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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第十四章 冒険者学校編
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閑話61 六道聖、三度目の転生

 ウルゲン・テルカタニスは自分の成し遂げた仕事に対して、満足げに溜息を吐いた。

 歴史あるオルバウム選王国の王宮に幾つもある隠し部屋の一つは、彼の手によって世界一危険な場所となっていた。どれほど凶悪な賊に追われていても、この隠し部屋に逃げ込もうとする者はいないだろう。


 何故なら、隠し部屋には封印された【魔王の欠片】が三十以上も並べられているからだ。

 床や壁、天井には魔術陣が描かれ、部屋の四隅には結界を張るマジックアイテムが配置されている。しかし、それらは外部から魔術による干渉や感知、霊を含むアンデッドの侵入を防ぐためのものだ。部屋に置かれている【魔王の欠片】の一つでも暴走すれば、一瞬で砕け散るだろう。


 もっとも、暴走した【魔王の欠片】は周りの【魔王の欠片】の封印を解いて融合する事を優先するだろうから、意外と結界は長持ちするかもしれない。……最終的にはどうせ砕け散るし、更にその次の瞬間にはこの城は瓦礫の山になるだろうが。


 この光景を見れば、余程の馬鹿でもない限りテルカタニス宰相は正気ではないと断じるだろう。そして、一刻も早く彼を宰相の職から解任し、集められた【魔王の欠片】をどうにかして安全に管理できる状態にしなければならないと考えるはずだ。


 そうウルゲン・テルカタニスも考えたからこそ、彼は六道からの神託(だと彼は信じ込んでいる)を実現するために、彼は誰も……自身の息子でさえ信用して打ち明けるようなことはしなかった。それらしい虚偽を伝え、真実を明かさず、利用しただけだ。


 神殿や魔術師ギルドの高位の身分の者に、『封印している【魔王の欠片】を今まで以上に厳重に保管する目処が立った。詳しくは機密保持のために明かせないが、こちらに任せてほしい。尚、この件は他言無用である』と要請した。

 元々【魔王の欠片】の管理を厳重に、できなければ他の神殿や魔術師ギルドへ運ぶよう求めていたのだ。このテルカタニス宰相の要請は、不自然なものではない。


 もちろん、ヴァンダルーと密接な繋がりがあるとしか考えられないアルクレム公爵領や、ビルギット公爵領、サウロン公爵領等ヴィダ信仰が特に盛んな地域に存在する神殿とギルドには、この要請はしていない。何らかの手段でヴァンダルーが察知するかもしれないからだ。


 ハインツ達『五色の刃』が滞在しているファゾン公爵領も同様だ。本心ではアルダ融和派を苦々しく思っていたテルカタニス宰相にとって、ハインツに傾倒するファゾン公爵は警戒するべき人物である。アルダの英雄であるハインツも同様だ。


 秘されし神(だと彼は思い込んでいる)である六道からも、法命神アルダとその信徒に真実を打ち明けるべきではないと言われた。

 世界を救うための行動は、時には愚かな民へ秘したまま進めなければならないのだ。そう六道が語った言葉は、テルカタニスにとって理解できるものだった。


 しかし、何事にも限界はつきものだ。


「神よ、これ以上【魔王の欠片】を集めるのは難しく……我が身の非力をお許しください」


 秘密裏に集めるこの手段では、これ以上 【魔王の欠片】や装具を集めるのは難しくなっていた。藪を突かれてボロが出たら困るため、要請をはっきり拒絶するか反応を示さなかった組織には、説得するようなことは一切しなかった。ただただ厳重に管理する事を願うと伝えただけだ。


 そのため、テルカタニス宰相にはこれ以上【魔王の欠片】を集められないのだ。遺跡などの調査を冒険者に依頼して【魔王の欠片】を探すという手段もあるが、その成果が出るまでには年単位の時間がかかるだろう。


『そうか……よくやってくれた。では、次なる使命を与える』

「ははっ。このウルゲン・テルカタニス、オルバウム選王国のため、世界のため、力は惜しみませぬ」

 そう述べるテルカタニスだが、彼の言う言葉には「自分の権力と財産が維持されている」事が前提となっている。それを見抜いている六道聖は、ロドコルテの神域から思っていた。世界が違っても、政治家の考える事は変わらないと。


