第二十三話
301話からも頑張ります!
「それは贅沢なことだな。オレは今でも、もっと強くなりたいと思っているのに――」
「あれだけの実力があるのにか?」
ナダはおどけたように言った。
「ああ、そうだ。足りないんだ。このソールでやっていくのには、オレの実力じゃあ足りない。まだ深層に潜るのにも手こずっているオレの実力じゃあ、とてもじゃないが、ソールの攻略なんて夢のまた夢さ――」
「俺はそうとは思わないがな――」
「それは学生時代を買いかぶりすぎだな」
コルヴォは苦笑いをする。
「そうか?」
「ああ、そうだ。オレはナダの強さが羨ましいよ」
「アビリティも、ギフトもない俺の強さがか?」
「それでもナダはガーゴイルを、類まれなはぐれを倒したじゃないか?」
「それはそうだが――」
「ナダ、知っているか? オレやイリス達は、ナダが学園を去った後に、同じように四大迷宮に挑戦させてくれ、と学園長に頼んだんだ。そうすると、学園長は、オレ達に条件を突き付けた。それが、ガーゴイルのような強さのはぐれのソロでの討伐だったんだよ。結局、在学中は誰も達成できなかった」
「なるほどな――」
ナダは同じ話を以前にオウロから聞いていた。
オウロは当時、すぐに四大迷宮に挑戦することを望んでいなかったからはぐれに無理に挑戦することはなかったが、イリスやコルヴォ達は何度も挑戦していたが、一人も達成できなかったようだ。
それをもう一度、コルヴォの口からナダは聞くこととなった。
「ナダ、オレはあの時にお前が俺よりも強い、と。本当の意味で思い知ったよ。オレは挑戦することすら、いや、もしかしたらきっとこの場にいないだろうからな――」
コルヴォは悲しそうな顔でワインを飲んだ。
挫折を感じたのだろうか。ソロと言う、無謀な冒険に。はぐれを仲間達無しで倒すという事に。
「そうでもないと思うがな。特にコルヴォの強さは、俺もよく知っているぞ――」
だが、ナダはそんなコルヴォの言葉を否定した。
ナダにとって“強さ”とは流動的な物だ。絶対的なものではない。ナダは自分の事を強いと自負しているが、あくまでそれは武器を使ってモンスターを倒すときの実力だけだ。
例えば、以前に行ったマゴスの冒険では、ナダ一人の強さではとてもじゃないが完全攻略は不可能だった。違うベクトルを持つ強さを持つ仲間達がいて、初めて完全攻略が出来たのである。
例えば、シィナの持つ水のギフトだ。彼女の持つギフトの力によって、ナダは水の中でも溺れずに活動で来た。他の水のギフトの使い手なら、彼女のように多重にギフトを展開して冒険をサポートすることは不可能だと思うのだ。
「そうか? オレは今日の冒険を聞いても、やはりナダの方が強いと思っている。あまり活躍しなかったらしいが、ナダはまだ慣れた武器じゃないだろう? もっと自分に合った武器を使えば、深層だって簡単に攻略できるはずだ」
「そうなればいいな――」
ナダの本心だった。
「ナダ、やはりお前はオレよりも上だよ。あの日、七人で学園で最も強い冒険者を決めた時からな――」
コルヴォは昔を懐かしみながら言う。
「…強さの基準なんて、時と場合によって変わるから、俺にとってはどうでもいいがな」
ナダは強さを人と比べる事はなかった。意味がないからだ。自分がどれだけ強くても、マゴスという迷宮には通じなかった。
自惚れていた、と言ってもいい。
自分とは違う強さを持つ仲間がいなければ、深層に挑戦することすら叶わなかった。多くのモンスターに蹂躙され、殺されそうになったのである。
ナダ自身としては、あの時と、いや学園にいた時と今の強さはそう変わらない。少しは利口になったかもしれないが、あくまで自分はあの時のままだ。どれだけ迷宮を攻略しようと、どんな敵を屠ろうと、ましてや英雄になろうと、ナダがアビリティやギフトに目覚める様子はない。
――新たな力を、手に入れる事はなかった。
今の自分はあくまで過去の延長線なのである。
冒険者になった時から勉強し、体を鍛え、剣を必死に振るってこの強さまで辿り着いた。もしも辿り着いていないなら、と考えると、ナダの答えは一つだった。
きっと死んでいた、という悲しい結末が待っていただけだろうだとナダは思う。
ガーゴイルに再戦できずにどこかで野垂れ死んでいた、竜の体内で脱出できずにくたばっていた、その他にも死んでいるような場面は数多くある。
なんせ冒険者とは死と隣り合わせなのだから、同級生でもナダの知らない学生が多く死んでいるのだから。
そう思うと死んでいないだけ悪運が強いのかも知れない、とナダは自嘲した。
「それは随分な見方だな――」
「俺はコルヴォの持つアビリティのほうが羨ましいよ。あれほどのアビリティがもしも俺にあれば、もっと変わったかも知れないからな――」
「そうなれば、そこまでの強さになっていないからかもしれないぞ。ナダの強さは、愚直に鍛えた結果じゃないのか? アビリティがあれば、アビリティありきの冒険者になってしまう。それこそ、そこいらの冒険者と大差がない――」
「その方がよかったかもしれねえんだ――」
ナダは曖昧に嗤った。
そんな人生であればもっと順風満帆に冒険し、英雄病にならず、今もどこかで日銭を稼いでいたかもしれないのだ。ナダはあまり上を望まない。トップの冒険者にも、ランキングに乗るようなランカ―にも、英雄にも興味などなかった。そんな人生なら、一生を慣れた迷宮都市インフェルノで過ごしていたかも知れないのだ。平凡な冒険者として一生を終えるのだ。
「そうか? それはつまらない人生かも知れないぞ」
「俺はその方がいいさ――」
「ナダは欲がないんだな――」
「コルヴォは欲があるのか?」
「あるさ――」
コルヴォは重たく息を吐いた。
「どんな?」
「オレは――冒険者として大成したいんだよ。平民で、何も持っていないオレじゃない。英雄のように全てを手に入れたいんだ」
コルヴォは、胸に大きく抱いた野望を言った。
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