三百三話 魔王の大陸の戦い、終結!
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約百メートルの身体を持つ亜神から見ても巨大な凍土で出来た、大蛇の群れに襲われ、ゴーン達は壊滅的な被害を受けていた。
『我が主の仇を――!』
『せめて一太刀!』
真っ先にその被害を受けたのは、生き残っていたゼパオンとシリウスの英霊達だった。激昂してゼパオンの魂を喰らったヴァンダルーに復讐せんと、間合いを詰めていたため、避ける間もなく神霊魔術が直撃したのだ。
『皆を一撃で!? くっ、おのれ、かくなる上は我が奥義で――』
比較的離れていた英霊は、なんとか回避する事が出来た。
「レギオン殿直伝! 【肉弾】!」
『ばぱぁっ!?』
しかし、ペリアに投げられた原種吸血鬼にして【筋術】の元祖、ゾルコドリオの体当たりによって、熟れた果物のように弾けて散った。
一方最初から範囲外の空高くを飛んでいた『鷲の獣王』と『白鳥の獣王』は、そのまま上空から凍土の蛇を攻撃し、仲間を援護しようとした。
『けっこおおおおおきつぅいいいい! 【神閃】!』
『【螺旋突貫】! ……死ぬかと思いました』
だが、リクレントとズルワーンに投げられたリタとサリアのグレイブとハルバードの一撃によって、翼を大きく負傷して、悲鳴をあげながら凍土の蛇が蠢く地上に向かって落ちていった。
『ギヤアアアアアアアアァァァ――――』
そして上昇して避けようとした鳥系の獣王も、大蛇が先回りして移動範囲を制限し、そのまま巻き付いて凍土で押し包んでいく。
『ギギギギギギ!?』
凍土を砕こうと、己の貝殻の硬度と巨体の突進力を信じて突撃した巨大巻貝達……『貝の獣王』ハリンシェブの子供達も、凍土の蛇を砕くどころか巻きつかれ、そのままのみ込まれていった。
『砕けん! この凍土は生半可な攻撃では砕けんぞ!』
凍土の蛇はヴァンダルーの膨大な魔力、そしてオルビア自身の力によって作られている。山をも砕く真なる巨人や獣王の一撃でも、簡単に砕けはしない。
そして、渾身の力を込めた攻撃によって砕かれたとしても、材料である湖水と湖底の泥は幾らでもある。凍土の大蛇は凄まじいスピードで伸び続け、亜神達の動きを封じた。
『離れるな! 分断されるぞ!』
『まさか……それが狙いか!』
ヴァンダルーが【大死氷泥乱蛇】を放った狙いの一つは、敵の分断だった。炎や電撃とは違い、その場に残る氷で亜神達の移動と連携を封じようとしたのだ。
『よくも……!』
そして、もう一つは水属性の亜神達が操るための水源を無くす事だ。
怒りと焦りに震えるマドローザは、自身が利用できる力の源が急速に奪われていくのに耐えられず、圧縮された水のブレスを吐いた。
直撃すれば砲弾型使い魔王も潰せる威力がある激流だが、相性が悪かった。
凍土の蛇にぶつかった水のブレスは、凍土を砕くどころか逆に凍らされ、蛇の体積を増やす事しか出来ない。
『よくもっ! よくも! よくもぉぉぉぉ!』
だが、激昂し我を忘れたマドローザはブレスを吐き続ける。
『マドローザ、怒りに我を忘れるな!』
ゴーンが事態に気がついて凍土の壁の向こうから叫ぶが、マドローザには届かない。
『母上! ゴーン殿の言う通りです!』
『怒りをお鎮めください!』
だが、マドローザの子供達には届いたようだ。今は亡き『大渦龍神』ズヴォルドの兄弟達が、前の戦いで負った傷が癒えていない状態でブレスを吐き続ける母を制止する。
しかし、ヴァンダルーはそれを見逃すつもりはない。
「もう、苦労して生かしておく理由はありませんからね」
これまでは、マドローザとブラテオを倒してしまうと、防衛隊がゴーンの指揮の元、一つに纏まってしまうので倒さないようにと加減して戦ってきた。
だが、これはゴーン達との最後の戦いだ。もう、我慢する事はない。
「では、お願いします」
『良いの? 凍土の伸びが止まるけど』
「長さはこれくらいで良いでしょう。湖水もほぼ枯れましたからね。では、これを試すのは初めてなので、無理だったら言ってくださいね」
