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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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録音データ

 おれの趣味はブログに野鳥の写真を掲載することで、ときには鳴き声を録音してアップロードしたりもする。

 これは去年の夏、友人とふたりで富士山のふもとまで野鳥の観察をしに行ったときのはなし。

 精進口から青木ヶ原の樹海へと入り、遊歩道から少し外れたところでこっそりキャンプをした。

 オオルリやサンコウチョウなどの珍しい写真が撮れ、おれたちは上機嫌だった。さらに途中でフクロウの営巣木をみつけたので、PCMレコーダーを仕込んでおいた。

 その後テントで一泊し、翌朝コーヒーを飲みながら回収したレコーダーの音声をチェックしていると、録音開始から十時間くらいしてハイカーらしき男女の話し声が割り込んでいることに気づいた。

〈おい、コレなんか録音してるぞ〉

〈ホントだ〉

〈アー、アー、聞こえますかー〉

〈やめなさいよ、持ち主に叱られるわよ〉

 クスクスという女の笑い声。

〈えー、それじゃ森進一のモノマネをやりまーす。――おふくろさんよォー〉

〈だから、やめなさいってば、ほんとバカなんだからァ〉

 爆笑。

 その後三分ほど彼らはレコーダーにいたずらをし、やがて気がすんだのかその場から去っていった。

 おれと友人は顔を見合わせた。

 録音を始めたのは午後三時ごろ。それから十時間後の音声だ。しかもグランドノイズを回避するため、レコーダーは木の幹にぶり縄で足場をつくり高い枝のうえに設置している。

 どうやらその辺りの森では、深夜一時すぎに、地上五メートルのところをハイカーたちが闊歩しているらしい。

 五合目まで登るつもりでいたのを予定を切りあげ、おれたちは早々にテントをたたんで帰路についた。



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