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四百十二話 邪神衛星ルゴルノーク

 『眠死の邪神』ルゴルノークと名乗る小惑星型の邪神に降参されたヴァンダルー達は、困惑していた。

『いや、いきなり降参されてもどう受け止めればいいのか困るのですが』

 ヴァンダルー達が月に来たのは、月の魔物の存在を確かめるためだ。魔王軍残党の邪悪な神々との遭遇は、予期していなかった。


 それで襲い掛かってきただけだったら、ヴァンダルー達がする事は迎え撃つ事だけで迷う余地はなかった。

 しかし、降伏されると受け入れるか拒絶するかの選択をしなければならない。その材料がヴァンダルー達には足りていなかった。


(とりあえず、【危険感知:死】に反応がないし、殺気も感じないから騙し討ちの類ではなさそうですが)

 そう考えながらヴァンダルーが見ていると、ルゴルノークは唇の奥の眼球をゆっくり動かしながら呟いた。

『えぇ……? そんな事を言われても……どうすればいいのか……』

 どうやら、ルゴルノークはノープラン……何の思惑もなく降伏したらしい。


『グファドガーン、こう言っているけどこの邪神の事を知ってる?』

『シェイド、グファドガーンって今もついてきているの?』

『まあ、いるでしょ。ヴァンダルーの背後に』


「『眠死の邪神』ルゴルノーク……そう言えば聞き覚えがある」

『うわっ!? ほんとにいた!』

 レギオンの人格の一つ、シェイドに問われたグファドガーンはヴァンダルーの背後の空間から、音もなく姿を現す。


 その姿はいつもと同じエルフの少女のものだったが、宇宙空間で普通に話していた。おそらく、周囲の空間を操作して自分の周りに空気がある状態を維持しているのだろう。

「そうだ。思い出した。あれは『ラムダ』に降り立って直ぐの頃、ルゴルノークという邪神が姿を消したらしいという噂をしている者達がいた。当時の私は他者に関心が無かったので、どういうことか詳しくは聞かなかったので、それきりだった。

 偉大なるヴァンダルーよ、お役に立てず申し訳ありません」


『いえ、それよりルゴルノークの名前を聞いたのはその時だけですか?』

「はい。それ以後、ルゴルノークの名を聞いたことはありません」

 ヴァンダルーも自身の神話の知識を探ってみるが、ルゴルノークという邪神の名は何処にも残っていなかった。各地にいる使い魔王を通じて、『山妃龍神』ティアマトや『月の巨人』ディアナに尋ねてみるが、彼女達もルゴルノークの名を聞いた事はないそうだ。


『ん? この世界の知的生物?』

 そして、ルゴルノークもグファドガーンの事を知らないらしい。

「私は『迷宮の邪神』グファドガーン。この姿は依り代だ」


『そう……我はルゴルノーク』


「ルゴルノーク、偉大なるヴァンダルーの疑問に答えよ。汝は魔王軍の一員として何をした? 何時からここにいる?」

『私は魔王軍の一員として、何もしていない。この世界に来た時から、ずっとここにいる』


「そうか、ずっとここに……ずっとここに?」

 ルゴルノークの答えが意味する事を理解したグファドガーンは、思わず目を丸くして聞き返していた。

 なんと、ルゴルノークは魔王グドゥラニスに率いられてこの世界に来たが、その直後に脱走……というか潜伏。宇宙空間に隠れ潜み、グドゥラニス達が惑星『ラムダ』に降り立った後も十万年以上隠れ続けていたそうだ。


『よくばれませんでしたね』

『息を殺して隠れ潜むのが特技の種族出身なので』

 『眠死の邪神』ルゴルノークは、生きている時間の大半を仮死状態で過ごす生態の種族だったようだ。『地球』の生物で例えると、短い雨季の間だけ目覚めて活動する砂漠地帯のカエル等に近いかもしれない。


