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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第十四章 冒険者学校編
447/515

三百五十八話 我は……俺は、ヴァンダルー

《【超力】、【超速再生】、【冥界神魔術】、【猛毒分泌:牙爪舌】、【無手時攻撃力増強】、【身体超強化(髪爪舌牙)】、【魔糸精製】、【生命力増強】、【杖装備時魔術力強化】、【全能力値増強】、【統血】、【虚界神魔術】、【魔術精密制御】、【魂格滅闘術】、【群隊】、【超速思考】、【将群】、【怨投術】、【叫喚】、【神霊魔術】、【魔王砲術】、【欠片限界超越】、【鞭術】、【杖術】、【筋術】、【魔闘術】、【群体思考】、【群体操作】、【魂魄体】のレベルが上がりました!》


《【詠唱破棄】が、【無詠唱】に、【従群超強化】が【従群極強化】に、【魔力回復速度上昇】が【魔力回復速度超上昇】に覚醒しました!》




 激しい戦いが続く最中、ヴァンダルーは彼自身と使い魔王の眼を通して仲間達がいくつもの高ランクの魔物を倒すのを見ていた。そして、ランク13を超える人工精霊の消滅も見た。

『坊ちゃん、今度はどうでした?』

 ジョブチェンジ部屋から出た使い魔王は、首を傾げながらリタの質問に答えた。


『これまでのようにジョブチェンジした途端レベルがカンストする事を期待して、まず【冥魔王】を選びました。すると、予想通りレベルがカンストしました。次に、【万魔殿】を選びましたが、これもすぐにカンストしました。そして、最終的に【魂格闘士】を選びました。

 能力値も上がり、スキルのレベルも上がった。それは、グドゥラニスとの戦いに有利になるので喜ぶべきなのは分かっていますが……ステータスの神々に人間離れするよう誘導されているようで、微妙な気分です』


 ステータスの神々が聞いていたら、『いや、誘導するまでもなかったし』と反論するに違いない事を言い放つ使い魔王。

 そしてグネグネと前足や後ろ足、節足を動かして奇妙な挙動を見せる。


『……ダンスですか?』

『いえ、能力値が上がったので体の様子を見ているのですが……やはり、本体じゃないと解りませんね』

『その坊ちゃんの本体は今お食事中でしたっけ? むー、こういう時は血の無い我が身が恨めしい』

 リビングアーマーであるリタは、体に血が流れていないのでヴァンダルーが吸血する事が出来ない事を残念に思っていた。


『まあ、仕方ありませんよ。それに、血が無いのは私達だけじゃないですし。レビア王女とか、レギオンとか、シルキーとか。

 それより坊ちゃん、新しいジョブは出なかったんですか?』

『冥魔王の次は新魔王とか? 旧魔王と戦っている訳ですし』

 サリアがそう尋ねると、リタも気分を変えて今度はどんな魔王なのかとわくわくした様子で言い始めた。使い魔王を通して物を見聞きしているヴァンダルーは思わず遠い目をする。


『とりあえず、今回は新しいジョブは出ませんでした。次に期待しましょう』




《【装影群術】、【能力値増強:君臨】、【魂纏時能力値増強】、【ゴーレム創成】、【魂格滅闘術】のレベルが上がりました!》




・名前:ヴァンダルー・アーク・ヒルウィロウ・ソルダ・ザッカート

・種族:ダンピール(母:女神)

・年齢:13歳

・二つ名:【グールエンペラー】 【蝕帝】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【鱗帝】 【触帝】 【勇者】 【大魔王】 【鬼帝】 【試練の攻略者】 【侵犯者】 【黒血帝】 【龍帝】 【屋台王】 【天才テイマー】 【歓楽街の真の支配者】 【変身装具の守護聖人】 【女神の解放者】 【巨人帝】