『は~い。頑張ってみるね!』
ヴァンダルーはそう応えるオルビアに、さらに濃い死属性の魔力を注ぎこむ。閉じ込め、分断した亜神達を殺すために。
「【死氷億柱槍】」
凍土の大蛇の側面から、先端が鋭い無数の凍土の槍が生え、まるで茨のようになった。
『ガハアアアアア!?』
『ギ!? グウウウッ! グ……ハ……』
身を捩って回避する事も叶わず、凍土の槍は亜神達の身体に突き刺さり、穂先は臓腑や骨にまで至った。
硬い龍の鱗も、獣王の強靭な毛皮や殻も、そして、鎧のような筋肉も、役に立たない。役に立てさせない鋭さの槍を突きだしたのだ。
しかも、凍土の槍に触れているだけで、体温と共に生命力が吸われていくのだ。身体から槍を抜かなければ、亜神達の再生能力も発揮されない。
『お、恐るべし、魔王……ヴァンダ……ルー!』
それは堅牢な甲殻に守られたガビルデスも同じだった。脚も鋏も貫かれ、身動きが出来ないままヴァンダルーを睨みつける。
『ア、アルダよ。急げ……急がなければ、英雄を幾ら育てても……我に、援軍など……送ってくれるな……よ』
ガクリと、ガビルデスの全身から力が抜けた。
「今夜はカニ鍋……いや、カニしゃぶかな?」
さすがに、あの大きさのカニを茹でる鍋はない。殻を剥いて切り身にして、しゃぶしゃぶにするべきかとヴァンダルーは思った。ミソ醤油にしたミソに付けて食べると美味しそうだ。
「いや、まずはドルステロと同じようにライフデッドにして、身とミソを継続して取れるようにするべきですね」
そうガビルデスの活用方法を口に出して考えながら、ヴァンダルーはマドローザに視線を戻した。
『グルルルル……!!』
そこには、幾つもの凍土の槍に貫かれ、明らかに致命傷を負った龍の姿があった。傷口と口から大量の血が流れ、大地に血の河を作っている。
既に咆哮をあげ、ブレスを放つ力も残っていないのか、憎々しげにヴァンダルーを睨むだけだ。
『マドローザ!』
ゴーンが救援に向かおうとするが、彼自身も凍土の蛇の側面から生えた無数の槍によって、浅くない傷を負っている。とても凍土の蛇の壁を越えて駆けつける事は出来ない。
『ええいっ! 退けっ、退かぬか!』
空中で戦っていたため、【大死氷泥乱蛇】の効果範囲から外れていたポゼリが救助に向かおうとするが、ゴドウィンがそれを見逃すはずがない。
「行っても構わんぞ! 背後から臓腑まで抉ってやろう!」
『ぬぅううおおおお!』
ゴドウィンと一対一で勝負しているポゼリは、マドローザの救援に向かえばその隙を突かれる事が分かっている。そのため、駆けつける事が出来ない。
「【呪刃幻糸】。中々しぶといですね」
「【超加速】!」
『グオオオオオオ! ガアアアアアア!』
同じく空中で戦っているザナッファーは、マドローザと同じく瀕死の状態に追い込まれていた。ベルモンドの糸とエレオノーラの剣によって、全身を傷つけられ、既に目と脚の数が半分にされている。
ゴドウィンと違って彼女達には戦いに拘りがないので、砲弾型使い魔王が容赦なく撃ち込まれているのも大きい。むしろ、よくここまで持ち堪えたと彼を褒めるべきだろう。
だが、そのザナッファーの額に剣を構えたアイラが突っ込んだ。
『【惨殺神】!!』
そして、たとえ神でも惨殺できるようにと編み出した、必殺の武技を発動させ、剣を額に突き立てた。
『―――――!?』
アイラの武技によって強化された突きの衝撃は、ザナッファーの頭蓋骨を破壊し、脳に穴を開けた。
声にならない絶叫をあげたザナッファーは、耳と鼻から血を噴き出すと白目を剥いて落下し始めた。旋風の龍神は落ちたのだ。
これでマドローザを助ける者はいなくなった。ゼパオンが健在だったら魔物達を差し向けただろうが、彼は既にヴァンダルーに喰われている。
そして生き残った僅かな英霊は、バクナワが後ろに下がった事で自由になったダルシア達や、骨人が相手をしており、今にも決着がつきそうである。
『よくも……私の子供達を……!!』
