守護霊
職安通りのはずれに有名な霊能力者の道場があって、占いもよくするという。なんでも人の守護霊が視えるらしく、一時期ワイドショーでも取りあげられ話題になった。
というわけでオカルト好きのおれとしては、さっそく霊視してもらいに行ってみたのだが……。
「視える。あんたの守護霊がはっきりと視えるぞよ」
霊能者の先生は、おれと向かい合うなりそう言ってうなずいた。
ちなみに、たばこ屋の店番でもしてそうな普通のお婆ちゃん。
「おそらく三親等以内の血縁者じゃろう」
三親等というと叔父や叔母、あるいは曾祖父母まで含まれるが、いったい誰だろう? おれは少しワクワクしてきた。
「それは、どんな人ですか?」
霊能者は、なぜだか目をそらして言った。
「ふむ、ちょっと分からん」
「男性ですか、それとも女性?」
「はてさて、男かのう、女かのう……」
「もしかして性別が分からないほど高齢とか?」
「いや、それほどでもないと思うが……」
どうも歯切れが悪い。ついにおれはイラっときて声を荒げた。
「どうしてそう曖昧な返事ばかりするのですか? 先生には見えているのでしょう、ここにいる守護霊の姿が」
すると霊能者は、おれの目をのぞき込んでニターっと笑った。
「いやじつはな、全身黒こげなんじゃよ、あんたについてる霊というのが」
「え……」
おれ絶句。黒こげって……そんな。Tシャツからのぞく二の腕にふつふつと鳥肌が立った。
霊能者が目を細めておれの背後を見る。
「この皮膚の焼けかたを見るとおそらく火事ではないのう。たぶん灯油をかぶっての焼身自殺かなにかじゃろ」
あ、すいません。それ、心当たりあります――。