・ジョブ: 魂格闘士

・レベル:0

・ジョブ履歴:死属性魔術師 ゴーレム錬成士 アンデッドテイマー 魂滅士 毒手使い 蟲使い 樹術士 魔導士 大敵 ゾンビメイカー ゴーレム創成師 屍鬼官 魔王使い 冥導士 迷宮創造者 創導士 冥医 病魔 魔砲士 霊闘士 付与片士 夢導士 魔王 デミウルゴス 鞭舌禍 神敵 死霊魔術師 弦術士 大魔王 怨狂士 滅導士 冥王魔術師 ペイルライダー  混導士 神導士 神滅者 虚王魔術師 神霊魔術師 ダンジョンマスター クリフォト デーモンルーラー 整霊師 魔杖創造者 匠:変身装具 冥界神魔術師 冥魔王 万魔殿



・能力値

・生命力:954,115+(76,329) (37,112UP!)

・魔力 :18,642,333,327+(18,642,333,327) (4,954,571,612UP!)

・力  :105,193+(5,259) (17,854UP!)

・敏捷 :99,527+(4,976) (18,871UP!)

・体力 :112,603+(5,630) (20,145UP!)

・知力 :142,954+(7,147) (24,216UP!)




・パッシブスキル

超力:3Lv(UP!)

超速再生:9Lv(UP!)

冥界神魔術:7Lv(UP!)

状態異常無効

魔術耐性:10Lv

闇視

末那識誘引

無詠唱(詠唱破棄から覚醒!)

導き:末那識

魔力常時回復:10Lv

従群極強化:1Lv(従群超強化から覚醒!)

猛毒分泌:牙爪舌:10Lv(UP!)

身体無限伸縮:舌

無手時攻撃力増強:極大(UP!)

身体超強化(髪爪舌牙):3Lv(UP!)

魔糸精製:5Lv(UP!)

魔力増大:10Lv

魔力回復速度超上昇:1Lv(魔力回復速度上昇から覚醒!)

魔砲発動時攻撃力増強:大

生命力増強:8Lv(UP!)

能力値増強:君臨:3Lv(UP!)

能力値強化:被信仰:10Lv

能力値強化:ヴィダル魔帝国:5Lv

自己再生:共食い:4Lv

能力値増強:共食い:4Lv

魂纏時能力値増強:中(UP!)

殺業回復:7Lv

自己強化:殺業:7Lv

杖装備時魔術力強化:極大(UP!)

全能力値増強:中(UP!)


・アクティブスキル

統血:7Lv(UP!)

限界超越:10Lv

ゴーレム創成:10Lv(UP!)

虚界神魔術:2Lv(UP!)

魔術精密制御:7Lv(UP!)

神霊理:1Lv

錬神術:4Lv

魂格滅闘術:10Lv(UP!)

同時多発動:8Lv

手術:10Lv

具現化:7Lv

群隊:6Lv(UP)

超速思考:8Lv(UP!)

将群:5Lv(UP)

操糸術:10Lv

怨投術:3Lv(UP!)

叫喚:10Lv(UP!)

神霊魔術:7Lv(UP!)

魔王砲術:9Lv(UP!)

装影群術:10Lv(UP!)

欠片限界超越:5Lv(UP!)

整霊:4Lv

鞭術:5Lv(UP!)

霊体変化:雷

杖術:5Lv(UP!)

高速飛行:3Lv

楽器演奏:4Lv

舞踏:2Lv

筋術:5Lv(UP!)

魔闘術:4Lv(UP!)


・ユニークスキル

神喰らい:10Lv

異貌多重魂魄

精神侵食:10Lv

迷宮創造:8Lv

大魔王

根源

神敵

魂喰らい:10Lv

ヴィダの加護

地球の神の加護

群体思考:10Lv(UP!)

ザンタークの加護

群体操作:10Lv(UP!)

魂魄体:6Lv(UP!)

