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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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鬼嫁

 結婚してわかったことだが、うちの嫁は鬼であった。冷酷非道な女という意味ではない。鬼の起源とされる、ある種族の末裔なのである。もちろんあたまにツノが生えているとか、指さきから電撃を発するなんてことはない。れっきとした人間である。

 嫁の祖先は方相氏を名乗っていた。

 方相氏は、宮廷内で皇族の葬送儀礼にたずさわる役人であった。一時は葬司として権勢を誇ったが、死というものに深く関わりすぎたため、次第に人々から恐れられ蔑まれていった。清和天皇のころには大儺という疫鬼追放の祭祀において、弓や太鼓で追い立てられる役割を担わされた。これが追儺の鬼の始まりである。

 人々から忌避されることにより、方相氏では独自の家風が培われてきた。嫁の実家では今でも節分のとき「鬼は内」と唱えるそうである。また陰陽道と深く結びつくことによって、彼らは代々不思議な力を得てきた。

 嫁には予知能力がある。

 たとえば天気予報が快晴であっても、彼女が傘を持っていけと言えばかならず雨が降った。今年はどこそこの地方へは行くなと忠告すれば、本当にその年のうちに大災害が起きた。戦争があると予言すれば、たとえ地球の裏側であってもその通りになる。

 嫁とは社内恋愛の果てに結ばれたが、おれと初めて顔を合わせた瞬間、彼女には「このひとと夫婦になる」とわかってしまったそうである。

 美人で気立ての優しい嫁なのだが、ときどき氷のように冷たい目をすることがある。

 じつは最近、酔った勢いで総務の女の子と関係を持ってしまったが、とても隠し通せる気がしない。

 土下座して謝れば、命だけは助けてもらえるだろうか。


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