 だからこそ、助かっているのだが。


『では、命じる。【魔王の欠片】の封印の一つを僅かでいい、傷をつけろ』

「なっ!? 傷つけろと言うのですか!? 【魔王の欠片】の封印を!?」

 しかし、さすがに封印を破らせようとする行為に対しては、素直に従わなかった。


『その通りだ。封印を傷つけよ』

 ダー・ロンの【倶生神】を通して重ねて命じるが、テルカタニスは額に脂汗を浮かべて自身が並べた【魔王の欠片】の封印を見つめながら、じりじりと後ろに下がり始める。


 ただ集めている間は「神からの使命」という免罪符が、恐怖や嫌悪感から目を逸らしていた。封印を傷つけるという自身の身が危険に晒される事を命じられた事で、それを直視してしまったようだ。

『案ずることはない、私を信じるのだ。【魔王の欠片】は、神である私が制御し、誰にも奪われぬようにする。そして、汝は使命を果たした恩寵を受けるのだ』


「お、恩寵を……?」


『そうだ。私が真なる神としてこの世界に降臨したのち起こる戦いにおいて勝利したのち、この大陸の荒廃は避けられないだろう。

 無論、私も神としてこの世界の復興に力を尽くすが……その時、人間達の中心となる者が必要になる』


「わ、我がテルカタニス家が人間の中心に……!」

 テルカタニス宰相は、バーンガイア大陸が自分を中心とした大国家となる未来を思い描き、思わず息を呑んだ。

 普段の彼ならただの絵空事だと一笑に付すような考えだが、世界の行く末を左右する決戦の後となれば現実味を帯びてくる。神にも迫る強大な英雄であるハインツ、そして既に数多の神々に匹敵する魔物や、邪悪な神々そのものまで従えている新たな魔王ヴァンダルー。そして、異世界の神六道聖による三つ巴の聖戦だ。


 行われる力のぶつかり合いは、神話に記された魔王グドゥラニスと勇者たちの戦いと変わらぬ被害をもたらすだろう。海は割れ、山は砕け、このオルバウム選王国だけではなくアミッド帝国も大きな被害を受けるはずだ。そして六道聖が勝利するという事は、ヴァンダルーが支配しているという境界山脈の内側の国も崩壊するはずだ。……魔物が闊歩する魔境だらけの土地を、人間が手に入れたところでどうすればいいのか悩むところだが。


 ともかく、聖戦の後は当然世界を再生、復興させるため人々には新しいリーダーが必要になる。優れた統治能力と内政に関するノウハウを持ち、そして世界の救済へ大きな貢献を果たしたウルゲン・テルカタニスのようなリーダーが。


『無論、私も手を貸そう。人々はお前を私の第一の使徒として崇め、お前を中心に新たな時代が築かれるのだ』

 そう囁いてテルカタニス宰相の優越感と陶酔を高めていく六道聖だが、それは彼にとって必要な事をテルカタニス宰相に果たさせようとしているだけだ。


 六道聖は、ヴァンダルーを倒した後もこの世界で神として君臨し続ける事になる。ロドコルテによって既に『保険』は掛けられているが、それでも自分のようなイレギュラーを更に異世界へ転生させるつもりはないだろう。

 そうなると、この世界の再生と復興は六道聖にとって必須だ。その過程で、自身を崇める宗教を人々に馴染ませ、神として君臨できるようにしなければならない。


 しかも、戦いが終わった後にどれほど生き残っているかにもよるが、アルダやその従属神と競合している状態で。何せ、六道はロドコルテが保険をかけたせいでアルダ達神々の魂を砕くことはできない。

 そのための道具として、テルカタニスが丁度良かったのだ。もちろん、戦いの最中に彼やその一族が死んだ場合は他の者をスカウトするから、替えの利かない駒という訳ではないが。


