三百九十九話 旧魔王身中の真魔王
11月24日に拙作のコミカライズ版が更新されております。コミックウォーカーとニコニコ静画で閲覧できますので、よろしくお願い致します。
グドゥラニスは十万年前、『ラムダ』世界の人類を絶滅一歩手前まで追い詰めながらも、勇者ベルウッド達勇者軍に敗れ、肉体も魂もバラバラにされて封印された。
彼の魂の処置には、専門家である『輪廻転生の神』ロドコルテも参加し、万全を期した。
これで、もし魂の欠片が一つか二つ封印から解放されても、グドゥラニスの完全復活はない。そう、グドゥラニス自身も思っていた。
しかし、ロドコルテが専門家とまで言えるのは自身の輪廻転生システムが司る魂……人間や動植物の魂までではないだろうか? 物理法則も何もかも異なる異世界から現れた、邪悪な神々の王の魂が、それらと同じように扱えるのだろうか?
人間とグドゥラニスの魂を同様に扱うのは、ほ乳類と甲殻類の肉体の構造は寸分たがわず同じであると宣言するようなものではないだろうか?
ロドコルテ本人と『法命神』アルダ、そして当時まだ彼等から離れていなかった『生命と愛の女神』ヴィダはそう疑問に思った事すらなかった。バラバラにされたグドゥラニスですらそうだ。
しかし、追い詰められたアルダによって封印を解かれ、かつての配下の邪悪な神に埋め込まれた【魔王の核】は気が付いた。
自分がグドゥラニスである事に。感情も、記憶も、知恵も、理性も、本能も、全てが備わっている。
(馬鹿な、【核】とはただ魂の中心を指す欠片ではなかったのか?)
その【核】自身ですら、解放された直後はそう驚愕していた。
おそらくアルダはもちろんロドコルテも、【核】については魂の中心や、魂の構造的に重要な部位だとしか考えていなかった。肉体にとっての心臓や脳幹に相当する部分で、重要ではあるがそれ以上の意味はないと。
だが、【核】はグドゥラニスの魂全ての機能をその内に宿していた。グドゥラニスの魂の内側に存在した、小さなグドゥラニスの魂だったのだ。
グドゥラニスが存在した異世界で、唯一魂を砕く事が可能な存在だった彼の魂には、万が一自らの魂が砕かれても【核】さえ無事なら消滅せず、気が遠くなるほどの年月が必要だが、以前と同じ状態にまで復活する事が可能な機能が備わっていたのだ。
それが、不幸にも……そしてグドゥラニスにとって幸運にも役立つ時が来た。
(感謝するぞ、アルダよ! その愚かさに!)
グドゥラニスの【核】は、自身が埋め込まれた配下の『万顔の悪神』ピャオポグクを彼が意識を取り戻す前に一気に乗っ取り、行動を開始した。
おそらくアルダが自分と同じ場所に送り込もうとしたのだろう、『隠の神』ワイズワーンから自身の魂の欠片の一つである【魔王の魔力】を回収。そして気配を隠した。
アルダやヴァンダルーが封印から解放された邪悪な神々やヴィダ派の神々の位置を把握できるのは、解放された神々が魔力を放出しながら暴れまわっている……つまり暴走しているからだ。
逆に言えば、気配を消してアルダが投下しようとしていた場所から離れれば、そうそう位置を把握されることは無い。だが、そのまま逃走して隠れ潜むという選択を選ぶことはできなかった。
(いったい何が起こっている? アルダがいかに愚かだったとしても、尋常な事態ではない。……この間に少しでも多くの我を取り戻し、完全復活に近づかなければならん)
封印されていた【核】は、その間に復活したダークアバロンの記憶を共有してはいない。だから、まずは情報収集に努めた。
それが幸いし、ヴァンダルーと鉢合わせる事は避けられた。そして、今のうちに少しでも完全復活に近づかなければならない事も察した。
それはヴァンダルーが自身の魂の欠片を喰らい、肉体の大部分を吸収し利用しているからではない。もっと切実な理由だ。
(このまま潜み続けても、これ以上状況が好転することはない!)
