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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第七章 南部進出編
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百五十三話 帝国の策謀と誕生祝い

百五十一話と百五十二話で、使い魔のレムルースを通して見ていた事で経験値を獲得できたとありましたが、蟲の魔物に運ばせた【魔王の眼球】を【遠隔操作】スキルで操り、見ていた事で経験値を獲得できたと修正しました。

 アイラ達闇夜騎士団やレギオンによって、スレイガーと殆どの『柄』は始末された。

 しかし、たった一人だけ生き延びた『柄』がいた。彼の存在は最初からエルヴィーンや他の『柄』にも知らされなかった。エルヴィーンは薄々察していたようだが、何処に何人待機しているのかはまでは知らなかった。


 彼はエルヴィーン達から離れた場所で情報収集に専念していた。そしてリッケルトの救援にも向かわず、彼等が殺されるのをただ静観し、情報収集に徹し続けた。


 そして戦闘が終わったら、逃走に専念した。マルメ公爵がいる占領軍司令部をそのまま無視して通り抜け、待機していた他の『柄』の元に情報を持ち帰ったのだ。

「……杞憂に終われば良かったのだが」

 その情報が記された報告書に目を通したアミッド帝国皇帝、マシュクザール・アミッドはそう呟いた。


 彼は甥であるリッケルトを含めた四人の『邪砕十五剣』を、捨て石にしたつもりは無かった。非常事態なら……想定を超える非常事態が起こっても、切り抜けられるメンバーを派遣したはずだった。


 『蟲軍』のベベケットが率いる蟲がいれば、ヴァンダルーが千を超えるアンデッドを使役しても殲滅……使役する数が数千でも、抑える事は出来るはずだった。

 『王殺し』のスレイガーがいれば、ベベケットの蟲がアンデッドを抑えている内にヴァンダルーを暗殺できるはずだった。


 そして『五頭蛇』のエルヴィーンは、冒険者だったらS級への昇格も狙えた腕利きだ。アーティファクトだけでは無く魔王の装具も貸与したため、もしヴァンダルーが【魔王の欠片】を使用しても討伐できるはずだった。


 『光速剣』のリッケルトも、他の三人よりも戦闘能力では劣るが他の騎士と比べれば十分過ぎる戦力になる。聖剣ネメシスベルと【剣術】の上位スキルである【光速剣術】を振るえば、足手まといにはならないはずだった。


 だが報告書によると、全ての「はずだった」は現実には成らなかった。

 ベベケットは蟲を全て奪われ、スレイガーは首を刎ねる事に成功するも暗殺には失敗。エルヴィーンも善戦し、今まで謎に包まれていたヴァンダルーの力を引き出す事に成功したが、敗北。

 リッケルトも異形の魔物の謎の力の前に敗れた。


「尽く目算が狂うとは……余も老いたか」

 既に百を超える年月を生きるマシュクザールは、長寿のハーフエルフらしく皺ひとつない顔を撫でて言った。

「陛下、その様な冗談を言っている場合ではありませんぞ」

 マシュクザールの執務室に併設された、機密性の高い事柄を話し合うための会議室。そこに集まった者達は揃って深刻な顔をしていた。


 マシュクザールの他には軍が押さえている空間属性魔術師の【転移】で帰還した、生き残った『柄』本人。『邪砕十五剣』の纏め役である『零剣』のカーマイン、それに帝都を守る第一軍を率いるヒュペリ将軍、バンゲイン宮廷魔術師長。それ以外の者もマシュクザールが信を置く腹心ばかりだ。


「サウロン領の軍本部から緊急の報告があり、マルメ公爵の主だった家臣や騎士が白昼何者かに暗殺、及び拉致されました。そして公爵本人は犯人に拉致された模様です。……首から上の皮膚を除いて」

 異変に気がついた兵が司令部のある建物に入ったところ、中は血の海だった。何かの魔術によって血臭を消されていた為誰も気がつかなかった。


 そしてマルメ公爵の執務室の壁には、まるでマスクのように公爵の首から上の皮だけが打ちつけられており、その下にはリッケルトの左右に両断された首が転がされていた。

 建物に居たはずの使用人や下働き、そして幾人かの兵士は無事だったが、何らかの方法で記憶を消されたのか、中で何が起こったのか誰も思い出せないと言う。


「犯人は明らかにヴァンダルー本人か、その手の者でしょうがそれどころではありません。

 軍本部は混乱の坩堝です。マルメ公爵軍の指揮官の一人が本国の命令を待たず、公爵救出の為勝手に公爵軍の一部を率いて旧スキュラ自治区に向かってしまいましたが、その後連絡がありません。恐らくは……」

「このままではオルバウム選王国にこの非常事態が伝わるのも時間の問題……いや、既に掴んでいるかもしれません」


 ヒュペリ将軍達の危惧は正しい。帝国内ではリッケルトの出動は大々的に知られているし、一部だがマルメ公爵軍が勝手に出動したのだ。これでオルバウム選王国がまだ異変に気がついていなければ、選王国の情報部は無能もいいところだ。


