第四十四話・在庫調整、出荷調整、自主回収、販売中止の嵐について
二つだけ単語解説します。
先発 ⇒ その薬を一番最初に開発して販売した会社の薬。特許を持っている。
ジェネリック薬品 ⇒ 別名、後発。文字通り、先発の特許が切れたあとに発売されるもの。薬価が安いので、国が先発からジェネリックに切り替えろと推進しています。
一応、同じ有効成分・品質・効き目・安全性が同等なはずだが、それを裏切る事件がおきました。
以前にも別のところで書いたが、現代の薬剤師は、薬をイチから創りません。大昔は薬師といって自前の薬草園で採れた薬草や根を乾燥して保存した。それらを調合したり、煎じて患者に渡すのはあった。今の薬剤師はしない。仮に薬草園を経営しても新規でやるなら、すぐに安定供給ができるわけないし、食べていけないのではないか。
このたび以下の患者さまが増えています。
① ジェネリックから強制的に先発に戻された患者さま
② ジェネリック薬品のままだが、強制的に別会社のものに変えられた患者さま
……該当する方々からご意見や質問をいただくので、患者外の人にもわかりやすく薬局が今どういう状況にあるかを書いてみました。
以上で長ったらしい前置が終わります。
さて去年の事件を覚えておられるでしょうか。ジェネリック薬に睡眠薬が混入していたあの事件。これを書いている現在は令和三年九月。露見してからまだ一年もたってないが、影響が薬局に出ています。全国的な現象です。つまりあの事件から雪崩をうつようにジェネリック医薬品業界が変わりました。余波は計り知れないぐらいの損失がでています。今回はこの話。
調剤薬局は医療側から渡す医薬品の最後の砦だと思っているが、根幹にある製薬工場から医薬品ならぬ異薬品が出てしまった。査察が入り、そこから製薬に関する体制の甘さが明らかになった。
私は医療業界の最末端にいるので、意見する側ではないが、昨今のジェネリック医薬品の在庫調整、出荷調整、自主回収、販売中止の嵐に戸惑いを隠せない。
しかもこの件数が増えている。言い換えれば、今までのチェック機能が甘かったということで、迷惑するのは患者だけ。不特定大多数の人間が利用するものではないので、大きなニュースにならないだけ。
……薬が必要な時に必要量を薬局が提供できない。できても、前のと違うメーカーでの提供になったりする。ジェネリックをあれだけすすめておいたものの、それが提供できなくなって先発のものに戻したものもある。
供給が不安定なため、ジェネリックのメーカー違いを交互に使う、ヒートはないがバラ錠なら在庫がある時は、分包といって一回分ずつ包装を分けたものを交付、なんてこともある。
メーカーが変わると包装品も医薬品本体の見た目も味も違ってくる。そのため患者からクレームがつく。でも仕方がない。卸が提供できないといってきたら、薬局も患者に薬の提供ができない。薬剤師は調剤できない。もちろん創れない。
私を含めた薬剤師は、代替品、類似品を前に、不安がる患者に言葉を尽くして安心してお飲みいただくようにお願いします。
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以下は薬事ニュースより抜粋。事件発生当時に書いたエッセイでは社名を隠していましたが、普通に新聞やテレビのニュースに出ていますので明記します。
……令和二年に発覚した小林化工並びに日医工の法令違反に対して業務停止処分等の行政処分が実施された。小林化工は業務停止処分期間が終了したものの、これを書いている令和三年九月の時点では未だ業務再開していない。
日医工は五月には一部製品の出荷を再開したものの、二百十七品目が供給遅延となっている。小林化工、日医工の出荷停止は、ジェネリック医薬品全体の安定供給に大きな影響をもたらし、市場全体で供給不足となっている。
以下は現在の状況です。
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⇒ そのあおりをくって、ジェネリック大手の東和薬品、沢井製薬に注文が殺到して新規契約が困難になった。
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⇒ ジェネリック医薬品使用の混乱が広がった。ちなみに両社の出荷調整品目数をみると、沢井製薬が三百六十九品目、東和薬品が二百五十三品目。多分もっと増えていくでしょう。
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⇒ おまけのコロナ禍もあって、海外からの原材料の入手も困難になった。
日医工もまたジェネリック薬品の大手ですが、その分頼りにしていました。でも今はひどいのなんのって。あれもない、これもないという状態。
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製薬企業は臨床現場での使用量を予測しながら製造計画を立てており、急激な需要増に対応できるだけの在庫を準備しているわけではない。特に特許切れ市場( ⇒ ジェネリック薬品市場)では、複数企業が製造するため、市場全体での製造量の最適化を図ることが困難である。
そのため、特定企業がなんらかの原因で供給停止になると、市場全体で供給不足に陥る。ビリヤードみたいなことが、薬業界に起きるわけです。
」」」
……私が愚痴を言っても事態が改善するわけでもない。患者にとって、これでないといけない薬品が出荷調整で入手できない。となれば類似薬を出すことになるが、切り替えるにあたってスムーズにうつれるように、交付する。
ただし基礎疾患や特定のアレルギーがあると類似薬によっては服薬不可なものもある。(←←← 非常に大事)そのあたりは薬剤師としては細心の注意を払わないといけない。
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ここからが私の言いたいこと。
交付される患者側も今や薬手帳持参は必須です。薬手帳拒否しますという患者は一定数いますが、無理強いはしません。でも私は常時薬を飲む人は全員面倒くさいという段階を越えて身を守るためにも携帯すべきだと思います。
以下は薬手帳作成拒否のみなさんの理由一覧です。
持ってくるのが面倒だと断ったAさん、いいから作ろう。(スマホのある人なら電子薬手帳をすすめる。老人の場合はとにかく笑顔で押しまくる)
いつも忘れてくるBさん、いいから持って来て。併用薬見せて。
よその調剤薬局でもらう薬を見られるのが嫌なCさん、よその調剤薬局に嫉妬しないから見せて。
家族や勤務先に内緒で治療しているため、手帳を落としたりして通院がばれるのが心配なDさん、薬を飲むのは恥ずかしいことじゃないから作ろう。
無理強いできないから、どうしても嫌な人はそのままですが、合併症がある人、違う科にまたがって通院している人は命を守るために作るべきだと思います。
この話のオチはただ一言です。
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薬手帳は、作ってください!!!




