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ひがんが退院してから数日後。
とある地方にある公園にて。
普段は子連れがメインに居るこの場所は、今日は違っていた。
アニメやゲームの登場人物を模した若い男女が居たからだ。
何故なら、本日ここでコスプレ撮影会をするからだ。
もちろんイベントは正しい手順を踏まれた正規なものだ。
しかもこれで四回目と、浅いが歴史もある。
ただそもそも都心から離れた地方でのイベントで、公園へは徒歩か車でしか行けないため、参加者はレイヤーとカメコ合わせて十数人程度でかつお互いに顔なじみだ。
当然、今回もまた小規模なイベントになるはずだった。
「あれ? 今日は人多くないか?」
「見ない顔だな、誰だろ」
常連レイヤーが普段とは違う光景に気づく。
それは公園内、アスファルトで舗装された道の真ん中で起きていた。
どういうわけか、カメコが円陣を組んでいる。
その一帯だけでも過去の参加者と同じくらいの人数が居るくらい多い。
「あのすみません、あまりに露出しているコスプレは禁止となっておりまして……」
「ぶたりくちゃーん! こっち向いてー!」
そして円陣の中央には二人の女性が居た。
一人はコスプレイヤーのぶたりく。
今日はフリル付きのカチューシャを頭につけ、レザー製のロンググローブと二―ソックスを穿いているが胴体部は局部を前張りにしているだけという、服を纏うとは程遠いコスチュームをしている。
もう一人はカッターシャツに黒いスカートを穿いており、関係者と書かれたストラップを首から下げている。
「この公園、参加者以外にも人が居られますし……」
コスプレ会場は、あまりにも露出度の高い衣装を禁じている所が多い。
この公園はコスプレイヤー以外にも利用する事から、当然同様のルールを決めており、SNSやウェブサイト上でも明文化されている。
だからこそ、関係者の女性はぶたりくへ注意をした。
「はいはいーっ。みんなポーズとか遠慮なく言ってね!」
「ぶたりくちゃん! もうちょっとかがみ気味でお願いー!」
「おっけーさー!」
だがぶたりくは一切気にせず、カメコの方を向いてポーズをとっていく。
カメコは、関係者の女性を気にする者もいたが、ぶたりくが際どいポーズをすると、カメラのシャッターを押す事を優先した。
「あのー、このままだと退場していただく事に……」
「何? うるさいんだけどさ? 何なのあんた?」
ぶたりくがようやくポーズをとるのをやめると、不快感を露わにしながら関係者の女性の方を向いてそう言い放った。
「私、このイベントの責任者で……」
「ちゃんと隠してるじゃん。バカじゃないのこのババア」
「……迷惑ですし帰って下さい」
この時、ぶたりくがポーズをとるのをやめると、カメコ達もぶたりくと同様に関係者の女性へ不満げな表情を見せた。
関係者の女性は少しおどおどしながらも、会場の秩序を守るべく胸を張ってそう告げた。
「あーあと、そこの戦隊モノのヒロインの子と、ドレス着てる子、あとそこの黒髪の子。いい仕事紹介してあげるからさー!」
「えっ? えぇっ?」
「こんな場所より、もっとお金稼げてみんなから注目されるキラキラな仕事だからさ」
「あの……、勧誘行為は禁止で……」
「うるさいなー、はいはい分かったさ。もう来ないから、じゃ三人もついてきて」
ぶたりくは関係者の女性に向かって手を振ってあしらおうとしつつ、騒ぎを見に来たコスプレイヤーのうち三名を指名する。
「ささ、こっちこっち。転ばないようにね」
当然その三人は警戒した。
だがぶたりくが指名した直後、周囲に居たカメコがすかさず彼女らを取り囲み、そのまま移動する。
着替えもしないまま彼女らは会場外に出てしまい、駐車場に泊めてあった白いバンへ強引に連れ込まれてしまった。
そして、車は彼女らが抵抗する間もなく出発してしまう。
両脇をガタイのいいカメコが居るせいで逃げる事も出来ず、走ってしばらくたつと目隠しをされてしまいどこへ向かうかも分からなくなってしまう。
「あの、何で目隠しなんでしょう?」
「サプライズさー! 大丈夫怖くないから!」
コスプレイヤーの一人が、声を震わせながらそう問いかけた。
ぶたりくはそんな彼女に対し、明るく答えた。
他の二人は声が出せず、ただ震えている事しか出来なかった。
車はしばらく道路を走り、一時間程度経った頃に停車する。
コスプレイヤー三人はカメコに両脇を掴まれたまま下車すると、近くにあったビルへ入っていく……。
こうして三人とカメコ複数人、そしてぶたりくはビル内にあるエレベーターの中に入る。
ぶたりくは、エレベータ内の操作盤にあるタッチパネルに親指を押し付けると、自動でドアが閉まり上層へと向かっていき……。
「はーい、三名様ご到着ー! ささ、みんな目隠し外してー!」
三人の少女達は、おどおどとしながらも目隠しを外す。
「えっ、なにこれ」
「ひぃ」
「ここって……!」
少女三人が招かれた部屋。
そこは黒い壁で囲まれた、金縁の家具やダブルベッドが並んでいて、ガラスの机の上には蝋燭や手錠、注射器やあとは用途もよく分からない器具が乱雑置いてある。
そして部屋の中央には、目元を仮面で覆った恐らく中年男性であろう男達三人が、舌なめずりをしながら裸のまま立っていたのだ。
「ぶたりくちゃん、いつも悪いねぇ」
「お安い御用さ。じゃ、ごゆっくり~♪」
ぶたりくはそう言うとエレベーターの中へ入っていく。
遅れてカメコらも入ると、エレベータの扉は固く閉ざされてしまった……。
「へー、地方の子だけど結構いい感じじゃん。衣装も似合ってるよ」
「これ、ビデオにしたら売れますね」
「間違いない」
これから何が起こるか、どうなってしまうのか。
それらの想像がついたのか、少女らは男達の会話を無視し、顔色を青くさせながらエレベーターの扉を必死で叩いたり、指を入れて無理矢理こじあけようと試みた。
「開けて! ここから出して!」
「無駄だよ、ここはプライベートスイートっていう貸し切り部屋だから、僕らの指示以外では絶対に空かないし人もしばらくは来ない」
だが男の一人が言う通り、エレベーターの扉はまるでびくともしなかった。
「ひひひ、楽しみだねぇ」
「君らはどのくらいに堕ちちゃうかなぁ~?」
「おじさん、ちょっと自信あるからさ。いっぱい遊ぼうねぇ」
男達が少女達へゆっくりと迫っていく……。
「い、いやぁ……」
少女達は、無力だった。
抗う事も出来ず、涙の溜まった瞳を欲望に満ちた存在に向けるだけしか出来なかった。
その頃、エレベーターの中では。
「みんな今日もお疲れ~」
「うっす」
「それにしてもほんとチョロすぎだよね。馬鹿で弱い奴ばっかで助かるさ」
「うっす」
「はー、これで一等星になれるとか~、あたし最高に輝いているじゃん?」
「うっす、ぶたりくさん最高っす」
ぶたりくは周囲のカメコに嘲笑交じりにそう言っていた……。
それからしばらく経った後。
コスプレモノのセクシービデオが発売された。
ビデオのパッケージには、地方のコスプレ会場でぶたりくが連れてきた少女の、あられもない姿があった……。