マドローザの周囲には、凍土の槍に貫かれたまま動かなくなった龍が二柱いた。彼女を助けようとした、子供達だ。
「……そう言われても、全く罪悪感が沸かないのが、我ながら不思議ですね。まあ、別にいいか」
『あ、ヴァン君。あたしはもう大活躍したし、止めを刺すだけだったら新しい子に譲ろうかなって思うんだけど、良い?』
「そうですね。止めを刺すだけでも、彼女達ならランクアップするでしょうし」
『貴様っ! 私を……この私を!』
マドローザが血を吐きながら、屈辱に瞳の炎をさらに滾らせた。龍の中でも上位にある自分を、ヴァンダルー達が経験値としか見ていない事に、彼女のプライドが傷つけられたからだ。
しかし、マドローザの怒りはやはりヴァンダルーの精神を全く動かさなかった。
ヴァンダルーを魔王グドゥラニスの化身や、後継者のような存在としか見なかったマドローザは、彼にとって共感できる存在ではなくなっていたのだ。
「出なさい、ジェーン・ドゥ」
ヴァンダルーの言葉に従い、『地球』では身元不明の女性の死体に名づけられる名を与えられた、空間属性のゴースト達が現れた。
『ああああああぁぁぁぁぁぁぁ』
それは、一見すると水銀で出来たレギオンのように見えた。無数の人間の部位が、頭や腕、脚が出鱈目に生えている。
何故こんな形になっているのかと言うと、それは空間属性のゴースト達の中に、ダルシアの仇の一人のゴーストが混じっているからだ。
『ザッカートの試練』で死んだ霊の集団であるジェーンは、『五色の刃』の一人、エルフの精霊使い、マルティーナの霊を含んでいる。しかし、それがどの霊なのかは彼女達も、そしてヴァンダルーですら分からない。
ジェーンたちは生前の姿だけではなく、記憶も人格もなにもかも失っているからだ。
ランクアップすれば記憶や人格が戻るかと思われたが、そうはならなかった。何故ならジェーン達は生前の自分を取り戻す事によって、自分達の中にいるマルティーナが見つかる事よりも、マルティーナかもしれない自分がヴァンダルーに魂を砕かれる事を恐れたからだ。
その恐怖によってジェーン達は一つとなり、思念の集合体……ゴーストレギオンと化したのである。
ここまで変異してはヴァンダルーも、「もうマルティーナは死んで転生したと思う事にしましょう」と、諦めるしかなかった。
そうして晴れて存在を認められ、属性ゴーストの仲間入りをしたジェーン・ドゥに、ヴァンダルーは魔力を注ぎこんだ。
「【死空間】」
そして、音もなく範囲内に存在するだけで生命力を奪われる空間が展開される。【死砲】が【死弾】を収束させた魔術なら、これは範囲内の空間全体に濃厚な死を拡散し、満たした【神霊魔術】だ。
凍土の槍に貫かれたままのマドローザは、逃げる事も出来ず、そのまま命を失うしかない。
『おの、れ……』
グドゥラニス率いる魔王軍との戦いを生き延びた『大海龍神』マドローザは、自分達が魔王と呼ぶヴァンダルーによって倒された。
「さて……グファドガーン、誰かが【転移】してきそうな気配はありますか?」
マドローザを倒した感慨もなにも抱かず、ヴァンダルーはグファドガーンに、アルダ勢力から援軍が送られてきそうか、使い魔王を通じて確認を取った。
「来ようとしていますが、私がこの周辺への【転移】を妨害して止めている状態です」
「……撤退も視野に入れるべきでしょうか?」
「いえ。手応えが弱いので、アルダやナインロードの命で編成された援軍ではないと考えます。おそらく、一部の神や英霊が、ゼパオンの英霊達と同じように、命令を無視して降臨しようとしているのではないかと」
アルダとしては、当然だが防衛隊の亜神達やゼパオンを失いたくはなかった。しかし、今の魔王の大陸に援軍を送っても、彼等を助けるどころか犠牲者を増やすだけなのは明らかだった。
ヴィダ側の亜神でも力を持つタロス、ディアナ、ティアマトが揃い、さらにヴァンダルーの仲間の中でもランク13以上の存在、すなわち神と互角に戦える存在が集まっている。
【転移門】で助けようとすれば、グファドガーンが妨害し、力ある神が降臨すれば復活したペリア達が黙ってはいないはずだと、アルダ達は考えているのだろう。