 しかし、マシュクザールはヒュペリ将軍では無くバンゲイン宮廷魔術師長に視線を向けた。

「報告に在る特殊な魔術に心当たりは?」

「お恥ずかしい話ですが、見当しかつけられません」

 バンゲインはそう言って一旦口を閉じた。だがマシュクザールが無言で先を促すと、渋々といった様子で再び口を開いた。


「記録に残っているどの属性魔術とも異なり、特殊なゴーストを使用する等特異性ばかりが目につきます。ただ報告を見る限り死を連想させる魔術が多いように思えますな。

 以上の事から生命属性を逆転させているのか、それとも……魔王グドゥラニスが使用していたとされる死の魔術ではないかと思われます」


 突然出た神話の中でのみ語られる存在と魔術に、腹心たちが「そんな馬鹿な」とざわめく。

 しかし意見を聞いたマシュクザールは「そうか」と頷くと、深く息を吐いた。

「【魔王の欠片】を我が身同然に使うのだ、魔王の魔術が使えても何の不思議はないか。しかも高ランクのアンデッドを幾体も従えるとは、最早魔王そのものだな」


「陛下っ! ですから問題はダンピール一人だけではありません。このままではサウロン領をオルバウム選王国に奪い返されてしまいますぞ!」

「その通りだ、ヒュペリ」

 ヒュペリが軍人らしい大声で主張した内容にマシュクザールは、はっと目を見張った。そして席から立ち上がると、こう言い放った。


「サウロン領を選王国にくれてやれ!」

「畏まりました! サウロン領を……陛下、今何と!?」

「くれてやれと言ったが聞こえなかったか? 発案者はお前ではないか」

「わ、私はくれてやりましょうと言った訳ではありません! 一体何を考えているのですか!?」


 青くなって言い返すヒュペリに、マシュクザールは「厄介払いに決まっているだろう」と返した。

「カーマイン、その『柄』には【計測】のユニークスキルがあったな」

 【計測】のユニークスキルは、その名の通り見た物を計測する事が出来るスキルだ。【鑑定の魔眼】のように対象のステータスを全て見る事が出来る訳ではないが、情報収集において有用だ。


「発言を許す。ヴァンダルーについて報告せよ」

「御意。私が目にした時点で……年齢、九歳。二つ名、九。経験済みジョブ、十二。パッシブスキル、十八。アクティブスキル、二十六。ユニークスキル、八」

 『柄』の淡々とした報告に、ヒュペリ将軍も含めて多くの者が息を飲んだ。


 二つ名はまだ良い。名づけるだけなら、過去にも親馬鹿な為政者が自分の子供に山ほど二つ名を付けた例が在る。

 だが九つの少年が十二のジョブをレベル100まで上げ、パッシブとアクティブ合わせてスキルを合計四十四も獲得している。しかも一つ持っているだけで希少なユニークスキルを八つも持っている。


 スキルの名称やレベルは不明だが、エルヴィーンとの戦いから推測すればS級冒険者に相当する脅威である事は間違いない。

 ……実際には『柄』が【計測】したあと更に一回ジョブチェンジしているのだが。


「他のアンデッドや吸血鬼はどうだ? ランクのみ報告せよ」

「……低い個体でもランク7、最も高い個体はランク12」


 腹心達のざわめきは、より大きくなった。

「低くてもランク7だと……アンデッドの中でも上位ではないか!」

「しかも最も高い個体がランク12!? 個体によっては龍や邪神に匹敵する力を持つランクだぞ。

 今すぐ各冒険者、及び魔術師ギルドに通達を出さなければっ!」


「陛下! 至急宝物庫の奥に保管されている残りのネメシスと、魔王の装具を確認し、随時適任者に貸与して訓練をさせるべきです!」


「危機感を共有できたようだな」

 マシュクザールがそう言うと、はっとしてヒュペリ達は口を閉じて彼に注目する。

「だがまだ足りない。奴は境界山脈を【転移】によって自由に越える事が出来る。しかし、逆に我々が越える事は至難の業だ」

 相手は強力無比なアンデッドの軍勢を連れて自由に攻めて来られるのに、自分達は反撃もままならない。


 ヴァンダルーがその気になれば、帝国の都市や村にアンデッドの群れを送り付け、穀倉地に病毒を撒く事が可能だ。ミルグ盾国のバルチェブルグやその開拓地と同じ悲劇を幾らでも起こす事が出来る。

 それは御使いを砕く事が出来る事よりも、マシュクザール達にとっては驚異的だ。


 今までにない危機な状況に、腹心達はざわめく余裕すら無い。

「しかし、それとサウロン領を選王国にくれてやるのと何が関係するのですか、陛下? もしや、新たな魔王との戦いに選王国を巻き込むつもりですかな?」

 バンゲイン宮廷魔術師長が沈黙を破ってそう言うと、マシュクザールはその通りだと頷いた。


「ヴァンダルーがどう思っているかは不明だが、奴は確実に選王国とは合わない。

 事実、奴が裏で糸を引いていた『サウロン解放戦線』と選王国は連携できなかった」


「たしかに……密偵達の報告では、選王国の貴族共はサウロン公爵の遺児……主流派は次男、その次に大きい派閥は五男、そして末の三女は……脱落したのでしたな。

何にしても、彼等にとっては『サウロン解放戦線』は邪魔だったのでしょう」


 イリス率いる『サウロン解放戦線』には、貴族でも見捨てられた末の子弟や養子、庶子達が参加していた。彼女達が手柄を上げると、他の公爵領に脱出した貴族の本家にとっては外聞が悪く、援助している他の公爵家やそれに連なる貴族の旨味が大幅に減る。

 イリスやヴァンダルーは気がついていなかったが、『サウロン解放戦線』とオルバウム選王国との連携が上手く行かなかったのは、そんな泥臭い理由だった。


 今は亡きレイモンド・パリスが選王国と連携出来ていたのは、その泥臭い政治的交渉に成功したからだった。


 そしてオルバウム選王国と長年矛を交えて来たアミッド帝国の重鎮達は知っていた。あの国の内部がどれだけ腐っているか。二百年前タロスヘイムを見捨てたハートナー公爵領だけでは無い。腐敗は深い部分で進んでいる。