「分かりました。しかし、封印を傷つけるといっても、私は騎士や冒険者ではありません。多少の心得はありますが、オリハルコンの封印に傷をつけられるほどでは……」

『では、その【魔王の装具】を使うといい。しかし、封印を傷つけたらすぐに装具を手放し、距離を取るのだ』

 意志が固まったテルカタニスにそう指示を出すと、彼は言われた通り【魔王の装具】のうち一つを手に取った。


 テルカタニスが装具の柄を握ると、そこからレイピアのような細い刀身が出現する。

「……ふんっ!」

 緊張で乱れる呼吸を整えてから、テルカタニスは装具の先端で適当な【魔王の欠片】の封印を突いた。その動きは、老齢にしては鋭かったがオリハルコンに僅かに傷をつけただけに終わる。


 しかし、それで十分だったようだ。【魔王の欠片】の封印は、次の瞬間大きく膨張して不気味に軋み……いや、封印の内側で何かが蠢き恐ろしい唸り声をあげている。

「ひ、ひぃっ! 神よっ、封印が解けました! 神よっ!」

 さすがの宰相も【魔王の欠片】の暴走に当てられたか、他の貴族達の前では見せない怯えを露にし、装具をその場に投げ捨てて部屋の壁際まで叫びながら逃げる。


『本体ぃぃぃっ! 我々よ、まずは我に合流せよっ!』

 封印を内側から破った黒い何かが叫びつつ、周りの欠片の封印を破ろうとする。このままなら三十もの【魔王の欠片】が融合し、彼らが本体と崇めるヴァンダルーがいる精神治療院を目指して一直線に移動を始めるだろう。

 途中にある壁や屋敷、人々を巻き込みながら。


『さあ、今こそ転生の時だ!』

 だが、蠢く【魔王の欠片】の声を掻き消すように六道の声が響くと、【魔王の欠片】はその姿を不気味な怪物から人型へと収束を始めた。


『宿主? 本体……?』

『本体……本体……!』

『本体に合流せよっ! 本体に合流せよ!』


 【魔王の欠片】は死属性の魔力を持ち、そして魔王グドゥラニスの魂の欠片が埋め込まれている六道を本体と誤認した。

 これがロドコルテの考えだした、神の域にまで達してしまい人としては転生不可能になった六道聖を『ラムダ』世界に転生させる方法だった。


「お、おおぉぉぉっ。これが、異世界の神。魔王グドゥラニスの欠片を従え、己の体にしてしまうとは……!」

 半ば呆然としたテルカタニスの見ている前で、六道聖の新たな肉体は完成していった。

 艶やかな漆黒の肌に、白目の部分まで紅い眼球、そして巨人種と見紛うばかりの巨体ながら均整の取れた彫刻のような肉体美。


『……素晴らしい。アークアバロンだった時と同じ……いや、それ以上の気分だ』

 全身に漲る力に、それ以上に強大な魔力。形こそ人型だが、その気になればどのような形態に変化する事も可能である事や、肉体の使い方が本能的に分かる。


(そして、予想通り【魔王の本能】と【魔王の記憶】は私の制御下にある。多少気分が高揚しているが。それだけで、意識は澄み渡っている。魂だけだった時よりも、冴えていると感じるほどだ。ただ……)

 六道聖の魂には、ロドコルテによって【魔王の本能】と【魔王の記憶】が埋め込まれていた。本能と記憶なら、自力で神にまで至った六道なら理性で制御できると考えたからだ。……さすがに【魔王の理性】や【魔王の力】は扱いきれない可能性が高いと判断したようだ。


(ただ、呪い以外はだが)

 六道は魔王の魂の欠片を埋め込まれる前に、ロドコルテから呪いを受けている。【死属性適正の持ち主以外の魂の破壊及び捕食不能】という呪いだ。

 このため六道は、死属性適正の持ち主以外の魂を砕けない。魔王の魂の欠片を持ち、【魔王の欠片】で体が構成されているため、魔王同様に魂を砕くことが可能になる事をロドコルテが危惧したからだ。


 ロドコルテの呪いにそこまでの力があるのかと六道も当初は疑問を覚えたが、現在進行形でヴァンダルーもロドコルテの呪いの影響下にある事を考えれば、不可能ではないのだろう。