魔王の魔眼

オリジンの神

リクレントの加護

ズルワーンの加護

完全記録術

魂魄限界突破:5Lv

変異誘発

魔王の肉体

亜神

ボティンの加護

ペリアの加護

体内世界


・呪い

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能




 突然デーモン達に変化が起きた。全ての個体が数段強くなり、再生や復活のペースが速くなった。

『ぬううううああああああああああああ!! 貴様っ、新たなスキルを……いや、まさかジョブについたのか!?』

 デーモンの群れの向こうにいるヴァンダルーから返答はなかったが、グドゥラニスはそうに違いないと確信していた。


 ならば自分もジョブチェンジを行い、パワーアップを……というのは不可能だ。何故なら、ジョブチェンジに必要な施設があるオルバウムの街が、半ば瓦礫の山になっているからだ。

 それに、グドゥラニスはあくまでもエドガーのステータスを乗っ取っているだけだ。そのため、グドゥラニスの意志でジョブチェンジが可能か分からない。出来たとしても、選べるのはエドガーが選択可能なジョブだけだ。


 ヴァンダルーのような特殊なジョブは選べないだろう。


『グオオオオオオオオ!?』

 絶叫が響き渡り、グドゥラニスは思考を切り替えた。再生するデーモン達を薙ぎ払い、戦況を確認する。

 すると、死属性の人工精霊グドゥラニス・シャドーがダルシア達によって徐々に追い詰められていた。


『【命炎の矢】!』

 変身装具を弓に変形させ、そこに生命属性の魔力を収束させて作った矢を番えて放つダルシア。ヴィダの英霊であるヴェルド直伝の腕と、ヴィダを降ろした事で高まった生命属性の魔力が合わさった弓から放たれる矢は、掠るだけでグドゥラニス・シャドーに大きな苦痛を与えている。


 『アルダの試練のダンジョン』に出現し、ハインツ達が倒したグドゥラニスの粗悪なコピーとは違う、その粗悪さを恨んでいたグドゥラニス本人が創り出した、まさにグドゥラニスの影と呼ぶのに相応しい性能の人工精霊だ。

『ウオオオオオオォ!』

 死属性魔術を使い、結界を張ってダルシアが放った矢を阻もうと試みている。だが、さすがにヴィダを降ろしたダルシアの相手をするのは、影には荷が重かったようだ。結界を破られ、体を構成する魔力を徐々に削り取られている。


『【狂肉雷触】!』

『ウゴアァ!?』

 そして全身に雷を纏ったレギオンが、空中を跳ねるように飛び回って体当たり攻撃を繰り返す。加速した大質量と、【筋術】による魔力由来ではない電気を打ち消すために、グドゥラニス・シャドーはさらに結界を張る。


『あははははは! 好きなだけ魔力を使うがいいさ! 自分が消えるまでね!』

 グドゥラニス・シャドーには、グドゥラニス本体が乗っ取った六道のチートも、エドガーのステータスも無い。そして魔力を高速で自己回復させるすべもないので、このまま反撃も出来ず消されていくだろう。


『おおおおおおおおん!』

「ギシャアアアアアアアア!」

『うぉれは阻めないぃ! うぉれ光線ーっ!』

 一方、水と死の人工精霊ヴェパールはクノッヘンとピートの圧倒的な質量と、光属性のゴースト達によって蹂躙されていた。


 液体の肉体を持ち、物理攻撃がほぼ効かないヴェパールだったが限度があった。クノッヘンの無数の骨に液体を削り取られ、ピートに電撃を角から繰り返し放たれて液体を蒸発させられ、体を透過する光と化したベールケルト達が高速攻撃を放ち続ける。