 今回分かったヴァンダルーの性格から考えて、とても上手くはいかないだろう。彼の母親の仇であると思われる、ハインツが国家的英雄となっている事を抜きに考えても。


「なるほど……その上でヴァンダルーを東西から挟み撃ちにするのですな?」

 そう問うヒュペリに、マシュクザールは「その時の状況次第だな」とだけ答えた。


(選王国が共通の敵が出現したぐらいで、我が帝国と手を取り合えるとは思えない。それに、ヴァンダルーも化け物ではあっても愚か者ではあるまい。今回ラグジュ男爵を引き入れた様に、選王国でも幾つかの味方を作る事だろう……狙ってやったにしては微妙な人選ではあるが。兎も角、選王国と全面戦争にはならんだろう)


 状況次第ではいっそ、和睦を申し入れるのが良いかもしれない。自分を含めた数名の首と莫大な賠償金、広大な領地と数十万の人員。これぐらいで帝国の存続が叶い、後世に力を残し再び繁栄を手にする可能性を残せるのなら御の字だ。

(しかし、流石にそれは周りが納得せぬか)

 皇帝という立場も難儀な物だと、マシュクザールはこの部屋に呼ばれていなかった軍務卿にサウロン領の放棄について打ち合わせる為、この秘密会議の終了を告げた。




 イリスは温もりの中で溶けていた。

 リッケルトが振るったネメシスベルによって負った傷の痛みも、苦しさも、五体も五感も全て消えた。

 致命傷による喪失ではなく、心地良い微睡みの中で曖昧に溶けたのだ。


 全てが溶けて意識だけが残った。だが、その瞬間から逆再生のように五感が、肉体の感覚が戻っていく。

『お前さんの状態は蛹と一緒だ。一度ドロドロに溶けて、そこから全身を再び作る。要は、生まれ変わりだな』

 聞き覚えの無い、しかしとても親しみを覚える声が聞こえる。


『蛹と違うのはかかる時間が短い事ぐらいだ。大体七日七晩。今夜、お前は生まれ変わる。儂の娘としてな』

 紅い膜の向こうに、大きな人影が見えた。イリスは、本能的に腕を伸ばしてその膜を内側から突く。

「っ!?」

 その途端膜は脆くも破れ、イリスは中に満ちていた赤黒い液体と共に流れ落ちた。


 冷たい床に落ちたイリスは、ゴボリと肺の中の液体を吐き出した。

「空気が、心地良いな……ゴドウィン殿」

 生まれ変わったイリスは、魔人王ゴドウィンを見上げて生まれ変わった後の第一声を発した。


「ハッハッハ! 生まれ変わってすぐ声を出せるとは、流石皇帝が儂に頼むだけはある。普通だったら口を利くどころかすぐ気を失うように眠りにつくところだぞ」

 ヴァンダルーに頼まれてイリスを魔人族に変異させたゴドウィンは、満足気に笑った。


「その折は、無茶を聞いていただき感謝している」

「硬いぞ、娘よ。儂の事は第二の父とでも思ってくれで構わんぞ。それにだ、七日七晩働く程度で済むなら御の字よ」

 ヴァンダルーがイリスをヴィダの新種族に変化させる儀式を頼み込んだ相手、それは魔人王ゴドウィンだった。


 突然現れて頼み込むヴァンダルーに、ゴドウィンは最初他種族を魔人族に変化させる儀式の実行を躊躇した。それはゴドウィン自身行った事の無い儀式であり、魔人国全体でも数千年以上行われていなかったからだ。

 しかし、「皇帝としてお願いします」と頼まれた瞬間「任せろ」と胸を拳で叩いて請け負ったのだった。……これで実績が出来て、自分は完全無欠に皇帝候補では無くなるからである。


「儂の事はそうさな……あっちが父上だから、パパ上とでも呼ぶか?」

「……是非、他の呼び方をしたいと思います」


 魔人族は、人間や他のヴィダの新種族の内魔物にルーツを持たない種族を同族へ変化させる事が出来る。そのための儀式には、幾つかの種類があった。

 その一つがゴドウィン達闘魔人ディアブロの行う血の繭だ。


 特別な魔術陣を描き、その中心に魔人族が聖杯と呼ぶ特殊な器を置き、そこに親となるディアブロが血を注ぐ。更に生贄……大量の魔力と生命力を血の形で捧げる。

 すると血で出来た繭のような物が出来上がる。そして繭の中に魔人族に変異する事を希望する者を入れると、七日七晩後に新たな魔人族として再生、誕生するのだ。


「そうか? まあ呼び方はどうでも良い。肝心なのは言葉に込められた親愛の情だからな。

兎も角、何度か言ったが儂もこの儀式を行うのは初めてでな。面倒だし痛いし生贄が大変だし、七日も繭の前であ~だこ~だと話しかけ続けなければならんし。だが、その甲斐あって結果は上々のようだ。上手く変異しているぞ」

 そう言いながらゴドウィンは娘と成ったイリスの角の先端から爪先までじっと見つめた。


 基本的な容姿は以前のイリスそのままだ。だが肌は青く、瞳は金色に変化している。側頭部からは捻じれた二本の角が、背中からは蝙蝠やドラゴンを連想させる皮膜の翼が、尾骶骨の辺りからは先端が逆三角形になっている尻尾が生えている。