『でも、グドゥラニスにばれたら魂を滅ぼされる危険もあったのでは? なのに何故?』

『……働きたくなかったから』

 そして、滅ぼされる危険を冒してまで魔王軍から離れた理由は、働きたくなかったからという単純明快なものだった。


 ルゴルノークは怠惰な性質の持ち主であり、怠ける為なら消滅の危険を犯してグドゥラニスに逆らう事も厭わない邪神だった。

 月の後ろに隠れ続けていたために、勇者軍はルゴルノークの存在に全く気が付かなかった。だから、ベルウッドも彼を探しに宇宙に行く事も無かった。


『でも、グドゥラニスはルゴルノークがいない事に気が付かなかったの? 普通なら、後になって気が付いて、追っ手を差し向けそうなものだけど』

『力で支配する暴君には、離反者を生かしておくことはできないだろうからね』

 そう話すレギオンの疑問には、グファドガーンが答えた。


「おそらく、気が付かなかったのだろう。グドゥラニスに従う邪悪な神々の数は百や二百ではない。力のある名の知れた存在……ドポベゼパルオのような大物ならともかく、当時の私やフィディルグ、ゾゾガンテのような有象無象の名をいちいち覚えてはいなかったはず。

 それに何より、魔王軍は『軍』とは呼ばれていても、実際には軍事組織とは呼べない集団だった」


 魔王軍とは、魔王であるグドゥラニスに率いられた邪悪な神々と、邪悪な神々が使役する魔物の事を総じて名付けたものだ。そのため、実際は群であって軍ではない。

 元居た世界が滅びに瀕した時、グドゥラニスが異世界に連れて行く事が出来る、もしくは連れて行く価値があるとみなした一定以上の力を持つ者達を纏めただけの集団だ。


 邪悪な神々もグドゥラニスを魔王と恐れ、従っていたが、組織を作っていたわけではなかった。

 そのため、グドゥラニスも含めて全ての邪悪な神々の姿や名、何が得意でどんな性格の持ち主なのかを把握している存在はいなかったのである。


 そのため、元々名が知られていなかったルゴルノークがいなくなっても、誰も気が付かなかったのだ。


『じゃあ、ズルワーン達も貴方の事は知らないままなんですね』

『多分? 私はここで擬態したまま出来るだけ何もせずにいたから、分からないが』

 本人がただ月の後ろに浮かんでいるだけで、何もしていない。しかも、魔王軍の誰もルゴルノークの事を知らないか忘れたまま思い出さなかったので、ズルワーンもヴィダ派に転向した元魔王軍も彼の事を知らないままだった。


 宇宙から『ラムダ』を眺めていれば、月の後ろにいるルゴルノークを目にしていたかもしれない。しかし、ルゴルノークは背中からはただの小惑星にしか見えないよう擬態しており、その正体を見破るには彼と月の間に入ってみるしかない。

 そのため、ズルワーンやロドコルテも気が付かなかったのだろう。


 ……注意して探せば見つけられたかもしれないが、魔王軍残党が潜み暗躍する惑星『ラムダ』よりも、何事も起こっていない宇宙を優先して探す理由はなかった。

 実際、こうしてヴァンダルー達が月に来たのは、地上がだいたい平和になったからである。


「しかし、神である以上全ての者に忘れられて十万年以上存在し続ける事は不可能なはず。何もせず、ただ存在し続けているだけでも糧が必要なのは神も生物も同様。

 ルゴルノーク、汝は如何にして糧となる祈りや畏怖を得ているのだ?」


 グファドガーンが尋ねたように、人間に名すら知られていないルゴルノークは、祈られる事はもちろん、畏怖される事も無い。それでは、どんなに彼が仮死状態で長時間生きる事が出来る種族出身の邪神でも、十万年は生き延びられるはずが無い。


『ああ、それについては、こうして魔物を創っている。時間をかけてだけど』

「魔物? ゴーレムの事か?」

『いや、私の真下にいる』

 そう言われたグファドガーンは……ヴァンダルーの背後から動かないので、ヴァンダルーがルゴルノークの真下に行く。


『あ、いましたね。貝っぽいのが』

 そこには、砂に埋まるようにして硬そうな殻に包まれた生物、魔物が百匹以上集まっていた。

 殻は直径一メートル程の大きさで、半ば透き通っていて中が透けて見える。そこには、液体の中に甲虫か甲殻類のような物が浮かんでいる。


『宇宙空間に耐える殻の内側で、満たした液体を利用して生きている魔物、でしょうか?』

『はい、そんな感じです』


 卵として生まれ、しかしそのまま殻を破らずに成長。卵の殻をそのまま貝の殻のように大きくしながら、その内側に満たした液体に浮かんだまま成体となる。

 エネルギー源は、なんと周囲の魔素。自分自身や同類、そしてルゴルノークが放つ汚染された魔力を、少しづつ吸収し、何百年もかけて成長する。


 繁殖方法は雌雄同体であるため単性生殖。殻の中で卵を産み、それを殻の一部にくっつけ、何十年もかけて液体と共に殻で包んで……準備が出来たらところてんのように押し出して増える。