【核】は時間が……十分な力を得る時間があれば、他の魂の欠片と合流しなくても完全復活が可能だ。
その時間が、十万年や百万年程度ならグドゥラニスは隠れ潜んで待つ事を選んだだろう。そして、『ラムダ』世界から逃げだし他の異世界へ渡り、そこで再び侵略を試みたに違いない。
だが、グドゥラニスが試算した復活に必要な時間は数億年……いや、数兆年かかっても不可能かもしれないというものだった。
何故なら、情報を収集した結果、自分に代わる『新魔王』にして『真魔王』、ヴァンダルーが存在するからだ。
アルダ勢力の神々が恐れ、アルダ神殿の教皇とやらが「新たな魔王だ」とヴァンダルーを名指ししているらしい。そしてそのヴァンダルーは、グドゥラニスの肉体の欠片を次々に吸収するだけではなく、グドゥラニスの魂の欠片を現在進行形で喰らいまくっている。
現代の人間達が「恐ろしい魔王」と聞いて誰を思い浮かべるのか、推測するのは難しくなかった。
(魔王が、我ではなくヴァンダルーとやらになってしまった! これでは、人間共が『魔王』に向ける恐怖は我ではなくヴァンダルーに注がれてしまう!)
グドゥラニスの名は神話に刻まれており、どんな辺境の村の子供でも知っているほどの知名度がある。だから、本来なら彼が何もしなくても、人々は『魔王』グドゥラニスに恐怖と畏怖を覚え、それを復活に必要なエネルギーに使えるはずだった。
しかし、人々が今『魔王』と認識しているのはヴァンダルーで、グドゥラニスは過去の遺物でしかない。旧魔王グドゥラニスは、ヴァンダルーに魂を喰われ肉体を吸収された存在でしかないのだ。
もちろん、魔物の恐怖や畏怖もグドゥラニスのエネルギーになるが、知識の継承という概念の無い魔物は既にグドゥラニスの存在を覚えていない者が大多数を占めている。そもそも、野生の獣同然の魔物の方が多いのだ。直接支配されている訳でもない存在の事など、覚えてもいないだろう。
この状況では復活に必要なエネルギーを集めるために何かしら動かなければならない……人間達を唆し、自身を信仰させるための教団を組織するか、自分を奉じる魔物の集団を生み出さなければならない。
そして、そうした動きをすればいずれ誰かに気づかれてしまう。そして新しいエネルギー源を繰り返し作らなければならず、それを無事に数千万年から一億年以上続けなければ復活はできない。
他の異世界へ逃げるなんて、夢のまた夢だ。
(アルダめ、ロドコルテめ、そして何よりヴァンダルーめ! 貴様らのせいで、我が名は地に堕ちた!)
そうグドゥラニスは内心で毒づくと、復活のために積極的に動き出した。
『ボドド! 貴様の中の我を寄越せ!』
『貴様は……この気配はグドゥラニス様!?』
そしてグドゥラニスが復活のために必要な自身の欠片を集めるために向かったのは、アミッド神聖国のアルダ大神殿ではなく、ミルグ盾国側の境界山脈の麓付近の戦場だった。
聖戦前にアルダ大神殿へ集められていた【魔王の装具】はレオナルドや英霊騎士、英雄候補の手に渡り、【欠片】も英霊騎士やレオナルド達『邪砕十五剣』に既に埋め込まれて残っていない。
それに、グドゥラニス本人も封印されている自分の一部の居場所は分からない。
そのため、彼は封印から解かれレオナルドに埋め込まれた【魔王の心臓】や【魔王の蔓脚】等の気配を辿り、戦場の近くに潜んでいたのだ。
『がっ、んごぉっ!?』
『ご苦労! だが貴様はもう用済みだ!』
グドゥラニスはボドドから自身の魂の一部を回収すると、驚くブダリオン達を放置して素早く移動し、暴走しだしたレオナルドだった存在に上から伸し掛かるようにして自身の肉体の欠片を手に入れた。
ボドドの魂を砕いたり、ブダリオンや『暴虐の嵐』と戦うような無駄な力と時間はない。何故なら、この後ヴァンダルーから逃げ、アミッド神聖国の町や村を幾つか壊滅させなければならないのだから。
