の定番。

 少し高いけど、おいしいものがたくさんある。

 家で簡単に作れない料理の数々。


 子豚の丸焼きに、魚の香草焼き。

 スパイスをふんだんに使った豆のスープに、大きくて甘いアップルパイ。


 思い出すだけでも、たまらない。


 うーん、でも、気分的に。



「ミースの手作りが食べたい」



 今から作るのは、大変だと思うけど。



「そう?」



 なんで嬉しそうなの?

 マゾヒストなの?

 


「じゃあ、すぐに作っちゃうわね。手塩に掛けた手料理を」



 ミースの考えてること、よくわからない。


 ああ、そうだ。

 これを聞いておかないと、スッキリしない。



「ねえ、ミース」

「なに?」

「なんで冒険者なんてやってるの?」

「うーん……」



 そんなに悩むことなの?

 それとも、考えなし?



「体を動かすのが好きだから、かな」

「わからない」

「リーたんはそうだよね。おうちが大好きだし」



 わたし、そんなに根暗に見えてる?


 

「私、前世だと引きこもりだったから」

「引きこもり?」

「外に出ずに、ずっと家の中にいたの」

「……へー」


 

 意外。

 前世から活発な人柄だと思ってた。


 人って死んだら変わるんだ。


 

「まあ、事故で両足が動かなかったから、仕方なかったんだけどね」

「は?」



 なんでミースはこんなことを軽く言うの?

 アホなの?

 バカなの?

 わたしの気持ちを考えられないの?

 重い話はちゃんと重々しく言ってよ。

 反応に困る。


 それに、こっちの心がびっくりする。



「自分で何もできないのは辛かったなぁ。ずっとお母さんに頼りっぱなしで、申し訳ない気持ちでいっぱいで……」

 


 は? なんでちょっと嬉しそうな顔をしてるの?

 辛い事じゃないの?



「だから、今自由に動けてるのがすごく楽しい! 冒険者稼業だと、のびのびと体を動かせるし!」



 ……はあ。

 なんで最後の結論がそんなにアホっぽいの?


 でも、ミースらしい。



「ミース」

「なに?」

「今は幸せ?」

「幸せに決まってるわ」



 その言葉は即答できるんだ。



「なんで幸せなの? ミースがいた世界って、もっといい暮らしができたんでしょ?」

「うーん。たしかにあっちの方が色々素敵だったけど……。人生で大事なのって、誰と生きるかじゃない?」



 誰と。

 今ミースと一緒に生きているのは――。


 

「……そう」

「うん、今はすごく幸せ」



 そっか。


 それならよかった。







いつも読んで頂き、ありがとうございます!


また、☆評価やブクマ、応援をしてくださった皆様、本当にありがとうございます!!(≧▽≦)


幸せです

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