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第三十六話・妊娠中です、もしくは、妊娠しているかもしれません



 妊娠しているかもしれませんが、この薬を飲み続けても大丈夫でしょうか。と聞かれることも多いです。妊娠中です、と言う人も多い。どっちも薬を出す側にしたら気遣いするのは、一緒ですので一緒くたに書いてみます。

 医師にはもう言いましたかと聞くと結構「もう言いました」 と言う人も多い。その場合は医師は妊娠中でも飲み続けていいって言ったけど、薬剤師にも念を入れて聞いておこうと思っている。薬に対して不安があるのは共通しています。今回はそれぞれの対応を書いてみます。


 女性にとって妊娠と出産は人生の大きなイベントです。不安感と期待感で約十か月の妊娠生活のあと、命を懸けて出産するといっても過言ではない。持病を持ちながらも子どもを産みたいと願う女性は多い。

 どの薬でも副作用はありますので、妊娠中でも絶対に大丈夫とは言い切れません。医療に絶対はない。その上での話です。患者によっては安心感が必要です。正確に誠実に、治療に向き合ってほしい。以下分類します。


① 医師がOKだして、かつ、薬の添付文書中でも妊娠中でもOKと明記していれば、OKといいます。薬剤師としては一番楽なパターン。

② 医師はOKだしてるけど、添付文書では妊娠中は要注意となっている場合は、医師に念のため再確認をしたうえで、改めてOKが出たら患者に飲むように言います。胎児に与える影響と期待する作用を天秤にかけたうえでの判断です。

③ 医師はOKだしてるけど、妊娠中は禁忌きんきとなっている場合もあります。禁忌というのは絶対だめという意味です。

 これが出たら医師と協議します。そのうえで「やっぱりやめておく」 こともある。「これでいく」 場合もある。どちらもメリット、デメリットはある。

 絶対禁忌の場合は、医師の方から患者が出産を望んでも避妊するように説得します。そこまでして飲んでいただく薬は命にかかわるからです。妊娠してしまったら入院させ堕胎処置をする。母体第一だから。そのうえで処方薬を飲ませるときもあります。メンタル面での細やかなサポートが必要です。

④ 番外編:: 飲みますけど、万一(子供に)なにかあったら対処してくれますかと言う人もいます。念押しする人もいます。私の場合は患者でなくご家族が言ってきました。出産時になにかあったら騒いでお前のせいだと弁償させられるのかなあと思います。医療者に嫌がられる患者(家族)ですが、患者の身体のことを考えるように言います。私は本人と直接話してメリットとデメリットを教え、そのうえで飲むように言いました。診察に来た上は、治りたくて来たと判断するからです。

 心配のあまりだと思いますが、なにかあったら責任を取れよという家族は、本人のことを考えているようでも自分勝手すぎです。こういう人たちがいるので、治療前、特に外科治療や麻酔を使う場合は、承諾書にサインや印鑑が必要になった。万一の裁判前提です。泥棒除けにセキュリティ技術は発達したように裁判除け風評被害よけに、こうなった。今は電子サインとカメラに移行しつつあります。ちょっと何か不快な経験をしたらそれをお金にする悪い人たちがいるからこそ、ここまで厳重になりました。

 もちろん、治療の意図に反して副作用など健康被害が出た場合は、医療者側も真摯な対応をするのはいうまでもないです。


ーーーーー


 妊娠の継続、出産には仮に疾病がなくとも母体に不安とリスクがあります。出来るだけその不安を取り除いて治療に臨んでいただくのも仕事の一つです。薬局に寄っていただく以上は薬物療法をされているということでもありますので。また薬剤師は最後の砦です。時には患者の側に立って、専門的な知識を介して処方医と協議ができる最後の人物でもありますので。




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