第17話 案外シスターっぽい? フォレッタさん
「死刑ってどういうことなの!?」
妖精を生んだだけで!?!?
なにそれ、理不尽っ!
「不敬罪です」
「フケイザイ……?」
不敬罪ってアレでしょ。
王族の人相手に無礼なことをしたら、首スパーンってやつ。
「私、王族の人に何もしてないんだけど……」
「さて、どこから話しましょうか」
あー。
これ、面倒な話のやつだ。
でも、命に関わることなんだから、きちんと聞かないとっ。
「このアンファンスが属している国——ドルミル王国の歴史はどこまで知っていますか?」
「魔王軍と戦っているってことぐらい。あと、人間が作った、人間のための国ってこと」
この世界って、人間や魔物以外にも、エルフとかドワーフとか獣人もいるらしい。
まだ出会ったことないけど。
「その通りです。では、建国記については知っていますか?」
「……知らない」
リーたんから聞いた覚えはあるけど、楽しそうに話す顔しか覚えていません。はい。ごめんなさい。
でも、かなり長かった気がするし、全部は聞きたくないなぁ。
「わかっていますよ。簡単に要約しましょう」
「ちょっ、心を読まないで!?」
「顔ににじみ出ていましたよ」
あらやだ、私ったら。
お、フォレッタが背筋を伸ばした。
子供に物語を言い聞かせる時の姿勢だよね、これ。
「人間は昔、ここから遥か南にある土地に住んでいました。しかし、そこは毎日何百人と死んでしまうような、地獄のような場所でした。人々の心は荒んでいき、自ら命を絶つ者も珍しくありませんでした」
どんな地獄だったんだろう。
想像もしたくない。
「そんな時、妖精王から神託を受けたという者が現れました。彼は言いました。この世の楽園、新天地があるぞ! と」
「それが、ドルミル王国の王様?」
「正確には、初代国王です。彼は多くの人の心をつかみ、新天地を目指す旅へ出ました。その道中にも様々なエピソードがありますが。ミースは興味がないでしょう」
配慮していただき、ありがとうございます。
「多くの仲間を犠牲にしながらも新天地にたどり着いた初代国王と、国民たち。彼らはこの肥沃な土地に国を興し、人々は安寧を手に入れました」
「おー。ドルミル王国の建国だ」
「しかし、それは長くは続きませんでした。この土地を侵略しようとする、悪しき存在が現れたのです」
「もしかして、魔王?」
「そうです。魔王が送りこんでくる魔物に侵略され、人々は戦うことを選びました。戦争のはじまりです」
戦争かぁ。
一応今も戦争状態らしいんだけど、イヤだなぁ。
誰も死んでほしくない。
でも、この戦争があったから、今のアンファンスがあるんだよね。
ちょっと複雑な気分。
「人々は思うようになりました。人は死んだ後、どうなるのか。死んだ後、自分たちは救われるのか。その疑問は一気に広まっていきました。そんな中、国王はある宣言をしたのです」
おっ。
フォレッタが王様っぽいポーズをとりはじめた。
ノリノリだ。
「人は死ぬことによって妖精になり、この国を見守り続ける。そして、王には妖精の血が流れており、死んでも王と共にある」
あ、そのセリフ、聞いたことある。
吟遊詩人が熱く語っていたっけ。
「これが攻勢へと出る転換点となったのです。そしてこの価値観は、この国に強く根付いています。13月妖精教とはまた別の宗教として」
そっか。
やっとわかってきた。
私が不敬罪になる理由。
王様に妖精の血が流れているのに、妖精を産んじゃったから。
「ですが、あなたは妖精の生まれ方を知ってしまった。その身をもって証明してしまった」
つまり、妖精の秘密を知っちゃった私は国にとって不都合ってことか。
やば、ちょっとテンション上がるかも。
って、ちょっとおかしくない?
「でも、なんでフォレッタがそのことを知ってるの?」
「妖精の秘密を守り、混乱を防ぐ。それが、わたくしたち13月妖精教の役割のひとつだからです。わたくし個人としては納得していませんが」
「なるほどねぇ」
思った以上に、面倒なことになってるなぁ。
私、ただのしがない冒険者なのに。
「この村で問題視するのは、領主様と村長、それとギルド長ぐらいでしょう。しかし周囲に広めることはお勧めしません」
「うん、わかったよ」
「よろしい」
「えー。ボク、目立っちゃダメなノ?」
ミーちゃん、すごく不服そう。
そうだよね。
かなり奔放なミーちゃんだし、自由に動けないのは困るよね。
「ミースが生んだのではなく、懐いているだけだと言えばよいのです」
「ナルホド! フォレッタ、頭イイ!」
「恐れ入ります」
不敬罪かぁ。
あんまり気にすることじゃないよね。
ちょっと気を付ければ、いつも通りの生活を送れるはず。
それにしては、TS魔法のことといい、ミーちゃんのことといい、どんどん領主様への秘密が増えてくなぁ。
会ったことはないけど、ちょっと怖いかも。
「それで、ミース、あなたはこれからどうしたいんですか?」
「どうって……」
「あなたには様々な選択肢があります。このアンファンスどころかドルミル王国から出ることもできます。隣国では、妖精使いは重宝されるらしいですよ?」
なるほど。
そういう道もあるのかぁ。
でも、今はそんなことは考えられないかな。
「まずはフリーゼと仲直りしたい。それから考える」
「このまま仲直りしない方が都合がよろしいのでは?」
「どういう意味?」
ことの次第によっては、フォレッタ相手でも怒るよ?
「フリーゼちゃんから話を聞いています。どうしてケンカしているのかも。正直、ミースが一方的に悪いとは言い切れないでしょう」
「そうだね」
あれは事故だったと思う。
でも、フリーゼがイヤだったのは事実だから。
「フリーゼちゃんと一緒でなければ、あなたが女性になることも、仲直りキノコで死にかけるようなこともなかったんですよ?」
「うん」
「少し離れたほうが、ミースにとってよいと思います」
リーたんと離れ離れ、か。
考えたことはあったよ。
このままでいいのかな、って。
何回も何回も、夜な夜な悩んでいた時期もあったけど、いつも答えは決まっていた。
「でも、私はフリーゼとずっと一緒にいるって決めてるから」
「自分を不幸にしてもですか?」
「不幸なんかじゃない。フリーゼと一緒にいるのが、私の幸せだから。もし不幸になるなら、幸せになるように全力を尽くしたい、って思ってる」
「それは依存かもしれないですよ」
「これは愛。私はそう信じてる」
「……はあ」
なんなの、このやりとり。
ちょっと誘導された気がするんだけど。
「もうわかりました。ほら、フリーゼちゃん」
「…………ミース」
「……へ?」
突然、フリーゼが目の前に現れたんだけど!?
そっか!
魔法で姿を消していただけで、ずっとフォレッタの横にいたんだっ!
「顔を合わせにくかっただけだから」
「おわっ!」
抱き着かれたけど、抱き返していいのかな?
いいよね、きっと。
「……うん」
「ミース、嘘ついてない?」
「ついてない」
「無理していない?」
「してるわけない」
「……ん」
頭を撫でさせてもらえるってことは、もう許してもらえたのかな。
フリーゼの考えはよくわかんないけど、抱きしめられるだけで幸せだ。