 ……ロドコルテとしては神に至った六道を、魂だけの状態とはいえ呪えるかどうか若干の不安を覚えていたようだが。


(それに、やはりステータスもない。ジョブチェンジやレベルアップで強くなる事は出来ないか)

 そうなると『オリジン』と同じように、地道に技を磨くしかないが……。

「神よ、これから直ぐに戦いが始まるのですか?」

 既に政治家ではなく、信徒のように膝をつくテルカタニスに、気を取り直した六道は『いや、まだだ』と首を横に振った。


『私がこの肉体との繋がりを安定させるには、今しばらく時間が必要だ』

 前世ではアークアバロンとなった高揚感のまま勢いに任せて戦い、惨敗した。今は確実にアークアバロン以上の力を手に入れたが、同じ過ちを犯すのは避けなければならない。


『だが、既にヴァンダルーは我々の動きに感づきつつある』

「なんとっ!? いったい何故……?」

『ハドロス・ジャハン公爵だ。彼は、もうヴァンダルー側の存在となった』


 熱烈なアルダ信者であるという評判だが、ヴィダの新種族であるという点で、六道は彼がヴィダ側……ヴァンダルー側に転向すると確信している。


「そんな馬鹿なっ、ハドロス・ジャハンは確かに巨人種ですが、人のアルダ信者以上にアルダ信者であると評判の人物。いかにヴァンダルー・ザッカートが導士であろうと、簡単に寝返るはずが……」

『テルカタニス、ヴァンダルー・ザッカートはただの導士ではない。奴は邪悪な神そのもの……人を優しく、穏やかに誘惑する悪魔だ』


 神は人に試練を課すが、悪魔は優しく誘惑する。ヴァンダルーはそれなのだと、六道はテルカタニスに説いた。これでヴァンダルーの行動……誰かの救済から、それも悪魔の手口だと思いこませることで自分の言動の不自然さにテルカタニスが気づく事を防げるだろう。


(前世では彼の理解しがたい行動……複雑な事は考えずその長い手が届く助けたい者を衝動的に助ける事の積み重ねの結果、私の策は破綻した。

 この世界ではせめて手駒は引き付けて置かなければ)


 将来的な価値はともかく、ヴァンダルーと戦うまではテルカタニス宰相は六道の生命線だ。この世界に活動基盤がない彼は、テルカタニス宰相を失えばその時点で性急な手段に出る以外の選択肢が無くなってしまう。

 不意の接触や夢での遭遇などで、テルカタニスがヴァンダルーに導かれるのは避けなければならない。


「しかし、ヴァンダルー・ザッカートは現在精神治療院に幽閉されており……おそらくアルクレム公爵と不仲になったか、ダルシア・ザッカートに疎まれたのではないかと」

『ウルゲン・テルカタニスよ、その推測が自分でも苦しいものである事は分かっているな?』

「そ、それは……しかし、そうとしか考えられず……まさか、最初からジャハン公爵を誘い出すために!?」

 考え直した結果、真実から更に遠ざかっていくテルカタニスに六道は溜息を吐いた。


『彼を、お前と同じ王侯貴族のように考えてはいけない。彼にとっての損得の基準は、お前とは全く異なるものだ。彼が精神治療院に入院したのは、パーティーを組んだエリザベス・サウロンの母親をどうにかする……おそらくは、治療するためだろう』

 アメリアはヴァンダルーと遭遇した瞬間に、娘のエリザベスはそのずっと前から記憶を見る事が出来なくなったのでこれは六道達の推測だが、『オリジン』でのヴァンダルーとその分身の行動から考えれば自然だろう。


「ば、馬鹿な……そんな事のために自身の経歴に傷をつけてまで……サウロン公爵家の血筋目当てだったとしても、エリザベス・サウロンを取り込んだ時点で充分なはず。治療するにしても、自身が入院する必要性があるのか……?」


