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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第五章 旧転職神殿復興プロジェクト

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67 ある訓練所職員の話 2

キアラさんに午後の訓練の説明をする。


「午後は基本的に模擬戦を中心に訓練を行います。同じくらいのレベルの相手と模擬戦をしてもいいし、先生クラスに模擬戦を挑んでも構いません。最初は先生クラスの方がいろいろと指導してくれるので、初心者にはいいかもしれませんね。お勧めは団長ですね。ああ見えて結構教え方は丁寧なんですよ」


「そうか、だが我は貴殿に稽古をつけてもらいたいのだが」


「そう言われましても、私は下っ端の下っ端なので、変な癖がついてもいけませんし、団長にお願いしたほうがいいですよ。怖いのは顔だけなので・・・」


ここで団長が現れた。


「おい!!今、俺の悪口を言ってなかったか?」


「いえいえ、キアラさんが団長に模擬戦をお願いしたいと・・・」


「まあいい、お嬢さん。かかってきなさい」


「お嬢さんとは・・・舐められたもんだな!!」


こういうのは良くないな。教えてもらうんだから、礼儀はちゃんとしないと。後でアドバイスしてあげよう。


団長とキアラさんの模擬戦が始まる。キアラさんは両手に短剣を装備した双剣術を使うようだ。獣人特有の身体能力を生かし、スピードとパワーで押し切るスタイルのようだった。

模擬戦を途中で止め、団長とキアラさんの模擬戦を観戦している訓練参加者が増えた。


「なかなかやるな、あのお嬢さんは」

「うん、スピードもパワーもある」

「まあ、団長には敵わないだろうけど」


キアラさんは、攻撃は素晴らしいが、連続攻撃の後に守備がおろそかになる。それに身体能力に頼り切っているので、無駄な動きも多い。団長はそこを確実に突いていく。


「団長さんは優しいなあ。確実に弱点に打ち込んであげて、教えてあげてるからな」

「それにしても、あの娘も凄いぞ。どんどん弱点を修正している」

「そうだ。午前中の訓練でも頑張っていたし、これは将来期待できるかもしれない」


しばらくして、団長がキアラさんの短剣を弾き飛ばし、喉元に木剣を突き付ける。

キアラさんは涙を浮かべていた。

俺はキアラさんと団長に近付き、キアラさんに言う。


「キアラさん、勝っても負けても指導してくれた団長にお礼を言ってください。ここはお互いをリスペクトし、高め合う場所ですから。悔しいのは分かりますが、そもそも団長はマリシア神聖国の元騎士団長ですからね。我々が勝てる相手ではありませんよ」


キアラさんは驚いた表情を浮かべた。少ししてキアラさんは言った。


「非礼を詫びる。ご指導ありがとうございました」


結構素直じゃないか。知らないって怖いよね。俺もライアット皇子で大失敗してるから、人のことは言えないけど。


そこからキアラさんは、色々な相手と模擬戦をしていた。勝っても負けても、しっかり訓練後にはお礼を言えるようになっていた。



★★★


訓練開始から1時間が経過した頃にケルビン先生がやって来た。訓練参加者は模擬戦を中断し、ケルビン先生に挨拶をする。俺はケルビン先生に午前中の訓練結果の報告をする。


「ほう、新人のお嬢さんか・・・なるほど・・」


団長も会話に入ってくる。


「なかなかに筋がいいですぞ。それに負けず嫌いですし。レナードなどすぐに抜かれるかもしれませんぞ」


「それは面白い。そうだ、今日はドーラから頼まれてな。ちょっとレナード、ドーラと模擬戦をしてくれ」


「はい、分かりました」


これ以外の受け答えをしたら殺される。基本的に返事は「ハイ」か「イエス」か「了解」しかない。

ドーラさんか・・・ヤバすぎる。元々犯罪組織ドーラ一家の大親分で、大柄な女性で半端ないパワーをしている。武器はハンマーとか棍棒とかをメインで使う。

普通に剣で受けたら剣ごと腕をへし折られてしまう。


「おい!!みんな、模擬戦は中断してくれ。これより、ドーラとレナードの模擬戦を行う。危険だから付近には近づくな!!観戦席に上がってよく見ておけ」


ケルビン先生が指示する。危険ってどういうことだ?