ヴァンダルーとの直接対決を避け、アミッド神聖国に甚大な被害を大々的に与える事で人々に「魔王グドゥラニスは健在なり」と知らしめる。そうすれば、人間達は自分を恐れ憎み、その負の感情をエネルギーにする事が出来るだろう。
そんな目論見だったが……。
『そんなに慌てる必要はもうありませんよ』
そんな平坦な声と同時に、体の内側から黒い魔力の奔流が放たれ、グドゥラニスは絶叫を轟かせた。
《【魔王の鬱憤】を獲得しました!》
《【真魔王】に【魔王の鬱憤】が統合されました!》
「な、なんだ!?」
暴走を始めたレオナルドだった物の後始末をしようとしたら、人型だが仮面を繋ぎ合わせて全身を形作ったような姿の邪悪な神が現れ、瞬く間にボドドに寄生していた魂の欠片を抜き取り、レオナルドだった物を吸収したと思ったら体の内側から攻撃を受けて絶叫している。
「もちろん、お前の仕業なのは予想がついてるが」
『はい』
いつの間にか近くに這い寄っていた使い魔王が、シュナイダーの言葉に応えた。
ヴァンダルーはジグラットに埋め込まれた魂の欠片である【魔王の鬱憤】を吸収した後、自責の念から聖戦軍に突貫しかねなかった彼を宥めていた。すると、近くに聖戦軍とは別の大きな死の気配を覚えた。
放置しておくとシュナイダーでも苦戦するかもしれない存在が、近くに潜んでいる。そう脳内会議で推測したヴァンダルーは、密やかに使い魔王の数を増やして戦場中にばら撒いた。
そして、羽虫のように小さい使い魔王に気が付かず、グドゥラニスは乗っ取った『万顔の悪神』ピャオポグクの姿のままボドドの魂の欠片とレオナルドが吸収していた肉体の欠片を吸収しようとした。
その刹那に、ヴァンダルーは使い魔王と本体を入れ替えたのだ。
「それでは、今ヴァンダルー殿の本体はあのグドゥラニスの中!?」
「大丈夫なの? たしか、使い魔王と本体を入れ替えても体積は変わらないのよね?」
「羽虫一匹分の体積の本体が、体内から攻撃を仕掛けていると……反動で潰れちゃいないよな?」
ヴァンダルーが習得した本体と分身の交換は、実際には本体にする体を替えているだけに過ぎない。だから本体になっても羽虫型使い魔王の大きさと形はそのままに、羽虫型本体になるだけである。
なお、本体を交換した後の姿形も入れ替えているのは、そうした方がヴァンダルー自身にとって精神的に楽で、戦いやすいから。そして、どれが本体なのか仲間達が分かり易いようにするためである。
『ああ、大丈夫です。グドゥラニスに飲み込まれた後、【魔王の欠片】を吸収して体積を増やしたので』
「本来の所有者に飲み込まれた後でも、ヴァンダルーを選ぶのか。……もう肉体の欠片の方は、放っておいてもヴァンダルーに集まりそうだな」
『まあ、ダークアバロンの時はグドゥラニスが取り戻した欠片も俺と合流したがっていたようですし』
すでにグドゥラニスの肉体は、グドゥラニスの物ではなくなっている。その事実に最も激怒しそうな本人は、彼らの会話を聞いている暇はなかった。
『グオアアアアア!? ガアアアア! ギオオオオ!?』
体内からヴァンダルーが連続で【虚砲】や【死砲】を放ち、吸収したばかりの【魔王の欠片】で暴れているため、それどころではなかったのだ。
《【魔王の吻】、【魔王の腹足】、【魔王の蓋】、【魔王の歯舌】、【魔王の精巣】、【魔王の経絡】、【魔王の涙腺】、【魔王の頬袋】、【魔王の心臓】を獲得しました!》
《【魔王の吻】、【魔王の腹足】、【魔王の蓋】、【魔王の歯舌】、【魔王の精巣】、【魔王の経絡】、【魔王の涙腺】、【魔王の頬袋】、【魔王の心臓】が【真魔王】に統合されました!》