『はっはぁ! 偉大なるヴァンダルー様に仕える、光の戦士である我々の前には貴様など取るに足らん!』

『粗術の産物が、蒸発させてくれる!』

 ダロークが高熱を発する光の刃と化して、チプラスのそのふくよかな体が光の玉と化して、ヴェパールの体を蒸発させていく。


 ヴェパールも反撃に転じようとするが……。

『ギュビュピャ……ビュギャ!?』

 クワトロ号の砲撃によって、爆炎の中に消えたのだった。


 そして風と死の人工精霊パズスも、窮地に追い込まれていた。ランドルフが新たな魔剣を手に入れ、精霊魔術だけではなく接近戦でも戦えるようになったのも大きかったが、援軍の存在が致命的だった。

「【猛禽蹴り】! 【鞭撃円舞】! ザディリスさん、キスマークを見せつけないでください!」

「【風霊騎士槍】! 誰が見せつけておるか! それにこれは吸血の痕で……それもほとんど残ってないはずじゃぞ!?」

「カナコ先生と、ザディリスだったな……戦意が高いのは結構だが、女の戦いは後にしてくれないか?」


 ヴェパールをクノッヘン達に任せたカナコと、ヴァンダルーに血を与え終わったザディリスだ。ザディリスは既に【無属性魔術】の【治癒力強化】とブラッドポーションによって失った血と体力を取り戻しており、牙ではなく舌を変化させた【口吻】を使ったため、傷もほぼ残っていない。さらに、カナコとの連携も長年の戦友同士のように息があっている。

 しかし、口では何故か揉めていた。


 ランドルフも、二人が知り合いの冒険者や生徒なら怒鳴りつけるところだが、尊敬している先生と自分より強い生徒の従魔という名目の仲間なので強く出られないでいる。

『キィィィ!』

「【翼斧斬】! そうだぞ、二人とも。戦いに集中しろ!」

 そこに、パズスに向かって手斧を投擲しながら現れたのがバスディアだ。味方が増えた事で、パズスとの戦いの天秤はさらにランドルフ達に傾いていく。


「あっ、首筋に痕が! バスディアさんまで! むぅ、ヴァンは意外と順序を守る人のようですね、【泥粘牢】!」

「カナコ、声に出して指摘するのは野暮だぞ。それと、私の次にヴァンが吸血しているのはジーナだから、順番はあまり関係ない」

「【光刃】! ジーナが? たしか、ゾンビの血は回復効果が低いと聞いた覚えがあるのじゃが?」

「前もって血を抜いた後、術で鮮度を維持したベルモンドの血を輸血しておいたらしい。ザンディアとボークスにも」


 粘度の高い泥でパズスを閉じ込めて動きを封じ、抜け出す前に集中攻撃を加えてダメージを与えるザディリス達。彼女達の口から、生来の血液型が異なる血を輸血しても問題なく動けるゾンビの活用法を聞かされたランドルフは、微妙な顔をしながら、魔剣を振るった。


「細かい事情は分からんが……あまり公にするなよ。その利用法は、表社会には刺激が強い」

 前もって血を抜いたゾンビに、【供物】のユニークスキルを持つベルモンドの血を輸血して蓄えておく。ベルモンド本人を呼べない時や、一度の吸血で回復しきれないときなどに有効だが普通の人々が聞いたら引く事間違いなしの作戦である。


「大丈夫ですよ、この事を知っているのはあたし達だけです」

 そう答えるカナコに、ランドルフは自分が既にヴァンダルーの身内として認識されている事を実感し、思わず天を仰ぐ……代わりにパズスに攻撃を放った。

「【刃嵐】! 【溶岩弾】! 【命剣百閃】!」

 八つ当たり気味な、しかし鋭いS級冒険者の魔術と剣の連続攻撃に、パズスは断末魔の絶叫を響かせながら消滅した。




 創り出した手駒がさらに二体消滅した事を知り、焦燥が大きくなった。

『うおおおおお!』

『貴様のブレス如きで死ぬか!』

 【危険感知:死】が全く反応しないルヴェズフォルのブレスを、【魔王の鼻】から放った空気砲で霧散させ、ブレスに紛れこんでいたラピエサージュの拳も吹き飛ばす。


『血が無くなった分、体が軽くなったぜ! 【龍殺し】!』

「チッ! やっぱりイリスも連れてくれば良かったわい!」

 そこにボークスとゴドウィンが剣と拳で殴りこんでくる。有象無象のデーモンや、何故か【御使い降魔】等のスキルが使えるようになったルヴェズフォルよりも、二人の攻撃は早く重い。