そうした妨害や障害を掻い潜る事が出来たとしても、ゴーン達本人に逃げるつもりがなければ意味がない。彼等は、無事に撤退する事が出来る状況で、自ら選択して死地に残ったのだ。
そのため、アルダ達はゴーン達の救援に消極的なのだろう。
『確かに、自分から残ったのはあいつ等だもんねぇ』
オルビアが首を傾げて言う。武人風に言うのなら、「死に花を咲かせてやろう」という事なのかもしれないが、彼女には理解できない価値観だ。
理解できるグファドガーンも、殊更弁護しようとは思わなかった。
「あの英霊達のように、【転移】で空間を渡るのではなく、直接降臨する者達もいないようなので……これ以上の邪魔は入らないかと」
「なるほど。では、このまま倒しきりましょう」
一瞬、ブラテオをこのまま生かしておいて、アルダ勢力を引き続き、かき回させようかという考えが過った。しかし、亜神中心の防衛隊ならともかく、アルダ勢力全体では彼にそこまでの発言力と求心力はないだろう、と判断して却下した。
そのブラテオの命運がつきようとしていた。
『どうした、醜悪な肉塊よ!? 貴様等の攻撃はこの程度か!? 儂は一人になっても戦うぞ!』
全身に雷を纏ったブラテオは、見るからに満身創痍といった有り様だが、その戦意は高まるばかりだった。恐らく、ヴァンダルーへの間違った復讐心を滾らせ、命をかけて戦う事に精神的な満足感と快感を得ているためだろう。
誇りと信念のためなら命を殉ずる覚悟と評せば美しいが、その誇りと信念が間違ったものだと、ここまで醜悪に見えるのかと、レギオン、特にワルキューレは顔を顰めた。
せめて、ヴァンダルーをグドゥラニスと同一視していなければ、『良い覚悟だ』と称賛する事も出来たのだが。
『そうか、【ブレイバーズ】の連中には、我々がああ見えていたのか! なんとも、滑稽で見苦しいな!』
『過去の反省には役立つけれど…クノッヘンの手も空いて来たし、そろそろ合体して倒しましょうか』
『うむ! そうしよう!』
『おおおおおおおん!』
ワルキューレが同意したのを合図に、クノッヘンを構成する骨の中でもより巨大な骨が凍土の蛇の隙間を縫うようにして集まった。
『フィトゥンの小僧共と戦った時のように、エセ巨人にでもなるつもりか!?』
『その通り! だが、あの時とは違うぞ!』
ペリア防衛隊の真なる巨人の亡骸から回収し、クノッヘンの一部となった骨格にレギオン達が巻き付き、体長約百メートルの肉の巨人に変化する。
何が違うものかと、ブラテオは全身に纏った雷で自身の神経と筋肉を刺激し、肉体の限界以上の速さで突っ込んだ。
ゾッドの【筋術】の猿真似だが、この技によってブラテオは全身の筋肉組織がバラバラになるまで肉体を操る事が出来る。内臓が弾けても、心臓が破壊されてもだ。
今のブラテオは本当の意味で死兵なのである。
『醜い紛いものめ、打ち砕いてくれる!』
所詮は骨に纏わり付いて、形だけ巨人らしくなっただけ。自らの一撃を避ける事は出来ないだろうと確信し、ブラテオは拳を突きだした。
『【柳流し】』
だが、巨人となったレギオンは素早く、そして滑らかな動きでブラテオの拳を逸らした。
『【竜巻蹴り】』
そして、体勢を崩したブラテオの胴体に、竜巻のように激しく回転して蹴りを叩きこんだ。
『ぐぼああああっ!? がはっ!』
肋骨を何本か圧し折られ、ブラテオは血の混じった唾液を吐きながら槍が生えた凍土の蛇に叩きつけられた。
驚愕に目を見開くブラテオの腹から、凍土の槍の穂先が血と共に顔を見せる。だが、ブラテオの頭にあるのは激痛でも死への恐怖でもなく、疑問だった。レギオンの動きが、報告で聞いていた、『雷雲の神』フィトゥンとの戦いで見せた巨人形態でのものとは全く違ったからだ。
まるで全身を自由自在に操る武術の達人を、そのまま大きくしたような巧みな技。しかも、それを電撃で神経と筋肉を加速させた自分に付いてくる身体能力と共に活かしている。
(いったい、何故!?)
