第12話 頼みごとを何でも聞いてくれるイーリャンさん
まったく、今日はいい朝やわー。
朝飯に好きな豆のスープをぎょうさん飲めたし、寝起きもばっちり。
自慢の緑髪もつるんつるんやわー。
小鳥もチュンチュンとご機嫌に鳴いとるし、お日様もポカポカ。
さっさと玄関掃除を済ませて、開店準備をせんとな。
今日もぎょうさん儲けたるでっ!
……おん?
誰かがこっちに近づいてきとるな?
フラフラやし、行き倒れやろか?
いややわー。
せっかくのいい朝やなのに、損な役回りが――って。
「……イー……リャン……」
「ミース!? なにがったんや!?」
めっさやつれてるし、クマもひどいで!?
いつでもどこでも眠れるミースがなんで
一昨日はあんなに元気にしとったやろっ!
「……この子を……お願……い」
「ばぶ?」
え、なんやこの赤ちゃん。
青髪やし、この澄ました顔、見覚えがあるような……。
まさか、フリーゼやあらへんよな?
勘弁してほしいわー。
「全く、フリーゼもフリーゼだシ、ママもママよネ」
なんやこのべっぴんさんな妖精。
ミースの谷間から出てこうへんかったか?
それにしても、この時期に妖精なんて珍しいなー。
まだ13月やないはずなんやけど。
「あんさん、どちら様?」
「ミースママの娘ダヨ?」
「は?」
なに、むすめぇ!?
寝耳に水なんやけどっ!
「い、いつ生まれたんやっ!?」
いや、うち、そんな悠長なことを聞いてるんちゃうぞ、うちぃ!?
「昨日ダヨ」
「ほんまにミースの娘なん!? ミースから生まれたん!?」
「そうだヨ。」
「……………」
なんて言ったらええんやろ。
この幼馴染たちはほんまに酷いわ。
ひとりは赤ちゃんになってギャン泣きしとるし、ひとりは全部をうちに押し付けて鼻提灯を作りおって……。
これ、地団駄踏んでも許されへん?
「あーもー! 意味わからんことばかりせんといてやっ!!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いつもごめんね、イーリャン! 本当に助かった!」
いやー。
本当によかった。
私はもう限界だったし、イーリャンならなんとかしてくれるって信じてた!
さすが幼馴染一のしっかり者!(私調べ)
「ほんまに苦労したんやで? わざわざ上司に頭を下げて、」
「ありがとう! このお礼は必ず……!」
「ほんまに頼むで?」
私にできることは少ないけど、なんでもやる覚悟です!
「それで、なんでこないなことになったのか、説明してもらいましょか」
「あれ、ミーちゃんから聞かなかったの?」
「ミーちゃん……あの妖精のことやんな。それなら、ほら、あそこでグルグル巻きにされとる」
「んん―――!!」
ほんとだっ。
縄で入念に縛られて、ミノムシみたいになってる!
「ミーちゃん!? 何があったの!?」
「赤ん坊のフリーゼにちょっかいを掛けて泣かせたり、うちにイタズラをしかえようとしたさかい、ちょっと痛い目にあってもろただけや」
あー。
自業自得だ。イーリャンはイタズラをするのは好きだけど、自分がされるのは大嫌いだし、子供大好きだから。
ごめんだけど、しばらくそこで大人しくしててね。
「じゃあ、いちから説明するね」
「おう。よろしゅうな」
えっと、まずはミーちゃんとの出会いを語るべきだよね。
それで、2人の娘がしちゃって、ミーちゃんがフリーゼを転ばせたせいで、フリーゼが自分の魔法を受けちゃった。
その後、魔法の効果時間が切れるまでお世話するしかなかったんだけど、これが大変だった!
なんで泣いてるかよくわかんないし、赤ちゃんのお世話をしたことなんて全くないし、全然寝かせてくれなかったし……。
もうガムシャラに頑張ってたら日が昇ってて……。
連日の疲労もあって私はもう限界。
最後の力を振り絞って、イーリャンに助けを求めに来たってわけ。
「なるほどなぁ。ミースも大変やなぁ」
「おかげで退屈しなくて楽しいよ」
「そのポジティブ思考が羨ましいわ」
褒められて照れちゃうなー。
「それで、なんでうちのところなん?」
「どういう意味?」
「子供のことなら、フォレッタのところがよかったんちゃうん?」
それも考えたんだけどなぁ。
彼女、13月妖精教のシスター見習いをしてるし、子供の扱いに慣れてるし。でも――
「フォレッタってフリーゼのことが大好きでしょ? こんな状態のフリーゼを見たら……」
「……とんでもないことになりかねまへんなぁ」
すんごい顔で暴走する姿が、簡単に想像できちゃう。
私たちは慣れてるけど、フォレッタの熱狂的なファンって多いからなぁ。
最悪、このアンファンス中が阿鼻叫喚になるかも。
「おぎゃああぁぁぁあ おぎゃあああぁぁぁあ!!」
「うわっ!?」
寝ていたはずのフリーゼが突然泣き出したんだけど!?
何事!?!?
「フリーゼ~~~。どないした~~~ん」
おー。
イーリャンのにこやかなスマイル、すごい。
普段の顔がうさん臭いだけにギャップが途轍もない。
イーリャンは子供が好きで、お客さんの子供の世話をしてたりするからなー。
ほんと自慢の幼馴染です。
「んー。おむつやなさそうやし、これはあれやな」
「あれ?」
「お腹が空いたみたいやから、ミルクっぽいなぁ」
みるく?
え、フリーゼにミルクをあげる……?
私の胸、豊かなものがついているのですが…………まさか!?
え、うそ。
ありえるの!?
少し前まで、私がオギャりたいって土下座してたのに!?
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