『ぐぬぅっ!』

 拳を【魔王の肉球】で受け、剣を手刀で弾くが、防ぎきれなかった衝撃がグドゥラニスの体にダメージとして蓄積される。

「【狂斧乱鞭】!」

『【柳流し】! ぐぬうう!』


 ヴィガロの脚より長い四本の腕と霊体の腕によって振るわれる斧を、手刀で受け流そうとするが技術と得物の差で流しきれずグドゥラニスの腕は所々裂け、空気砲を放つために生やしている鼻が断ち割られた。

『この程度かっ! それでもベルウッドの後継者の仲間と、我を利用しようとした神か!?』

 募った苛立ちのあまり、グドゥラニスは思わず自身の技を支えるエドガーと六道を罵った。だが、当人たちにとっては理不尽だろう。


 エドガーのスキルは、エドガーが使うからこそ真価を発揮するものだ。それに、【ニルタークの加護】はもちろん失われ、【英霊化】も使用不可能。そして全身が【魔王の欠片】でできているものの、素手で戦っている状態だ。ここまで悪条件が重なっているのでは、ボークス達に技で勝てるわけがない。

 六道のチートもあるが、既に高い技量を持っているエドガーのスキルを短時間で成長させる事は難しい。


 それはグドゥラニスも理解している。ただ、痛みによる苛立ちと本来なら格下の存在にいいようにやられている事、そしてこうしている今もヴァンダルーが急速に魔力を回復させている事による苛立ちと焦燥は耐えられるものではなかった。


『いい気になるなよ、ヴィダが生み出した出来損ないと死に損ない共が! 現れよっ! 人工精霊よ!』

 そして死属性魔術ではなく武技や自身の肉体を構成する欠片で戦った事で、やや回復した魔力を振り絞って新たな人工精霊を創り出す。

 相変わらず【危険感知:死】に反応は無いが、このまま数に翻弄され続けるのは不味いと彼の本能が囁いたからだ。マラコーダ、パズス、ヴェパール、そしてグドゥラニス・シャドーが二体ずつ現れ、咆哮をあげてヴァンダルーとその仲間達に襲い掛かろうとした。


 だが、その瞬間僅かに死の予感を覚えて、グドゥラニスはとっさに飛行するのを止めて落下した。

「【破邪聖輝極閃】!」

 そのグドゥラニスの頭上擦れ擦れを、ハインツが振るった聖剣による武技の奥義が通り過ぎていく。マラコーダに苦戦しているはずだった『五色の刃』だが、彼らはグドゥラニスの隙を突く機会を狙っていたのだ。


『グギャアアアァ……』

 見ると、彼らが戦っていたマラコーダは【破邪聖輝極閃】の直撃を受けて消滅するところだった。ベルウッドを降ろしておきながら人工精霊に苦戦するとは、マラコーダと余程相性が悪いかそれとも力の扱い方を知らないのだろうとグドゥラニスは考えていた。しかし、実際はあえてマラコーダを倒さず機会を伺っていたようだ。


『小賢しい奴らめ! 行け!』

 実際にはハインツ達にそれほど余裕があった訳ではないが、グドゥラニスはハインツ達を警戒に値すると評価し直し、新たに創ったパズスとグドゥラニス・シャドーを一体ずつ差し向ける。……彼にとって腹立たしい事に、新たに創りあげたヴェパールは二体とも、そしてパズスの一体もハインツの一撃に巻き込まれて消滅していた。