混乱するブラテオだったが、レギオンの動きの良さは、レギオンだけではないからこそ発揮できるものだった。
『良い調子だ、クノッヘン! 流石、ヴァンダルーに古くから仕える古参の勇士だ!』
『おおおおおーん!』
フィトゥンとの戦いでレギオン達が巻き付いたのは、ただのジャイアントの骨だった。獲れたて新鮮だが、単なるカルシウムである。
しかし、今纏わり付いているのはクノッヘンの一部だ。自らの意思で動く、ランク15のボーンパンデモニウムギガントギガースだ。
そして、レギオンの人格の一つ、ワルキューレはアンデッドを指揮する事で、最も力を発揮する。
ワルキューレ以外の人格が新たに習得した【筋術】で、全身の肉を精密にコントロールし、ワルキューレがクノッヘンを【指揮】し、レギオンとクノッヘンが【連携】して動く事で、並の真なる巨人を上回る身体能力と、【格闘術】の達人の動きが可能になったのだ。
『では、最後に【筋術】の武技を見せてやろう!』
肉と骨が軋む音を響かせて、巨人と化したレギオンの胴体が一気に細くなった。それを見たブラテオは、反射的に両腕で頭と胴体を守ろうとする。
(なんだか分からんが、あれを受けたら終わりだ!)
そう彼の直感が告げていたのだ。
『【加速射出】!』
細くなった胴体が一瞬で膨張し、その勢いで肋骨が槍のように射出される。これがレギオンの【筋術】、振動による発電や膨張ではなく、純粋に筋肉の動きを強化する武技だ。
それで体内の骨を射出する時点で、通常の生物には習得不可能だろうが……クノッヘンがいれば幾らでも弾を補充する事が出来る。
『…………!! 無……ね……』
腕を貫通した巨大な肋骨に額を貫かれ、『轟雷の巨人』ブラテオは凍土の蛇に縫い付けられ立ったまま逝った。
『マドローザだけではなく、ブラテオまでやられた!?』
残り少なくなった防衛隊の亜神達は、副官格の二柱の死によって動揺が走った。ブラテオは彼等を背水の陣に巻き込んだ張本人なのだが、彼等の認識はゴーンを支えてきた頼れる副官格のままだった。
『やはり、敵わんか……!』
そして指揮官のゴーンも死に瀕していた。彼は防衛隊を指揮していたが、凍土の蛇によって分断されそれがままならなくなってからは、バクナワが下がった事で自由になったダルシア達と戦っていたのだ。
「降伏するのなら、魂の安全だけは保障するわ」
ダルシアが杖を向けて尋ねるが、ゴーンはニヤリと笑って拒否した。
『そして未来永劫、貴様の息子に仕えるのか? それは儂ではない。儂は、儂のまま戦い、そして滅ぶ! その方がまだマシだ!』
ゴーンの全身に魔力が満ち、瀕死だった肉体が岩に覆われる。そして、巨岩と化して、ダルシア達に体当たりを敢行した。
原始的だが、ゴーンの巨体を最も生かす事が出来る攻撃だ。亜神の魔力によって創られた岩は、小山なら割る事が出来るA級冒険者でも、割る事は難しいだろう。
「では、望み通りお前のまま滅びなさい。【螺旋拳投】、もう一撃【螺旋拳投】」
だが、上空に居るのはA級冒険者を超える、彼が魔王と恐れ倒そうとした相手だった。
ヴァンダルーが切断し、【投擲術】で放った両腕は高速で回転しながら巨岩の後部に突き刺さり、そのまま【筋術】の効果で膨張。岩の三分の一を木端微塵に砕いた。