 完全な女魔人族だ。


「レギオンの肉のせいか? 若干肉が増えた気がするが……繭の中に入る前は死にかけてやつれておったから、今と比べて痩せて見えただけかもしれん。

 まあ、立派な魔人族、淫魔人サキュバスの一員と成ったようだな。儂も皇帝に胸を張れるというものだ」


「……ゴドウィン殿、それは褒められているのだろうか?」

 生えたばかりの翼で身体を隠してイリスが顔を顰める。しかしゴドウィンは気にした様子も無い。儀式を行った副作用として、ゴドウィンはイリスに対して実の娘に近い感情を抱いているため異性として認識できないからだ。


「ん? 褒めたつもりだぞ、儂は。そもそも人種やエルフが魔人族に変異すると、巨人種のように大柄であるとか獣人種や竜人とのハーフであるとかでない限り、ほぼ確実に淫魔になるのだ」

 どうやら魔人族の儀式では、執り行うのが闘魔人なら子も闘魔人と化すという訳では無いようだ。

 生まれ変わる者の種族や体格のみが関係するらしい。


「まあ、別に気にするな。外の世界でどう言われているか知らんが、サキュバスだからと言ってそれらしくする必要はない。単に精気を吸ったり、異性に対してのみだが人種等の異種族そっくりに化ける事が出来たりする程度だ」

 そう言われたイリスだが、どうしても人間社会のサキュバスやインキュバスのイメージが拭えず、褒められているとは思えなかった。


「まあ、とりあえず服を着て外の皇帝や部下達に顔を見せて来ると良い。誕生祝いに魔人国の最新トレンドを用意させたぞ」

 そう言ってゴドウィンが指差す籠の中には、衣服が一通り揃えられている……らしい。


「あの……私には変わったデザインの下着しか入っていない様に見えますが?」

 籠の中には、ヴァンダルーやレギオンが見たら「水着か?」と思う様な物しか入っていなかった。

「ん? 下着以外も入っているだろうが。防具はちと早かろうと思ったので、まだないぞ」

「いえ、ですから服を……」

「いや、だから服だが」


 かみ合わないやり取りを経て、イリスははっと気がついた。この下着のような服が魔人国の最新トレンドなのだと。

 改めてゴドウィンを見てみると、彼が着ている服は網目の入っている膝下までの皮のパンツだけで、他につけているのは防具や装飾品の類だった。冷静に見ると、かなりの露出度である。


「……もう足手まといに成る事が無いように、どの種族に生まれ変わるかという問いに『出来るだけ強くなりたい』と答えたのは、早計だったろうか」

「いや、そんな今すぐもう一度死にそうな顔をせんでも良かろうに。別にこの服以外着てはならん訳では無いのだぞ。まあ、翼や尻尾の穴を空けんと成らんから、人種の時より一工夫必要だろうが。

 う~む、一昔前に流行った服の方が良かったか?」


 厳格な騎士の家庭で育ったイリスをゴドウィンはそう慰め、昔に流行ったデザインの服……露出度は低いが髑髏や眼球等の悪趣味な装飾がゴテゴテと過剰に付いた服を取りに行かせるのだった。




「グーリールー」

 魔人国の儀式場の外で、ヴァンダルーはブギータス肉を炭火で焼いていた。その額には、ピコピコと黒い二本の触角が揺れている。


「良い匂いでござるな~」

「ですねー。自然と触角が動きます」

「鼻じゃないの!? ヴァン君、君はもう触角が生えているのが普通なの!?」

「……ボスがすっかり人から蟲寄りに……」

「ギヂ?」

「ひぃっ! 文句がある訳じゃ無いです、ピートの旦那!」


 サウロン領でマルメ公爵とその他を誘拐し、見込みのある者達に亡命するか否かの勧誘を行った後、ヴァンダルー達はイリスの儀式が終わるこの日、再び魔人国を訪れていた。


 その中には『サウロン解放戦線』の内レジスタンスの古参メンバーやデビス、ハッジ達中心メンバーの内すぐに集まる事が出来た者達もいた。


 魔人族に変異したイリスは今までのようにレジスタンスのリーダーを続ける事は出来ない。オルバウム選王国でも魔人族は人として認められていない、それどころか魔物として討伐対象にされているからだ。

 だから表向き新しいリーダーを立てて、イリスはそれを裏から指揮する事に成る。ただ流石に末端にまで「実は魔人族がリーダーです」とは言えないので、信用できる者だけがレギオンに一時的に取り込まれる方法でこの場に連れて来られている。


 他にもプリベルやミューゼ、ギザニア、ザディリスなど、国の建て直しで忙しいブダリオン達以外のメンバーが集まっていた。

 イリスの新しい誕生祝い兼、決起集会の為である。


 鋏を持ったタレアが、瞳を爛々とさせて肉を焼いているヴァンダルーに声をかける。

「ヴァン様、もう一度お願いしますわ! 次は出来るだけ柔らかく、けど丈夫さは同じで!」

「はーい」

 その瞬間、ヴァンダルーの髪が爆発的に伸びた。しかしそれをタレアの鋏が元の長さになるまですぐに刈り取って行く。


「ウフフフ、何て柔らかい毛……もう髪の毛では無く柔毛ですわね。それでいて丈夫で衝撃や斬撃を防ぎ、耐火性も防御力も抜群……」

 やや変わったデザインだがドレスを着た縦ロールの女グールが、涎を垂らさんばかりに緩んだ顔で刈り取ったヴァンダルーの毛髪を抱きしめて頬ずりしている。その光景にハッジ達は引いた。

