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8-4

 世界とそこの居る人らの変化が完了する……。

 するとホーリネス達は春先と魔女との間に入り、まるで壁を作るよう横に整列した。


「全く……、本当に鬱陶しい奴らだよ君らは」

 春先は醜悪な形相でそう言いながら、体の触手をうねらせる。

 粘液のようなどろどろの液体を纏った触手はてらてらと妖しく艶めかせていた。


「徹底的に堕としてやるよッッ!」

 その言葉と同時に、春先のぬるぬる動く触手と、春先のとりまきのホーリネスが一斉に襲い掛かる。

 それを隠花とひがん、たった二人で迎え撃つ。

 その圧倒的な物量差に、春先は口角を上げ舌なめずりをして二人の魔女を見下していた。


「リコリスちゃん!」

 だが隠花もひがんも一切臆さなかった。


 隠花は持っていた杖を高らかに掲げる。

 直後に杖先が眩く輝きだし、それを確認した隠花は一つ頷いて地面と水平方向に大きく体を回転させて杖を振るった。


 すると杖先に湛えていた光はひがんの下へ飛んでいき、春先の触手が到着する前にひがんへ着弾する。

 隠花の杖から放たれた光を受けたひがんは、一つ小さく頷いて大鎌を大きく横へ薙ぐ。


 結果、迫りくる触手は一本残らず全てバラバラになり、襲い掛かったホーリネスの胴体も切り裂かれ、半分は光の粒となって消滅してしまう。


「ば、馬鹿なッ!」

 たった一撃、たった一度だけのひがんの攻撃。

 なのに春先の戦力は半分減った。

 その現実に、春先は口を開けてただただ茫然としてしまっていた。


「ありがとう、カイカちゃん」

「ううん、上手くいって良かった」

 隠花は笑顔で少し照れつつひがんの方を向いてそう言うと、ひがんは無言のままもう一つだけ頷いた。


「僕はホーリネス一等星だぞッ! 僕の仲間も全員二等星以上だッ! なのにどうして……!」

 実はこの時、隠花やひがんが今までの魔女活動で戦い慣れしていた事が功を奏した。


「そうか……、あの時の影響か……」

 また以前にひがんが指輪の力で暴走した時、彼女から逃げるために使った精神世界から強制脱出する力は、春先の力を著しく減少するものだったのだ。

 勿論、こうなる事は春先も知っていた。

 だがあの場で逃げなければ命そのものが危うい事を悟り、仕方なく強制脱出の力を使ったのだ。


「チィ、忌々しいッ!」

 春先はそれらを思い返すと、舌打ちをした。


「もう一度さっきの出来る?」

「うん! 何度だってやるよ!」

 隠花やひがんは、その事を蝕美から事前に聞いていた。

 その言葉が真実であり、明らかに魔女側が有利な事を確信した二人は、目線を合わせて大きく頷いた。


「……仕方ない。こうなったら奥の手を使うしかないか」

 春先は俯きながらぶつぶつとそうつぶやく。

 その直後、春先は魔女達に向けていた触手で仲間のホーリネスを強く絡めとり……。


「な、なにこれ。生き残っていたホーリネスを……食べている……?」

 春先の鏡餅状になった胴体の下腹部が大きく横に割れる。

 割れた箇所には無数の牙とざらざらとした舌が出てくると、春先はそこへ絡めとったホーリネスを全て放り込んで咀嚼しだしたのだ!


 魔女の二人が戸惑っている中、春先の仲間のホーリネスはあっという間に食べられてしまった。


「グヘヘヘ……」

 共食いが終わった春先は、静かに怪しく笑いだす……。


「リコリスちゃん見て! あの体!」

「あれは……!」

 隠花は春先の方へ指さし、ひがんはそちらを向き表情こそ変えないが眉を少しだけひそめた。


 春先の全身が心臓のように大きく鼓動し脈打つ。

 その度に白い光と突風を周囲にばらまき、隠花のツインテールやひがんのロングヘア―をなびかせた。


「ブグラルァァァアアッッッ!!!!」

 そして何度か激しく脈打った直後、春先は今までにないくらいに激しく絶叫する。

 周囲はたちまち白く眩い光に包まれて、そこにいた隠花とひがんを一瞬のうちに飲み込んだ……。


 …………。

 …………。

 …………。

 …………。


「リコリスちゃん!」

 光の中、隠花の声が聞こえる。


「待ってて、今私がなんとかするから……!」

 再び隠花の声がすると、杖を振り回すときに生じる風切り音が何度か鳴り……。


「えいっ!」

 眩い光の中に、甲高い高周波音が鳴り響く。

 直後、隠花を中心とした球状に白い光が消滅していき、世界は再び白と黒を取り戻していく……。


「助かったよ」

 あのままだと春先の光に飲み込まれて身動きが取れなかった。

 その事を分かっていたひがんは、隠花の方へ寄ると大きく頷きながらお礼を告げる。

 ひがんのその態度を見た隠花は、高らかに掲げていた杖を下げた後に抱えると、少し頬を赤らめた。


 隠花の放った白い光を跳ね返す力は、みるみると精神世界に広がっていき……。

 やがて春先の姿も見えるようになると……。


「あ、あれ!」

 そこには、今までの醜悪な化け物のような春先は居なかった。


「ふむ、悪くない」

 そこには、肌が白く体毛が一切無い。

 今まで春先が操ってきた触手も無い。

 顔には目や鼻も無い。

 まるでマネキンのような、最低限の肉と皮と骨だけの人型の生命体が居た。


 マネキンのような生命体は、手を開いたり握ったりしたり、自分の姿を見たりしている……。


「も、もしかして、ホーリネスを取り込んでパワーアップしたの……?」

「……そうかも」

 勇敢に戦ってきた隠花もひがんも、今この時だけは後ろに二歩程下がって春先から離れていた。


「さて、本番と行こうか。僕は酷く飢えてるから、ひがんもそこのホーリネス成りそこないも食べてあげるよぉ……ッ」

 そう言うとマネキンのような生命体の顔や頭部から無数の瞳と口が開く。

 それと同時に背中から八対の天使の翼が広がり、翼の後方には二重になった光輪が顕現した!


 人型ではあるが、人とは程遠い様となった春先の反撃が始まる。

 隠花もひがんもそう確認し、武器を力強く握りしめて春先の方を強く睨んだ。

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