ヴァンダルーはシュナイダー達との会話を使い魔王に任せて、グドゥラニスの体内で色々考えながら攻撃に専念していた。
(ええと、こいつは【魔王の記憶】によると、『万顔の悪神』ピャオポグク……魔王軍の幹部でグドゥラニスが敗れる前にナインロードに倒され封印されたと。なら、グドゥラニスを倒すのを優先しましょう。
まあ、グドゥラニスに乗っ取られる際に魂を砕かれたか、吸収されていそうですが)
ピャオポグクを殊更助ける理由を見つけられなかったヴァンダルーは、遠慮なく彼の体内を傷つけている。
体の外側だけではなく内側も無数の顔を張り合わせたようなピャオポグクの体内で、【死砲】や【虚砲】を放ち、【魔王の吻】を【怨投術】スキルで投擲し、【歯舌】で体内の壁を削り取って喰らい、【涙腺】から毒の涙を垂らす。
(しばらく前からだけど、手に入る【魔王の欠片】が色物になってきた……【精巣】や【経絡】って、どんな【魔王の装具】だったのでしょう? 【頬袋】もなかなかのものですが)
普通なら、弱点になりそうな部位だが……体に装着して、ホルモン的なものを増幅して心身の活動力と言う意味での精力を増すとか、生命エネルギー的なものを全身に巡らせるとか、そんな感じだろうか?
『貴様ぁぁぁ! やめろぉぉぉ!』
そんな事を考えていると、無数にある顔の一つが叫び出した。どうやら、体内にある顔も見かけだけではなく実際に顔として機能しているようだ。
『貴様っ! 貴様がヴァンダルーか!?』
「そうですが」
『待てっ、やめろっ! 話があるっ、攻撃を止めろ!』
「止めません。話があるなら勝手にどうぞ」
グドゥラニスの話を、ヴァンダルーは攻撃の手を止めないまま切って捨てた。外のシュナイダーや上空のジグラットに当てないよう、撃つ方角を修正しながら魔術や【吻】を投げるのはそれなりに大変なのである。
別に余裕がないわけではないが、積極的に無駄な事はしたくない。
『ギイィィィィ!! 我はっ、もうこの世界を狙うのを止める!』
それに対して、グドゥラニスはボドドから吸収した自身の【憤怒】が疼くのを抑えながら、言葉を続けた。もちろん、同時進行でヴァンダルーを倒す方法がないか探っているが、打開策は思いつかなかった。
なにせ、魔術で猛毒に変えた血や体液を浴びせても平然としているのだ。無数の顔にある牙で噛みついても、効果は無いだろう。
(我本来の肉体であったなら、どうとでもできたものを! 体内に入り込んだ敵に対して対処もできないとは、ピャオポグクの無能め! そんな惰弱だからこそナインロード一人に負けるのだ!)
そう内心自分が乗っ取った部下を罵るが、体内に入り込んだ強敵に対処できる肉体の持ち主などそうそう存在しない。それこそグドゥラニス本人ぐらいだろう。
『我はこのまま力を取り戻すまで、何者も存在しない場所で潜むように生き、その後他の世界へ逃げる!』
「却下。【神鉄裂き】」
それまでのグドゥラニスと元は同一人物とは思えない発言だったが、ヴァンダルーは考慮もしないで言葉を発した顔のある部分を引き裂いた。
『ギヤアアアアア!? この世界の人間はっ! いや、生きとし生ける全ての存在を害さぬと誓う! アンデッドも、地を這う虫もだ!』
「【炎獄死】」
返答の代わりに、魔術で血を爆発させて自分ごとグドゥラニスの体内を焼く。グドゥラニスの悲鳴が一層大きくなるが、まだ致命的なダメージは与えられていないように感じる。
「なるほど、【危険感知:死】で急所に直撃を受けないよう肉体を操作している訳ですか」
そう言いながら、今度は威力の高さよりも傷つけられる範囲が広くなるように工夫して攻撃を続けるヴァンダルー。
『待てっ、待ってくれっ! 貴様はこの後、強敵との戦いが控えているはずだ!』
すると、グドゥラニスが命乞いの方向性を変えた。