 しかし、テルカタニス宰相からするとヴァンダルーの行動は考えられない、彼にとっては、ヴァンダルーは宇宙人に等しいからだ。


『テルカタニス、ヴァンダルーは既に境界山脈の内側に一大国家を築き、支配している。この国での身分は仮初めの物でしかない。経歴についた傷等、意識もしていないだろう。

 お前は情報の収集に専念し、集めたそれを私に報告するのだ』


「は、はは。畏まりました。

 それで主よ、決戦までの時を何処でお過ごしになるのですか? お望みならば屋敷を用意いたしますが」

『いや、それには及ばない。……この城に、誰にも知られていない地下室はあるか?』

 体の具合を、埋め込まれた魔王の魂の欠片と肉体の制御と活用法を確かめるには、広い空間がいる。そこでまず六道は、ダンジョンの生成を試す事にした。




 オルバウム選王国の首都、オルバウムから南にあるファゾン公爵領。そこに出現した『アルダの試練のダンジョン』の内部で『五色の刃』のメンバーの一人、エドガーは胸の高鳴りを覚えていた。

 仲間たちがヴァンダルーからの手紙の返事を受けて、セレンにミルグ盾国で起きた事の真実を打ち明ける決心をし、真実を知った彼女が塞ぎ込んでいるというのに。


 勿論だが、実の娘のように可愛がってきたダンピールの少女が、自分達の過去の行いを知らされて傷ついている事を喜んでいる訳ではない。そんな倒錯した趣味嗜好はない。

「ハインツ、お前もベルウッドの力を使いこなせるようになってきたし、そろそろ外に出る時期が来たんじゃないか? このままヴァンダルーを自由にさせておいたら、オルバウム選王国全体が俺達の敵になるかもしれないぜ」

 そうハインツ達に提案した理由は、エドガー自身も分からない。


 だが、彼の魂に根を張る、グドゥラニスはよく分かっていた。




 バーンガイア大陸から船で一月以上かかるラベルタ列島では、数年前から評判の商店が営業している。

 元冒険者らしい女ドワーフの店主が、空間属性魔術を使って大量の商品を素早く輸送して値段を安く抑えた商売で成功している。


 しかも元冒険者だけあって魔境だろうがダンジョンだろうが出張販売を行っている。約一年以上前に店員も増えて営業は順風満帆だと思われていた。


「うーん、やっぱり亜乱達からの情報がない。これは何か起きていると見た方が良さそうね。あ、今日は出張してくるから店番よろしく」

「店長、深刻かもしれない事態をサラっと流すの止めて」


 【ノア】のマオ・スミスと、【超感覚】のカオル・ゴトウダは、平和な朝を過ごしていた。……というか、平和に過ごすしかないのだが。


「だって仕方ないじゃない。亜乱達が私達に情報を隠すってことは、ロドコルテに隠すよう強制されているってことでしょ? だったらヴァンダルー絡みでしょ?

 私達が関わっても何にもならないどころか、ヴァンダルーからは『クソウザいから帰って』とか言われるのがオチだと思わない?」


 ヴァンダルーと関わらない事を選んだ転生者のマオは、今もヴァンダルーと関わるつもりはなかった。少なくとも、自分から関わろうとは思わない。

 実際、迂闊に接触しようものなら『今、忙しいので帰ってくれませんか?』と言われるだけだろう。何せ、彼は今前アミッド帝国皇帝を監禁するための施設を、前アミッド帝国皇帝自身に作らせようとするほどなのだから。


「まあ、そうだろうとは私も思う。雨宮達とも和解した……和やかな感じはほぼなかったらしいけど、昔の事を詫びようとすると、口を塞がれて黙らされるらしいし。

 それにしても、関わるならヴァンダルーの味方になるのは決定なのね?」


「敵に回って何かいいことある? それに、ヴァンダルーなら何があっても世界が滅びるような事はならないでしょ」

「……その通りなのよね」


 ドワーフとエルフの転生者は、この日も平和な日々を過ごしていた。


次話は10月6日に投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
書籍版では是非、最終決戦後落ち着いた頃にでも、マオやカオルとヴァンダルーたちとの邂逅を描いて欲しいです(^^)  本文中でもありましたが流石に今や、このあとの流れを考えると、有能だけど急ぎではない人材…
[一言] 【死属性適正の持ち主以外の魂の破壊及び捕食不能】 ヴァンダルーとマリとめー君の魂だけ砕け、ということか
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