すぐに理解した。ドーラさんが持っている武器がヤバすぎる。巨大な鉄球に長い鎖がついている。想像したくないがあれを振り回すのだろう。冷汗が止まらない。


「レナード悪いねえ。威力はあるんだけど、細かいコントロールがまだできなくてね。特にちょこまか逃げる相手と相性が悪いんだ。いつもどおり逃げ回ってくれたら、それでいいから。

サマリス相手だと威力を上げる訓練はできても、コントロールがつかなくてね。あいつは逃げないから」


「ハハハ、はい。こちらこそ、お願いします」



地獄が始まった。

巨大な鉄球に俺は追い回されている。観戦席の者は興奮している。他人事だからショーを楽しんでいるような感覚だろう。


「いけいけドーラ!!潰せ!!」

「レナード!!しっかり逃げろ」

「すげえ!!かすっただけで壁が壊れたぞ」


かすっただけで壁が壊れるということは、かすっただけで、骨が折れるということだ。幸いドーラさんは、まだこの武器に慣れていないようで、俺でも何とか躱せている。それに何度か攻撃チャンスがあった。しかし、攻撃をするぐらいなら、逃げたほうがいい。一か八かで死んでも仕方ない。


「やめえ!!ドーラ、レナード!!こっちに来い!!」


模擬戦を中断し、ケルビン先生の元に集合する。早速指導が入る。


「レナード!!何度か攻撃チャンスがあったのになぜ攻撃しなかった。次攻撃チャンスに攻撃をしなかったらどうなるか・・・・」


「申し訳ありません。必ず攻撃します」


俺はすぐに訓練開始場所まで戻った。ドーラさんは、まだケルビン先生にアドバイスをもらっていた。


模擬戦が再開する。俺も鉄球に目が慣れてきて、何度か攻撃ができるようになった。そんなとき、悲劇が起きる。鉄球を躱し、ドーラさんに切り掛かろうとしたとき、ドーラさんは鉄球からハンマーに持ち替え、殴り付けてきた。


ヤバい、死ぬ!!


咄嗟に剣でハンマーを防ぎ、自分から後方に飛ぶ。衝撃はかなり軽減できたが、それでもドーラさんのパワーなので、観戦席まで吹っ飛ばされた。幸い、団長が吹っ飛ばされた俺を受け止めてくれたので、かすり傷程度で済んだ。


「やめえ!!」



やっと終わった。

ドーラさんも駆け寄ってくる。


「ありがとうレナード、なんか掴めた気がするよ。近付いてきた奴にはハンマーで迎撃する。また、模擬戦をしてくれ」


絶対にしたくないが、こう叫んだ。


「ハイ!!喜んで!!」



★★★


昨日はえらい目にあった。朝から体中が痛い。訓練所に着くとキアラさんが掃除をしていた。


「ど、どうしたんですか?こんな朝早く。職員でもないんですから、気を遣わなくても」


「おはようございます。私も臨時職員に採用されたんです。どうか弟子にしてください」


弟子?

それに言葉遣いもなんか変わっているし・・・


「あのう、私はまだ弟子を取る立場にはないのですが・・・」


「そんな!!先生は十分お強い。チンピラを瞬殺し、あのドーラさんとも互角に・・・」


「うーん、しばらく保留でお願いします。まだまだ強い人がいますから、その人達を見てからでいいのではないでしょうか?」


その日はドーラさんの他にサマリス王子、アイリス王女、ライアット皇子、クリストフさんが訓練に来ていた。

ケルビン先生も彼らと模擬戦をしていた。


キアラさんはショックを受けている。


「言ったでしょ。ヤバい人がいっぱい来るって。だから、こんな弱い私が弟子を取るなんて・・・」


「でも私は貴方に指導をしてもらいたいんです」


うーん困った。この実力で弟子なんて取ったら何を言われる分からない。それにキアラさんはかなり美人だ。絶対にからかわれたり、訓練で弄られてフルボッコにされる。


「貴方の師匠にはなれませんが、ただの先輩としてなら少しくらいはアドバイスしますよ」


「じゃあ、それでお願いします。レナード先輩!!」


俺はキアラさんに言った。


「とりあえず、団長に勝てるように頑張りましょうか。ケルビン先生達は人間じゃありませんからね」


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