 タレアが美人で魅力的な体つきをしている事も忘れるほど、引いていた。


「ヴァン様、ヴァン様は出かける度に素敵になって私の元に帰ってきますのね。どれだけ私の事を魅了すれば気が済むのかしら?」

「素敵な素材という意味でしょう? タレア、旦那様をあまり疲れさせないように」

 そうベルモンドに注意されたタレアは、だらしなく緩んでいた口元に意地の悪い笑みを浮かべた。


「あら、言われなくても分かっていますわ、ベルモンド。これも全てヴァン様から頼まれた特製のブラシを作るために必要な物ですもの」

「ブ、ブラシですと!?」

 タレアの言葉と視線に、ベルモンドは反射的にお尻……では無く、腰から伸びる長いフサフサとした尻尾を押さえて後さずる。


 一振りすればアダマンタイトの鎧を纏った戦士も薙ぎ倒す彼女の尻尾は、何故かブラッシングの時は敏感になり、彼女はそれを弱点としていた。

 そんな場所を【魔王の体毛】製のブラシでブラッシングされたらどうなってしまうのか……考えただけでも恐ろしい。


「旦那様! 今すぐ考え直してください!」

「ん? ブラシはギザニア用ですよ」

「「……え?」」

 きょとんとするベルモンドと、いきなり自分の名前が会話に出て驚くギザニア。


「ギザニアの下半身の体毛が見た目より硬いので、普通のブラシだと直ぐダメになりそうですから特別製の物が必要だと思ってタレアに頼みました。

 でもベルモンドも欲しいみたいですし、考え直してもう一つ作りましょう」


「だ、旦那様ぁぁぁ!」

 悲痛な声を上げるベルモンドと、背後で「私、嘘は言っていませんわよ~!」と高笑いを上げるタレア。

「ヴァンダルー殿、拙者達アラクネの、それも大型種の下半身に生える刺激毛は硬いものと決まっているのだが……」

「まあまあ、何事もチャレンジです」


「ヴァン君、ボクにも構ってよ~!」

 プリベルが腕と触腕を同時に伸ばしてヴァンダルーを包んでしまう。触腕の隙間から腕だけを伸ばして肉を焼き続けるヴァンダルーに、ギザニアは説得を諦める事にした。


 その光景にハッジやデビス達男性陣は引き攣った笑みを浮かべて、やや距離を取った。ヴァンダルーが羨ましいとは、絶対に思わない。

 何故なら、自分達が巻き込まれたら骨の一本や二本は軽く折れるからだ。彼女達全員が【怪力】スキルの所有者で、特にギザニアやプリベルは下半身も含めるとかなりの重量級である。