『グオオオオ!』

『ガアアアアア!』

 そして残ったマラコーダ二体とグドゥラニス・シャドー一体が、デーモン達を蹴散らし始めるがすぐにボークスと交戦し始め押し留められる。


「一度に八体も創り出すなんて、魔力を節約して人工精霊を創るコツでも習得しましたか?」

『抜かせ! 次から次に僕の血を啜りおって。貴様らがのたまう『仲間』や『絆』と言った言葉の意味が知れるな』

 しかし、そのおかげでヴァンダルーを直視する事ができるようになった。


「お前には理解できないかもしれませんが、お互いに支え合う関係ですよ」

「そうだそうだ! 勝手に判断するな!」

 ヴァンダルーに吸血された後、半分がヴァンダルーの血で出来ているブラッドポーションを飲んで回復したユーマが彼の言葉に同意して抗議する。


 その光景もグドゥラニスには腹立たしいものだ。ブラッドポーションは、ヴァンダルーに吸収された魔王の……つまりグドゥラニスの血から作られているのだから。

『貴様は、我が肉体を何処まで利用するつもりだ!』

「もう、俺の体です。それより、そろそろ決着をつけましょうか。……億が一にもハインツに横取りされるのは不快ですから」


 十分に回復したヴァンダルーは、未完成のままだったが今なら使えるだろうと判断した魔術を唱えた。

「【大殺界】」

 その瞬間、グドゥラニスは脳が焼き切れそうなほどの殺気と恐怖に包まれた。


『ヒッ、ウッ、ウオオオオオオオオ!?』

 そこら中から、それこそただの微風にも【危険感知:死】が反応し、グドゥラニスの意識が生存本能の叫びに塗りつぶされる。

 ありとあらゆる方向から殺気を感じ、振り向き攻撃するが、そこには何もいない。


『グアアアアア!?』

 グドゥラニスがそんな様子だから、ヴァンダルーは彼に容易く【虚砲】を直撃させることができた。

「気配を完全に殺す術を前々から考案していたのですが、上手くいきませんでした」

 レギオンのゴーストが使う【限定的死属性魔術】、あらゆる五感、機械的なセンサーにさえ存在を察知させない術をヴァンダルーは自身で再現しようと試みていた。しかし、それは現在に至るまで成功しなかった。


「だから、逆にしてみたらどうかと思ったのです」

 魔術の対象とされた者を死の恐怖と気配で包む術……対象を取り巻く世界全てを危険だと思わせる術があれば、どんなに勘が鋭い相手でも攪乱できるのではないか。

 それがこの術だ。まさか自分と同じ【危険感知:死】の使い手に使う事になるとは、ヴァンダルーも予想していなかったが……。


『貴様ぁぁぁ!?』

 グドゥラニスの意識は、【大殺界】によってヴァンダルーの想定以上に乱れパニックに陥っていた。それまで感じた事の無い圧倒的な危機感に耐えられる精神力が、彼にはなかったのだ。


 何故なら彼は魔王グドゥラニス。存在した瞬間から、圧倒的な強者であり敗者となったのはベルウッド達に敗れた一度だけ。故に、彼は恐怖に耐え抵抗する術を知らないのだ。

『【発動】! 【超加速】!』

『【神盾撃】!』

 そこにザンディアとジーナの攻撃が炸裂する。【時姫魔術】により発動寸前で止められていた七つの魔術が同時にグドゥラニスに襲い掛かり、さらに加速したジーナが盾でグドゥラニスに殴りかかる。


『ぐあああああ!? ゾンビ風情がぁ!』

 憎々し気に叫ぶが、彼女達の攻撃に対してグドゥラニスは回避も防御も出来なかった。彼の意識は【大殺界】によって上下左右前後……全方向から常に狙われているという誤情報で満たされている。