『……卵の殻を破らず成長し繁殖までするとは、ある意味凄い魔物ですね。自分の意志では一歩も動けなさそうですが』

『むしろ、魔物なのかと疑いたくなるレベルで無害だわ。いや、むしろ少しだけ魔素を吸収するから、益獣なのかしら?』

「人間を害するという、魔物共通の本能があるのかどうかも疑わしい」

『おおぉん』


 宇宙空間でも生存できるのは凄いが、ルゴルノークに似て動かずに生きていく事に全てを費やす生態に、何故か残念さを感じてしまうヴァンダルー達。クノッヘンは、この魔物の殻を骨と解釈するべきか否かについて悩んでいるようだが。


『名前は考えた事がなかったけれど、とりあえずシェルノークとでも名付けよう。このシェルノークは、月にしかいないので、当然人間と接触した事も無い。私の下で私を見上げ、私をほんの少しだけ凄いなと敬い、畏怖する存在。

 こいつらの信仰を維持するために、月に星を落としたりはしている』


『星を?』

『月の近くを横切る、私の百分の一あるかないかぐらいの星の軌道を魔力で歪めて、月に落としている』

 ルゴルノークはシェルノーク達に対して、自分はこんな凄い事が出来るのだと示すために、月に隕石を落としていた。それらは小さく、落下しても小さなクレーターが出来るだけで月そのものを危うくしたり、軌道を曲げるような衝撃はない。


 しかし、振動はシェルノーク達にも伝わるため、ルゴルノークを畏怖させるには丁度いい。また、彼が意図したもの以外にも月には隕石が落ちる事があり、シェルノークはそれらもルゴルノークの仕業だと誤解するため、都合がいい。


 そして、何より月に小さな隕石が落ちたところで、誰も気にしない。無害だし。

『それ、月ではなくラムダに落とす事も出来ますか?』

 しかし、逆にヴァンダルーは危機感を覚えた。ルゴルノークが自由に隕石の軌道を操る事が可能なら、月ではなくラムダに巨大隕石を落とすことも可能なのではないか? そう思ったからだ。


 グファドガーンとクノッヘンはその辺りの危機感がピンと来ていないようだが、プルートー達レギオンはハッとしている。

『可能か不可能かで言えば、可能。だけど、多分途中で燃え尽きると思う』

『燃え尽きる?』

『何故かは知らない。今まで『ラムダ』に小さな星が落ちていくのを何度も見たけれど、そのほとんどが落ちる前に途中で燃えてなくなっていた』


『……?』

『グファドガーン、ルゴルノークが言っているのは流れ星の事だと思います』

 隕石が大気圏に突入すると、摩擦で燃えてしまう事をグファドガーンは……というか、『ラムダ』世界の住人の多くは知らなかった。


 体験として宇宙から『ラムダ』に降り立った元魔王軍のグファドガーンだが、隕石と同じように大気圏に突入した訳ではない。そのため、隕石が燃え尽きるほど大気との摩擦熱が高くなる事を理解していない。

「そうでしたか。偉大なるヴァンダルーよ、英知を授けていただいたことに感謝します」


『どうも。それでルゴルノーク、燃え尽きない程大きな星を『ラムダ』に落とす事は可能ですか?』

『……無理』

『何故無理なのか、具体的に説明してください』

 ヴァンダルーがそう求めると、ルゴルノークは唇と眼球しかない体で器用に「面倒臭い」と感情表現をして、しかし答えてくれた。


 まず、燃え尽きずに『ラムダ』の地面に届くほど大きな隕石が近くまで来ることが滅多にないからだ。『ラムダ』世界の宇宙は、『地球』の宇宙と比べて圧倒的に狭い。しかし、ルゴルノークにとっては無限に等しい。しかも、彼の機動力はかなり低い。