 ヴァンダルーが無事なのが不思議なくらいだ。


「いっそ私達も魔人族になっちゃおうか?」

「ちょっと、新しい姫騎士候補がいなくなるじゃないのっ!」

「全くじゃ。軽はずみに言うでない」

 一方、焼きそばを焼きながらそんな冗談を言い合うレジスタンスの女性メンバーに、ザディリスが苦言を呈する。


「血の繭の儀式に必要な生贄に、坊やとレギオンがそれぞれ魔力と生命力を捧げたのじゃぞ。それに親に成る魔人族に七日七晩付き合わせなければならん。

 気軽に出来る儀式では無いのじゃぞ」

 見た目は自分達より年下のザディリスに叱られて、「は、はい」「ごめんなさい」としゅんとする女性陣。

「そう言うな、母さん。ヴァンとレギオンの負担はそれ程でもないから、深刻に感じなかったのだろう」

 バスディアがそう宥めるが、言ったのは口先だけの慰めでは無く事実だった。


 儀式の為にヴァンダルーとレギオンがそれぞれ提供した魔力と生命力。それは普通に購おうとすれば莫大な量だ。

 生贄には通常魔人族の戦士や魔術師が生け捕りにした魔物から必要な魔力と生命力を抽出するのだが、その為に必要な労力が数百人分はかかる。


 だが二人にとってそれぐらいなら大した負担では無い。特にヴァンダルーは「【死砲】を一度撃つよりずっと少なくて済みます」と言ったぐらいだ。

 レギオンは――。


『そうね、私達の分は気にしなくて良いわよ。すぐ直るし、リッケルトと戦った時に投げつけた肉片よりも少なくて済んだし』

 気軽にそう言いながら、フランクフルトを食べている。本当に大した負担では無いのだろう。


「まあ、そうじゃが――」

「おばあちゃん、お野菜とって~」

「おぉ、ジャダルは好き嫌いの無い良い子じゃの~」

 バスディアの娘で自分の孫であるジャダルにねだられた途端、ザディリスが険しい顔をデレデレと緩ませる。

 お説教を免れた二人は、ほっと息を吐いた。


「ところで、他のレギオンさんは?」

 大分レギオンに慣れたレジスタンスの女性メンバーにそう尋ねられたレギオンは、フランクフルトを食べてから答えた。


『全員ここにいるわよ』

『分離している訳じゃ無いんだ』

『【サイズ変更】スキルと、【形状変化】スキルで、分離しているように見えるけど』

『皆一緒に人種サイズの建物の中で行動するための練習よ』

『ブルルルルゥ!』


「……隣の人型のスライムさんは?」

『……何故か対抗意識を持たれているの』

『ライバルだな!』

 レギオンには負けないと、頑張って人型を保っているスライムのキュールだった。


「……これは、一体?」

 そこに生まれ変わったイリスが儀式場から出てきた。角や翼が生えたため身体のバランスが変わったせいで若干危なっかしいが、しっかり歩いている。

 因みに、衣服は結局一昔前に流行ったマント(背中が大きく開いた特殊なデザイン)を羽織り、中に露出度が高い今の流行の服を着る事で妥協したようだ。


 その変わり果てた姿を見てレジスタンスのメンバーは息を飲んだ。


「……皆、心配をかけてすまない。無事と言っていいか分からないが、魔人族に変異する事が出来た。

 だが姿はこの通り大きく変わった。もし私について行けないと言うのなら責めはしない。はっきりと――」


「いや、別にそこまでじゃないと思いますぜ、お嬢」

「まあ、確かに前より妙な色気がある気がしやすが、それぐへぶっ!?」

『相棒、お前は口が悪いなぁ』

「気にしないでリーダー! 私達は気にしないから!」


 大きく姿が変わった自分に、そう声をかけこれまで通り付いて行くと宣言するデビス達。ハッジが後頭部を剣の鞘で殴られたりしているが、そこに忌避感や拒絶は無い。

「皆、だが私は――」

「「「ボスやレギオンに比べたら、誤差みたいなもんです」」」

「……そうだな」


 尚も何か言おうとしたイリスだったが、皆の言葉に一気に納得した。


『随分な言われ様だね。まあ、自覚はあるけど』

「……まあ、魔人もレギオンも人間だし、良いですけど」

 レギオンは気にも留めていないが、ヴァンダルーの精神には地味にダメージが入ったようだ。プリベルの触腕の間から伸びた彼の手が、一瞬止まった。


「仕方ないわよ、ボス。触角を揺らしながらじゃ説得力が無いわ」

「……それもそうですね。あ、そうだ。プリベル、ちょっと放して」

 マイルズにそう慰められたヴァンダルーは、ブギータス肉を焼くのを止めてプリベルの触腕から這い出ると、徐に何処からともなく立派な鞘に収められた一振りの長剣を取り出した。


 その長剣を見て、イリスは息を飲んだ。

「ネメシスベル……!?」

 リッケルトが振るい、彼女に致命傷を与え魔人族に生まれ変わる原因を作った聖剣だ。


 世間一般では伝説の聖剣だが、イリスにとっては忌々しい凶器でしかない。そのはずなのだが、彼女は何故か剣に肉親に覚える様な愛おしさを感じた。

『イリスぅ……』

「その声は父上!?」

 それは、ネメシスベルに父ジョージ・ベアハルトが憑いているからだった。


「一体何故父上が聖剣に!?」

「ネメシスベルの中に宿っていた御使いを俺が食って、入れ物だけになった剣にジョージを宿らせました。元の剣は罅が入っていましたからね。

 普通なら特定の物に長く宿った霊を別の物に入れ直すのは難しいのですが、【冥導士】になったお蔭なのか、すんなりと成功しましたよ」


 ネメシスベルに宿っていた、恐らく英雄神ベルウッドの御使いはあっさり喰えた。恐らく、御使いとしては下級の部類だったのだろう。その分味気なく、特に能力値やスキルのレベルが上がる事も無かったのは残念だったが。

 やはり御使い程度ではダメなのかもしれない。


(あの程度の御使いしか宿っていないという事は、もしかしてこの聖剣って粗悪品か、量産品なのかもしれませんね。同じアーティファクトでも呪いの氷を精製できたアイスエイジと比べるとしょぼいですし。

 まあ、それは兎も角……)


「新しい名前は、冥魔剣ネメシスジョージとしましょうか。どうぞ」

 新しい銘と共に差し出された父ジョージの宿る剣を、イリスは受け取るとギュッと抱きしめた。

「父上! ……ヴァンダルー殿、いや、陛下! ありがとうございます!」

 イリスの瞳から涙の滴がネメシスジョージの柄に零れる。その滴の色は、瞳の色が変わっても人種の頃と同じように澄んでいた。


「姫騎士の完全復活だ!」

「お嬢、ジョージ様、おめでとうございやす!」

「がはは! めでたい、めでたい! ところで酒はまだか?」

 レジスタンスのメンバーを中心に歓声が上がる。何食わぬ顔で混ざっているゴドウィンが促したようなタイミングで、酒や料理を乗せたワゴンをパウヴィナとラピエサージュ、ヤマタが押してやって来る。


「みんなケーキだよ~!」

『だよう……』

『『『たんじょうびおめでとう~♪』』』

 パウヴィナが一番上にケーキの乗った巨大ワゴンを推し、その後ろにラピエサージュと九人のラミアの美女……では無く、【遠隔操作】スキルで分離したヤマタの上半身達が続く。


 イリスの新しい誕生日を祝う宴が本格的に始まり、ご馳走が配られ皆が舌鼓を打つ。明日からは再びサウロン領奪還のための戦いが始まるので、その英気を養う意味もある。

 それが分かっているので、皆大いに食べ、飲み、騒いだ。……レジスタンス活動と関係の無い魔人国の住人が何時の間にかちらほらと混じっていたりするが。


 数千年ぶりの儀式で誕生した現国王ゴドウィンの娘を見に来て、そのまま宴のご馳走に惹かれて参加してしまうようだ。


「これは料理を追加した方が良いかな?」

「それも重要かもしれませんが、陛下……ラグジュ男爵一家はどうなりました?」

 宴の合間にレジスタンスへの協力者であったクオーコ・ラグジュとその家族の姿が無い事に気がついたイリスが、ヴァンダルーにそう尋ねる。彼は重要な内通者であったし、自分が亡命を仲介した手前彼がどうなったのか気になっていたようだ。


「クオーコ一家ですか……イリス、後で彼等に注意しておいてください」

「っ!? か、彼等が何かとんでもない事をしたのですか!?」

「タロスヘイムに移住後、カルガモの雛が親鳥にするようにアイゼンの後ろにくっついて回っているのです。……一家揃って」


 クオーコには、イリスが植物の魔物エントから精製したエントシロップだと偽って、アイゼンの樹液から精製した特別なシロップを内通の報酬として渡していた。その結果彼等は芳醇な香りと濃厚な甘みのシロップに魅了されていたのだ。