『我を相手に消耗しては、危ういのではないか!?』
情報収集をしている間にアルダ勢力の神々の作戦を知ったのか、それとも潜んでいる間に聖戦軍の上層部が漏らした情報を耳にしたのか。もしかしたら、強敵とはハインツではなく『法命神』アルダの事を指しているのかもしれない。
「【界穿滅虚砲】、だからこそお前はここで滅ぼします」
凝縮された黒い魔力の奔流が、グドゥラニスに体内から大穴を開ける。断末魔染みた絶叫を轟かせるグドゥラニスに、ヴァンダルーは止めを刺すために更に魔術を発動させる。
「【貪億死兆惨京】」
ヴァンダルーから噴き出た血が無数の肉食微生物である【貪血】に変化し、猛烈な勢いでグドゥラニスを貪る。どこが急所だったとしても関係のない捕食行動に、グドゥラニスの絶叫はしばし大きくなったが、すぐに小さくなり、その姿が小さくなり紅い微生物に覆われると弱弱しく途切れた。
「お前を喰らって回復するために」
《グドゥラニスの【憤怒】と【魔力】と【核】を獲得しました!》
《【憤怒】と【魔力】と【核】が【真魔王】に統合されました!》
《魔力が千億上昇しました!》
《『魔王殺し』が『真魔王殺し』に変化しました!》
ヴァンダルーがグドゥラニスの訴えに耳を貸さなかったのは、信じる価値がないからだ。今までさんざんグドゥラニスの魂の欠片を喰らって来たヴァンダルーは、グドゥラニスが信用できない存在だと知っている。
それに、他の異世界に逃げられても困る。グドゥラニスは言わなかったが、彼が新天地で原住民と平和的に融和する事はあり得ない。その異世界が『オリジン』や『地球』だったら困る。
縁も所縁もない異世界だったとしても……わざわざ侵略者を放流する意味がない。力が及ばずグドゥラニスを見逃すしかない状況ならともかく、倒すことができるのだから。
「とりあえず、これでグドゥラニスが完全復活する可能性は無くなりましたね。魂まで再生可能とは、俺のような人間には想像もできない怪物でした」
「それ、もしかして冗談で言ってるのか?」
「年寄りぶってるあんたが言える事じゃないけどね」
グドゥラニスを喰い破りそのまま喰らい切って現れたヴァンダルーに、シュナイダーは呆れたような顔で尋ねた。本人も、すぐリサーナにツッコミを入れられたが。
「それよりも確認だが……」
「あなたの勝負の邪魔はしていませんよ」
ヴァンダルーはやろうと思えば、レオナルドが使っていた【魔王の心臓】等の欠片にも影響を与える事が出来た。しかし、だからこそヴァンダルーは彼に影響を与えないよう配慮した。羽虫型使い魔王を近づけたのも、勝負がついた後だ。
「まあ、保証はしかねますが。何せ、俺がコントロールできるものではないですし」
「いや、それで十分だ。気を遣ってくれてありがとよ」
「いえいえ」
ヴァンダルーにはレオナルドの趣味に付き合う義理はないが、シュナイダーの筋やプライドには言われなくても配慮するのが当たり前だ。
そう話していると、ボドドの断末魔の叫びが響き渡った。ブダリオンが討ち取ったのだろう。
周りを見ると、エイリークの仇を取ろうとした聖戦軍は殆ど討ち取られるか拘束されている。英霊騎士は入れ物を失い、宿っていた英霊は地上に留まる力も尽きたのか殆ど姿を消している。残っているのは、暴走した【魔王の欠片】の封印に加勢した、元聖戦軍の勢力だけだ。
ボークス達の勝鬨があがるのももうすぐだろう。
「では、俺はこれからジョブチェンジを済ませた後ハインツ達を殺しに行ってきますね」
「おい、助太刀は……」
「ここの後処理が済んでも決着がついていなかったらお願いします。その前でも、必要があったら呼びに戻りますけど」
そして、ヴァンダルーは本体をサムの荷馬車の中の使い魔王に替えた。
次の話は11月27日に投稿する予定です。