 天文学的には近くを通る軌道の隕石も、ルゴルノークにとっては遥か彼方なのだ。とても軌道を操作するなんてことはできない。


 次に、ルゴルノーク自身の力不足によるものだ。自身の存在を維持するために必要な、最低限よりややマシ程度の糧で生きている彼の力は、かなり弱い。

 月の引力も利用して、近くを通る小さな隕石の軌道を寄せる事は出来ても、大きな隕石に干渉して軌道を曲げて『ラムダ』に落とすのはまず不可能だ。


 なら力が回復すれば可能なのかというと、それでも難しい。元々、ルゴルノークは他の魔王軍の邪悪な神々が名前を殆ど覚えられない程度の邪神だ。しかも、十万年の間力を高めようとは一切していない。

 力が完全回復しても、ルゴルノーク程度では大きなことはできないと本人も考えていた。


『なるほど』

 ルゴルノークの説明を聞いて、なるほどとヴァンダルーは納得した。惑星としての『ラムダ』の大気圏を隕石が突破するのに必要な大きさを『地球』と同じだとするなら、確かに莫大な魔力を必要とするからだ。


『ヴァンダルーでも難しいの?』

「ふむ……ちょっと小惑星の軌道を操作できるか、【念動】で試してみましょう」

 ヴァンダルーは【魔王の眼球】で手頃な隕石が無いか探し、目についた中で最も近い小惑星に【念動】をかけようとした。


『あ、無理』

 そして、実行すると境界山脈の一部を動かしてアーク山脈を造った時に匹敵する魔力を消費しそうだったので、慌ててやめた。


 無属性魔術の【念動】は、触れずに物を動かす魔術。必要とされる魔力は、術者から動かす目標までの間の距離がどれだけ離れているか、そして目標を動かすのに必要な力の大きさによる。

 ヴァンダルーは今までこの【念動】を使って、【魔王の欠片】を使って銃身から銃弾を撃ってきたが、それと比べても隕石の軌道操作は難しかった。


 やはり、数百キロ先の宇宙空間を高速で移動する直径数メートルの小惑星を動かすだけでも難しいようだ。地上で数十キロ先の対象を【念動】で動かそうとした事はなかったので、分からなかったが。

『ヴァンダルーの魔力でも無理なの!?』

 そう驚くレギオンとグファドガーンの方がショックを受けている様子だったので、ヴァンダルーは言葉を若干選んで説明した。


『少なくとも、簡単には無理です。もっと時間をかければできると思います』

 軌道を操作したい小惑星のもっと近くから……直接降り立って【念動】をかければ必要な魔力を三分の一、いや、もっと節約できるはずだ。


『じゃあ、『ラムダ』に巨大隕石が落ちてきそうな時はどうしましょう?』

『あ、落とすのではなく落ちないようにする方法ですか? その場合は……できるだけ早く爆破すれば何とかなるでしょう』


 小惑星の軌道を【念動】で操作するのではなく、単に『ラムダ』へ巨大隕石が落ちないようにするだけなら話は簡単だ。破壊すればいい。

 地上から【界穿滅虚砲】を撃って破壊するのは難しいし、隕石は無機物だから【貪血】も効果は無い。しかし、砲弾型使い魔王を打ち出すとか、色々な方法がある。


 また、宇宙空間に前もって使い魔王を漂わせて置いて、小惑星が大気圏に突入する前にぶつける方法もある。小惑星に直接降り立つ事が出来れば、【ゴーレム創成】で小惑星の一部をゴーレム化して無数のゴーレムに細分化する事も可能だろう。


『そうか! 映画のような事があっても、ヴァンダルーなら『ラムダ』を守れるな!』

『落ちて来る隕石の大きさや、事態に気が付いた時の状況次第ですけど、俺以外でも守れると思いますよ。ワルキューレ達レギオンも含めて』


 最大にまで巨大化したレギオンが小惑星に体当たりし、本体を小さく纏めて離脱。残りを自爆させればいい。

 他にも、グファドガーンが亜神を転移させるのに使うような、巨大【転移門】を開いて別の空間に飛ばしたり、クノッヘンが運びボークス、シュナイダー達の集中攻撃を命中させる事が出来れば、だいたいどうにかなる。


