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129 アークデーモン

ゴリラ風のコンガ、女性天使風のルシール、8本腕のスケルトンのスカルズ、三体のアークデーモンが、ベビタンに土下座している。


バーバラが彼らに対して言う。


「とりあえず、お主らの要求を聞こうか?」


するとコンガがまた、文句を言う。


「人間のガキが偉そうに!!我らはデーモンロード様に話をしているのだ。引っ込んでろ!!」


「こちらのバーバラ様は、僕の契約者様なんですが・・・」


またしてもコンガは青ざめる。


「申し訳ありません!!デーモンロード様と契約なさるなど、普通はできません。失礼をお許しください」


ここもルシールがフォローを入れる。


「まあよい、早く要求を言うのじゃ」


アークデーモン達の話では、エジルに召喚されてきたのだが、あまりの戦力差に絶望して投降してきたとのことだった。プライドが高く、回りくどい言い方だったが、結局はそういうことだ。

ベビタンが尋ねる。


「でも契約で、勝手に投降とか降参とか普通はできないと思うんですが?」


「ああ、それがですね。契約者がかなり焦っていたようで、こちらに有利な契約をしてやったんです。だから契約書にちょっとした言い回しや抜け道を用意して・・・・つまり、こちらよりも格上の悪魔が居た場合や消滅の危機に陥れば降参してもよいということです」


「それでは契約書を見せてもらえますか?」


「もちろんでございます」


ベビタンはルシールが魔法で出した契約書を確認している。見たこともない文字で書かれているがどうやら細かいことが書いてあるようだった。

確認を終えたベビタンが言う。


「こちらを確認したところ、無条件降伏はできませんね。正確には「相手方と交渉する余地はある」ということです。「交渉」と「降参」を後で書き換えられていますね。契約者が一枚上手だったということでしょうね」


ベビタンはバーバラの秘書として書類仕事もしているので、契約書の読み方も完璧だ。


「ということは・・・・我々は戦わなくてはならないのですか?」


「そうなりますね・・・残念ですが」


「どうかお許しを!!このまま消滅してしまえば、ポイントが足りず、魔界に戻ったらアークデーモンからデーモンに降格されます。そうなったら、散々馬鹿にしてきた奴らに仕返しされて・・・・」


本当に個人的な理由だ。


「お願いです。後1ヶ月は消滅は勘弁してください。1ヶ月したらポイントが溜まって降格は無くなりますので」


三体とも懇願している。


契約書を熟読していたベビタンが言う。


「こちらで検討したところ、抜け道はいくらかあります。提案できるとしたら、安全な勝負でもして、それを元に契約を結び直すことでしょうか?」


ベビタンの説明によれば、決闘による再契約は認められているようだ。

なので、命の危険のない勝負の対価として、こちらは「1年間の捕虜生活」、向こうの要求としては「1ヶ月間のバスカン砦への攻撃の禁止」とすることにした。


ベビタンが言う。


「契約は何でもかんでもできるものではありません。お互いの状況を鑑みて決めるものです。圧倒的にこちらが有利な状況ですので、これくらいの条件が妥当だと思うのですが・・・」


これには三体の悪魔も賛成する。


「流石はデーモンロード様です。契約書の穴を突く、解決策を授けてくれるなんて!!」


これはデーモンロード様の実力ではない。ヤマダ商会や領地経営で培ったスキルだ。



★★★


ということで、勝負をすることになった。3対3の団体戦で最初の種目は相撲だ。相手はコンガが出場する。こちらはというとギーガが出ようとしたところで、ドーラが遮った。


「棍棒戦も武術大会もアンタに負けたから、今回はアタイにやらせておくれよ。これでもトレーニングをしてきたんだ」


これに対してコンガが言う。


「なんだ、女か・・・まあ、手加減せんがな。それに勝てば1ヶ月は攻撃されないからポイントも溜まる。そして1ヶ月後にまた勝負を挑んで勝てば、更にポイント2倍だ」


調子が良すぎる・・・ただ、そうはならないと思うけど。


結果はドーラの圧勝だった。コンガは悔しがる。


続いては模擬戦だ。

相手はスカルズで、元々は人間で一流の剣士だったそうだ。しかし、死後はスケルトンとなり、スケルトンとして経験を積んだことで、アークデーモンまでなり上がったようだ。意外に苦労人?苦労骨?だ。

しかし、相手が悪い。

レナードに対しては歯が立たずに完敗だった。


勝負はこれでついたが、ルシールは引き下がらない。


「勝負はつきましたが、三連敗では我々のプライドが許しません。一矢は報いさせてもらいます。最後の種目は軍略将棋です。御三家一の智将と呼ばれた私が負けるなんて、万に一つもありません。それに捕虜になるにしても、実力を示したほうが待遇も良くなるでしょうからね」


これに対してこちらは・・・・


「私達が行きます。魔王軍四天王随一の智将とは私達です」

「そうです。コテンパンに叩きのめしてやります」


リルとリラが名乗りを上げた。

リルとリラが軍略将棋が強いなんて、聞いたことがない。まあ、本人達もやる気になっているし、負けてもこちらの勝利は揺るがないから許可した。


しかし、リルとリラを出して本当に後悔することになる。観戦していた者達は絶句している。


軍略将棋はルールくらいしか分からない私でも確実に分かる。この三人は馬鹿だ。

見え見えの誘い手に引っ掛かったと思ったら、誘い手を打ったことを忘れて自滅する。お互いに何回も詰ませるチャンスはあったが棒に振っていた。


全くの泥仕合だった。


結局、勝負はつかずに引き分けとなった。しかし、三人は健闘を称え合っていた。


「なかなかやりますね。魔王軍にも私に匹敵するぐらいの智将がいたとは」


「お前もなかなかだな」

「部下にしてやってもいいぞ」


しかし、観戦した者達は冷ややかな視線を向けていた。


まあでも、これで無傷でバスカン砦を落とせたのは大きい。


しばらくして、他の悪魔達も投降して来た。総勢20体だ。

この悪魔達も捕虜になることを受け入れた。上位のアークデーモン三体が敵わないのなら、戦っても勝てないと思ったのだろう。


ここからは砦に入り、しばらくはここを拠点にすることにした。


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