「そう言うと思っていたわ。……【全能力強化】!」
『【魔力活性化】! 【感覚強化】! 【筋力超強化】!』
そして、ゴーンの前にいるのもA級冒険者を超える者達である。ダルシアと、ボークスに続いて合流したジーナが付与魔術をかけて皆を強化する。
『ぐぼあああああ!?』
その衝撃で前に押し出されたゴーンは、体勢を大きく崩した。
「任せろ! 【巨神断ち】!」
『ヂュオオオオ! 【骨刃山砕】!』
「義理の孫に良いところを見せてやる! 【轟鬼死閃】!」
そこにバスディアの大ぶりの斧の一撃が、骨人の剣と自身の骨の刃の連続攻撃が、ヴィガロの霊体の腕も使った斧の四連撃が、ゴーンの巨岩に穿たれる。
『【氷神槍乱雨】! 【炎光破閃】!』
『【光姫超分身】! 【風神駿槍】!』
ザンディアが魔術で氷の槍を降らせ、その直後に炎と光の光線を放って岩を砕き、ザディリスが実体のある分身を作り出し、それぞれの分身が風の槍を放つ。
『うおおおおおおっ!?』
巨岩が砕け、中から現れたゴーンに、クワトロ号からの砲撃と、チプラス達光属性のゴーストの光線と、レビア王女の炎、キンバリーの雷が降り注ぐ。
「望み通り、お前自身のまま偉大なるヴァンダルーの一部となるがいい」
そして、グファドガーンが放った空間の刃によって、ゴーンの首が刎ねられた。
ここに、魔王の大陸における戦いは終結したのだった。
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・名前:クノッヘン
・二つ名:【万骨殿】 【コンサート会場】 【骨肉の巨人】(NEW!)
・ランク:15
・種族:ボーンパンデモニウムギガントギガース
・レベル:0
・パッシブスキル
闇視
剛力:10Lv
霊体:10Lv
骨体精密操作:6Lv(UP!)
物理耐性:10Lv
吸収超回復(骨):2Lv(UP!)
城塞形態:10Lv
能力値増強:城塞形態:1Lv(能力値強化:城塞形態から覚醒!)
能力値増強:創造主:1Lv(能力値強化:創造主から覚醒!)
自己強化:導き:8Lv(UP!)
魔術耐性:4Lv(UP!)
・アクティブスキル
忍び足:2Lv
ブレス【毒】:10Lv
高速飛行:8Lv
射出:10Lv
並列思考:10Lv
建築:6Lv(UP!)
楽器演奏:4Lv
舞踏:5Lv
御使い降魔:2Lv(UP!)
解体:4Lv(UP!)
サイズ変更:2Lv
連携:5Lv(NEW!)
格闘術:1Lv(NEW!)
・ユニークスキル
ヴァンダルーの加護
骨群操作:3Lv
群体:2Lv
ヴィダの加護
ロージェフィフィの加護(NEW!)
名前:レギオン
年齢:3
二つ名:【聖肉婦】 【名も無き英雄達】(NEW!) 【骨肉の巨人】(NEW!)
ランク:13
種族:エクリプスダークムーンレギオン
レベル:99
ジョブ:巨筋術士
ジョブレベル:0
ジョブ履歴:見習い魔術師、魔術師、見習い戦士、戦士、肉弾士、巨肉弾士、無属性魔術師、操肉士、盗賊、暗殺者、暗闘士、魔塊士、蝕肉士、群肉士、群塊士、筋術士
・パッシブスキル
精神汚染:7Lv
複合魂
魔術耐性:7Lv(UP!)