『おおぉん?』

『たしかに、クノッヘンの言うようにそれは『ラムダ』に小惑星が迫っている事が、事前に分かってこそ取れる方法ですね』


 ある日突然空から巨大な隕石が降ってくる。『地球』や『オリジン』でも簡単ではないのに、人工衛星はもちろん天体望遠鏡も無いこの世界で、小惑星の接近を事前に察知するのは至難の業だ。

 空に隕石が現れ、慌てて迎撃しようとしても間に合わない可能性がある。


 やはり、重要なのは情報だ。そして、その情報を得るのに都合のいい場所にいる邪神がいた。

『え?』

『ルゴルノーク、小惑星の監視を手伝ってくれませんか?』

『ええ~?』


 『眠死の邪神』ルゴルノーク。十万年以上も宇宙空間に存在し続ける彼は、『ラムダ』世界で最も宇宙に精通した存在だ。

『監視……おおよそ私に向いていない作業だと思う』

 問題は、ルゴルノーク本人の適正だ。怠けるために自身の存在を賭ける事が出来る彼は、勤勉な監視員には向かない。


『全てを任せるつもりはありません。俺も分身を作ってやります。ただ貴方にも手伝ってほしいだけです。

 手伝ってくれれば、地上に貴方の神像を建立して祀りましょう』

 そう提示されたルゴルノークは、ヴァンダルーの頼みを受けるか断るか、どちらの方が楽か考えた。


 邪神であるルゴルノークの眠りは、生物とは違う。眠っていても外界の出来事をある程度知覚している。そして、月の裏側から『ラムダ』の周辺宙域は、彼にとって眠っていても知覚できる範囲だ。……十万年も宇宙にいる間に、知覚できる範囲が広がってしまっていた。


 おそらく、シェルノークから糧を得るために星を落としている内に、神としての性質が変化していたのだろう。

 普通なら多大な苦痛を覚え消滅する危険もある神格の変質を、意識していないなんてことは無い。しかし、ルゴルノークは現在進行形で消滅しかけている。人で例えると、平穏に怠けるために餓死寸前で居続けているような状態だ。


 そのため、苦痛を知覚できなかったのだろう。

(あっ、怠けるためとはいえ私、メチャクチャヤバイ状態なのでは?)

 そう自覚した途端、ルゴルノークはヴァンダルーの提案を前向きに検討し始めた。彼が提示した報酬によって地上でも祀られれば、少しはマシな状態になれるはずだ。


 『ラムダ』の周囲全ては面倒臭いが、月から見える範囲を小惑星が近付かないか見張る程度なら大した労力ではないだろう。

 それと引き換えに、地上からも糧が得られるなら悪くない。怠ける為なら消滅ギリギリの飢餓にも耐えるルゴルノークだが、飢餓状態でいる事を好んでいる訳ではない。


(それに、ヴァンダルーはグドゥラニスとはだいぶ違うようだ。彼の下なら、怠ける事が出来るだろう)

『分かった。監視の仕事を引き受けよう』

 こうして『眠死の邪神』ルゴルノークは月の近くで『ラムダ』を見守る邪神となったのだった。


 なお、広大な宇宙の一部である『地球』や『オリジン』と比べると、宇宙の中心に惑星『ラムダ』があり、他の天体が巡っているこの世界ではルゴルノークが見張る小惑星の数が圧倒的に少ない。

 もっとも、かつてのグドゥラニスのような異世界からの侵略者が宇宙空間に現れないとも限らないので、見張りも無意味ではないが。


 また、月や太陽よりもずっと遠くにある火星や水星、木星に相当する星に魔王軍の残党が潜んでいないか調べるための、探査衛星型使い魔王の開発が始まったのだった。


前の話からまた間が空いてしまいました(汗

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― 新着の感想 ―
「働きたくないでござる」を地で行く邪神だったから、勧誘したらニートを司ることになってどうしよう…と想像してたら、存在の危機に気づいてくれたようでなによりwww
[一言] 地球の「属する?」世界で隕石が燃えるのは空気との「摩擦」ではなく隕石が前方の空気を圧縮することによる熱、つまり「断熱圧縮」によるものです。 でも「ラムダ」世界の物理では摩擦熱で燃えるのかも…
[一言] 多分破壊するよりも念動力で加速させた方が楽なんじゃないかな? まぁ地球とかの物理学が通じるかは分からんけど、押し返したり破壊するよりも引き寄せる形で引っ張り、加速させて仕舞えば空気の層に跳ね…
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