「どうも匂いでアイゼンがシロップの原料を提供していると気がついてからは、時間を見つける度にアイゼンにくっついています」

「……ご家族で、ですか」

「はい、家族で。特に、奥さんの方が頻繁に」


 今頃タロスヘイムのイモータルエントの森に居るアイゼンの後ろを、クオーコ家族がついて行っている事だろう。


『ああ、良い香りだ。そうは思わないか、ハニー?』

『ええ、本当に。何時までもこうしていたいものね、あなた』

『辛抱堪りませんわぁ~』

『キャッキャ♪』

『飲んだらお帰りよぉぉ』


 一家四人でアイゼンの後ろを付けて歩き、仕方なくアイゼンが樹液を飲ませて帰らせる。そんな光景を思い浮かべたイリスは眩暈を覚えた。


「まあ、とりあえず最近は落ち着いてきましたが。上司になったクルトがタロスヘイムの美味しい物を次から次に食べさせて、食の興味を分散させる事で」

 ようやく文官としても使える元貴族の新人が入って来たと思ったら、一家そろって食道楽……グルメ狂いだった事を知ったクルトは頭を抱えたそうな。


「……何と言っていいか。申し訳ない。クルト殿には必ずお詫びに参ります」

 反アミッド帝国のレジスタンスリーダーが、帝国の属国であるミルグ盾国の元貴族に詫びる。ある意味記念すべき融和への一歩かもしれない。


「ですが、もう一つ。ボークス殿やミハエル殿達は?」

「アイラと一緒に、イリス達がいない間レジスタンスのアジトを守っています」

「そうでしたか。彼等が守っていてくれるのなら安心です」


 因みに、この頃既にマルメ公爵救援の為に出陣した一部のマルメ公爵軍は、アジトを守るアンデッドの面々の経験値になっていた。


「それは兎も角、イリスもどうぞ。美味しいですよ、悪神をその身に降臨させたノーブルオークの焼肉」

「凄い由来の肉ですね……頂きます」

 切り分けられた肉を勧められるまま食べたイリスは、その美味しさに目を見張った。


 口に含んだだけで豊かな香りが鼻腔を満たし、噛む毎に柔らかい肉から甘みのある油を含んだ肉汁が溢れる。だが舌の上で溶けるような事は無く、肉としての存在感を主張し続ける。

 柔らかさを保ったまま、ギュッと凝縮させたような肉だった。


「これは……美味しい。辛みのあるソースとの相性も良くて……以前頂いたノーブルオークの肉も美味しかったけれど、これは比べ物にならない。同じ種族でも、悪神が降臨するとこんなにも変わるのか」

「気に入って貰えてよかったです。貴女には早く精を付けて貰わないと困りますからね」

「はい、訓練ですね」


 魔人族に変化した事でイリスの能力値は大幅に上昇した。翼を得た事で、空を飛ぶ事も出来るようになった。

 父ジョージも、オリハルコンの剣となった事で武器として魔王の欠片製の武具と並ぶ性能を持つようになった。

 しかし、それらを自在に扱えるようにならなければならない。そうでなければ再び『光速剣』のリッケルトの様な使い手に後れを取ってしまう。


『強くなるのだ、イリス……』

 新しい剣から響き、同じ父の声にイリスは決意を込めて頷いた。

「はい、父上。再び『邪砕十五剣』と相対しても、不覚は取りません」

『いや、それだけでは無いのだ、イリス……早急に強くなるのだ。出来れば、来年までに』


「ら、来年までですか!? 何故期限を切るのです、父上!」

「それはね、ヴァン君が『ザッカートの試練』に来年挑戦するからだよ」

 戸惑うイリスにイカ焼きを食べ終わったプリベルがそう教える。


「イリス殿は知らないのでござるか?」

「彼女は本来サウロン領で活動し続けるはずだったからな。まだ聞いていなかったのだろう」

 ミューゼとバスディアが何事かとやって来た。


「それで、挑戦するヴァンダルーに付いて行くために技量が足りない者は来年までに鍛えようという話らしい。我はもう大丈夫だが」

 それまで女性陣の会話に一切関わらず無心に肉を焼いて食っていたヴィガロが、そう説明した。


「ざ、『ザッカートの試練』……A級冒険者でも一度はいれば生きては帰れないというあのダンジョンに、陛下が……いや、確かに興味が無いわけではありませんが、私の力では足手まといにしかなりません」

 ヴァンダルーに会ってカースウェポン化した父を授けられ、新ジョブ【呪霊剣士】に就き、イリスは自分の力量が大分上がった事を実感している。


 しかしA級冒険者相当のリッケルトに惨敗し、命を失いかけたばかりだ。そのリッケルト相当の力量の者でも入れば命を落とすダンジョンに、自分の力が通用するとはとても思えない。姫騎士どころか、昔の英雄伝承歌に出てくるお姫様のように英雄に助けられるだけの女と化す事が目に見えている。


『強くなるのだ、イリス……』

「父上っ! 私には無理です! 来年までにはとても無理です!」

「まあ、何とかなるだろう。ほれ、儂の娘でもあるし。因みに儂、多分三分の二ぐらいまで攻略したぞ」

「大丈夫、一緒に頑張ろう!」

「もし力及ばずダメだったとしても、結果に向けて努力する事は尊いぞ」

「ギザニア殿、微妙に後ろ向きでござるぞ」


 常識的に考えて無理というイリスを、励ます一同。


 この宴が自分の誕生祝であると同時に、『ザッカートの試練』へ向けての決起集会である事を知ったイリスだった。


「ところで追加の肉が焼けましたよー」




《【魔王の再来】、【怪物】の二つ名が解除されました!》




「おぉ?」

 その時、不意に響いた脳内アナウンスによって、悪い印象の二つ名が解除された事を知ったヴァンダルーは目を瞬かせた。




《【魔王】の二つ名を獲得しました!》




「……おー」

 そして続いたアナウンスを聞いて、やっぱりそうなるのかと、肩を落としたのだった。




・名前:イリス・ベアハルト

・種族:淫魔人サキュバス(人種から変異!)