特殊五感
物理攻撃耐性:10Lv(UP!)
形状変身:5Lv(UP!)
超速再生:10Lv(UP!)
剛力:1Lv(怪力から覚醒!)
魔力増大:6Lv(UP!)
生命力増大:4Lv(UP!)
能力値強化:食肉:10Lv(UP!)
炎雷耐性:7Lv(UP!)
能力値強化:創造主:5Lv(UP!!)
自己強化:導き:6Lv(UP!!)
自己強化:変身:1Lv(NEW!)
色香:1Lv(NEW!)
・アクティブスキル
限定的死属性魔術:10Lv
サイズ変更:10Lv
指揮:6Lv(UP!)
手術:7Lv
格闘術:10Lv(UP!)
短剣術:7Lv
融合:4Lv(UP!)
突撃:10Lv
詠唱破棄:5Lv(UP!)
遠隔操作:10Lv(UP!)
無属性魔術:6Lv
魔術制御:6Lv
限界突破:8Lv(UP!)
高速走行:9Lv(UP!)
再生力強化:食肉:10Lv(UP!)
投擲術:6Lv(UP!)
料理:3Lv(UP!)
鍵開け:4Lv
暗殺術:5Lv(UP!)
暗闘術:4Lv(UP!)
忍び足:3Lv(UP!)
罠:3Lv(UP!)
魔闘術:4Lv(UP!)
歌唱:3Lv(UP!!)
舞踏:3Lv(UP!)
御使い降魔:3Lv(UP!)
筋術:3Lv(NEW!)
・ユニークスキル
オリジンの神の加護
ズルワーンの加護
リクレントの加護
ゲイザー:5Lv
侵食融合:3Lv(UP!)
ヴァンダルーの加護
ディアナの加護
多重並列思考:3Lv(UP!)
ヂェリュブファンの加護(NEW!)
○魔物解説:ボーンパンデモニウムギガントギガース ルチリアーノ著
レギオンと協力して、『骨肉の巨人』という二つ名まで獲得したクノッヘン。しかも、ちゃっかり【格闘術】スキルまで獲得している。
これまでの戦いで亜神達の巨大な骨を複数手に入れた事で、より巨大な砦やコンサート会場になる事が出来るようになったようだ。
……この世界の最も巨大な建造物は、クノッヘンではないだろうか? 真なる巨人は住居を持たないそうだから、その可能性は高そうだ。
異世界にもこれ程の大きさの建造物はないのではないかとカナコに質問したが、「少なくとも、コンサート会場としては最大です」と答えてくれた。
ちなみに、ガルトランドの守護神の一柱である『骨牙の悪神』ロージェフィフィの加護も得ているので、さらなる進化が期待できる。
○種族解説:エクリプスダークムーンレギオン ルチリアーノ著
クノッヘンと合わせて、『骨肉の巨人』という二つ名を獲得したレギオン。やろうと思えば、真なる巨人の数倍……数百メートルの巨体にも変形できるそうだ。ただ、さすがにバランスが悪いし、筋肉の伸縮が上手く出来ないので、百メートルぐらいがちょうど良いらしい。
だんだん、彼女達の解説を、「種族解説」でして良いのか疑問を覚えてきた。
彼女達の大半もそうした事に無頓着だが、閻魔だけは常識人なので、やはり人のままで良い気もするが。
その閻魔だが、『肉堕の悪神』ヂェリュブファンの加護を獲得したために手に入れた、【色香】スキルにショックを受けていた様子だった。どうやらヂェリュブファンが司る肉の堕落とは、肉欲に溺れるとか、そういう意味が含まれていたらしい。
時々研究を手伝ってもらっているので、私は落ち込んでいる彼に「少し艶めかしくなっただけじゃないか、気にする事はないと思うがね」と慰めたが、それからレギオン全体から避けられている気がする。
気のせいだろうか?
1月17日に次話を投稿する予定です。