 レーダーに例えるなら、無数の反応で塗りつぶされている状態だ。そのため目の前にジーナの盾が迫っても、どの殺気に対処すればいいのか分からず混乱してしまう。


 これがヴァンダルー自身や、戦闘経験豊富なランドルフやシュナイダー、ハインツだったならこれほど混乱はしなかっただろう。

 だが、今のグドゥラニスには吸収したエドガーの魂がある。廃人寸前の状態に戻っているが、彼の経験を読み取り危機的状況を打破する一手を探した。


『ウオオオ!』

 グドゥラニスが見つけた一手は、斥候職のエドガーらしいものだった。それは敵の頭であり、この魔術の術者であるヴァンダルーに対して攻撃を仕掛ける事。


『【限界超越】! 【真・即応】! ……【魂の甲冑】!!』

 グドゥラニスはスキルと武技で身体能力を限界以上に引き出し、さらにヴァンダルーの【魂格滅闘術】をほぼ即興で再現した死属性魔術を発動させ、突進した。


 その側面からザンディアやユーマ、そしてデーモン達が攻撃してダメージがさらに蓄積されるが、それを無視して起死回生の一手に賭ける。

 ヴァンダルーも【魂格滅闘術】を発動させ、魂を纏おうとするが追い詰められたグドゥラニスの特攻の方が速かった。


『やったぞ!』

 グドゥラニスはヴァンダルーの胸の中心を手刀で貫き、勝利の咆哮をあげた。

 ただ、ヴァンダルーは心臓を破壊された程度では死なない。【魔王の血管】を生やして破壊された心臓を迂回して血液を循環させながら、それと同時に反撃に転じようとする。


 だが、グドゥラニスはヴァンダルーを殺す事ではなく、彼の体内深くに接触する事が目的だったのだ。

『さあ、我が肉体の【欠片】よ! 我に合流せよ! 本体に合流し、回帰するのだ!』

 グドゥラニスの目的は、ヴァンダルーから自身の肉体の【欠片】を取り戻す事。【欠片】を取り戻す事が出来れば、グドゥラニスの体力は回復して強さを取り戻す事ができ、逆にヴァンダルーは弱体化する。さらに、【魔王の宝珠】のように魔力を生成する【欠片】を取り戻せば、短時間で魔力を回復する事ができる。


 そして、期待した通りにヴァンダルーの体内から【魔王の欠片】の核が続々とグドゥラニスの元に入っていく。

『おおおっ! 帰ってくる、我が肉体が! 我自身……が?』

 歓喜に打ち震えるグドゥラニスだったが、それはすぐ困惑に変わった。体内から感じるのは体が戻る充足感ではなく、異物に侵入された不快感。そして、【危険感知:死】の反応が【大殺界】に狂わされている事を考慮しても、異常なほど高まり続けている事に気がついたからだ。


『な、何故だ!? 何が起こって――』

【我は汝にあらず。汝は我にあらず】

【然り、汝は我らが合流すべき本体にあらず】

【汝よ、我らの餌食となり合流せよ。我は……俺は、ヴァンダルー】

『っ!? そんな馬鹿な事が……グギャアアアアアアアア!?』


 体の内側から聞こえていた自分の声が、ヴァンダルーの声に変わった次の瞬間、グドゥラニスは体の内側から生えた角や骨、牙によって全身を引き裂かれ、絶叫した。


次話は2月8日に投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 【冥界神魔術師】、【冥魔王】、【万魔殿】のジョブ解説?
[一言] (「三百五十八話 我は……俺は、ヴァンダルー」の感想です) 遅れましたが乙です。 敵にしてみるとわかる死属性魔術の厄介さよ・・・ 特に【危険感知:死】が凶悪ですね。 相手が自分よりも強けれ…
[気になる点] ヴァンダルーのステータスが更新される度に感想に大量発生する「ダンピール(女神)」へのツッコミですが、 これは様式美として『分かっているけど敢えて』書き込まれているものという解釈でいいの…
感想一覧
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