・年齢:19歳

・二つ名:【解放の姫騎士】

・ランク:6

・レベル:0

・ジョブ:呪霊剣士

・レベル:100

・ジョブ履歴:騎士見習い、従騎士、戦士、剣士



・パッシブスキル

剣装備時攻撃力強化:小

能力値強化:忠誠:2Lv(UP!)

敏捷強化:3Lv(UP!)

従属強化:2Lv(UP!)

呪霊剣装備時攻撃力強化:小

闇視(NEW!)

色香:1Lv(NEW!)

精力絶倫:1Lv(NEW!)

魔力増大:1Lv(NEW!)

生命力強化:1Lv(NEW!)


・アクティブスキル

剣術:5Lv

盾術:1Lv

鎧術:3Lv

弓術:3Lv

騎乗:1Lv

家事:1Lv

忍び足:3Lv

連携:4Lv

限界突破:2Lv(UP!)

呪霊剣限界突破:2Lv(UP!)

指揮:1Lv(NEW!)

幻影変身:1Lv(NEW!)

精気吸収:1Lv(NEW!)




 サキュバスと化した事でサキュバスが生来持っているスキルを獲得したイリス・ベアハルト。ただし未熟で、同じ年頃のサキュバスと比べるとレベルは大分劣る。また、【高速飛行】等習熟が必要なスキルはまだ習得できていない。


 因みに、【魔力増大】と【生命力強化】は儀式に魔力と生命力をそれぞれ提供したヴァンダルーとレギオンの影響で獲得する事が出来た。


 ジョブのレベルがリッケルト達との戦闘で(イリス自身は一方的にやられただけだが、その後ヴァンダルー達が倒したので彼女にも経験値が入った)100になったが、瀕死の重傷を負っていた為まだジョブチェンジはしていない。




・名前:レギオン

・年齢:0

・二つ名:【聖肉婦】(NEW!)

・ランク:8(UP!)

・種族:グレートレギオン

・レベル:0

・ジョブ:操肉士

・ジョブレベル:0

・ジョブ履歴:見習い魔術師、魔術師、見習い戦士、戦士、肉弾士、巨肉弾士、無属性魔術師


・パッシブスキル

精神汚染:7Lv

複合魂

魔術耐性:4Lv(UP!)

特殊五感

物理攻撃耐性:6Lv(UP!)

形状変化:4Lv(UP!)

超速再生:4Lv(UP!)

怪力:5Lv(NEW!)

魔力増大:2Lv(UP!)

生命力強化:10Lv(UP!)

能力値強化:食肉:4Lv(UP!)

炎雷耐性:4Lv(NEW!)


・アクティブスキル

限定的死属性魔術:10Lv

サイズ変更:5Lv(UP!)

指揮:3Lv

手術:6Lv(UP!)

格闘術:7Lv(UP!)

短剣術:4Lv(UP!)

融合:2Lv

突撃:6Lv(UP!)

詠唱破棄:3Lv(UP!)

並列思考:6Lv(UP!)

遠隔操作:4Lv(UP!)

無属性魔術:4Lv(UP!)

魔術制御:5Lv(UP!)

限界突破:2Lv(UP!)

高速走行:3Lv(UP!)

再生力強化:食肉:3Lv

投擲術:2Lv(NEW!)

料理:1Lv(NEW!)



・ユニークスキル

オリジンの神の加護

ズルワーンの加護

リクレントの加護

ゲイザー:5Lv

侵食融合:1Lv(NEW!)




 弛まぬ努力によりランク7にランクアップ後、リッケルトを倒した事でランク8にランクアップしたレギオン。

 ただリッケルト戦で得た経験値で一気にレベルが上がったため、魔術の制御等を学ぶために【無属性魔術師】に就いたのに、技能が上がる前に次のジョブチェンジを迎えてしまった。

 ジョブのスキル補正はジョブチェンジ後も有効なので構わないが、少し急ぎ過ぎたような気分になっている。




・ジョブ解説:操肉士


 自身の身体を構成する肉を操作する事が出来るジョブ。【形状変化】や【サイズ変更】、更に自身の肉を千切って投げた後も操作する【遠隔操作】スキルの習熟にも補正を得る事が出来る。また【料理】スキル、特に肉料理を作る際に補正を得る事が出来る。


 更にレギオンの場合は、イシスの手術、ワルキューレの指揮、イザナミの力である肉片のヨモツシコメ、ヨモツイクサ化、ベルセルクの寄生等にも補正がかかる。


 ジョブに就く条件は、肉体の九割九分以上が肉である事。【遠隔操作】スキルを身につけている事。

拙作「四度目は嫌な死属性魔術師」の発売日が12月15日に決定しました!


もし書店で見かけましたら手にとって頂けると幸いです。


11月17日にキャラクター紹介、21日に閑章 種族紹介、25日にルチリアーノレポート2 29日に八章開始 154話を投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
条件限定過ぎて、二度と手に入らないレアお肉だな・・・バラ肉しゃぶしゃぶにしたい
……おー
勇者の次は魔王になってと、忙しいねぇヴァンダルー君は。
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