表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮のナダ  作者: 乙黒
第五章 石の王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

300/303

第二十二話 密会

いつの間にか300話です!

ここまで書き続けられるとは思っていませんでしたが、皆様の応援で続けることが出来ました!

本当にありがとうございます!

「ナダ、フォカオンに顔を覚えられたようだな?」


 その日の夜の事だった。ナダは同じ宿屋に泊まっているコルヴォの部屋を訪れて、一緒に酒を飲んでいた。小さなテーブルに二人分の椅子。上に置かれたのは二つの小さなゴブレットと赤ワイン、それに簡単なつまみであるチーズだけだった。


 コルヴォは長い間この部屋に住んでいるというのに、私物はあまりなかった。ベッドと横の棚に置かれた数冊の本だけだ。迷宮に必要な物はクラン部屋に置いているのだろう。どうやら思ったよりも、コルヴォは迷宮に時間をかけているようだ。


「そうみたいだな。有名なのか?」


 ナダはゴブレットに入った赤ワインを煽った。

 高価なワインなのか、華やかな味わいがする。花束のようであった。舐める程度に口に含むだけで、赤、黄色、紫など数多くの花の香りに口の中が満たされる。味自体も少しだけ甘味を感じるが、基本的には渋い。だけど不味くはなくおいしかった。チーズを口に含んでから食べると尚更美味しかった。


 きっと安いワインではなく、高いものなのだと思う。

 ナダ自身はあまりワインに詳しくないが、ラベルも古くももてなされているのを感じていた。チーズもあまり味わったことがない濃厚さなので、きっとこのワインの為に選んだのだろう、と思った。


「当然、有名さ。ミラでのナンバーワンだぞ。ナダが知らなかったことにオレは驚いているぐらいだ。数々の英雄と同じように、誰もが憧れる存在さ。ここ五年ほどはずっとミラでトップを走っているからな」


「……なるほどな」


 そう言われても、ナダとしてはピンと来ていないのは確かだった。


「ソールが他の四大迷宮よりも攻略の進んでいる理由の一つが、フォカオンの存在だ。あいつの強さは、現代の冒険者の中でも群を抜いている――」


「“現代”なのか?」


 ナダはせせら笑った。


「そうだな。だって、かつての英雄の伝説は、現代には図り切れないだろう? 例えばアダマス様だ。アダマス様の伝説は、全ての迷宮を攻略した事、それ以外にも数多くあるが、一つの迷宮を攻略するのにも、冒険者は手こずっているんだ。伝説と見なすのが当然じゃあないか?」


「コルヴォの言う事も一理あるな」


 ナダは納得したように頷いた。

 アダマスがどれだけの時間をかけて、全ての迷宮を攻略したかは知らない。もしかしたら攻略していないかも知れないのだ。別の人物の功績が、知名度だけでアダマスのものになった、という学者の説も存在すると聞く。


 だが、ナダはそれらの伝説を信じている。

 きっとアダマスの伝説は”本物”だと。何故なら、迷宮の奥底で彼の足跡を見たからである。その足跡がどこまで続いているのかは分からない。だけど、ナダのこれまで歩んできた道のりは、アダマスにとっては既に過去のものだった。


「それに比べると、まだフォカオンは身近なのだ。今でも会おうと思えば会えるし、他の英雄と違って積極的に迷宮に潜っているから、新しい記録も生まれやすい。当然ながら、毎年のように宝玉祭に招かれている――」


 宝玉祭とは、王都で行われる優れた業績を残す者、もしくは珍しい冒険を納めた者などを招待する祭りである。冒険者にとっては一度でいいから呼ばれることが目標とされることも多く、もちろん実力のある者は何度も呼ばれるものだ。


「……コルヴォも呼ばれてたじゃねえか」


 学生時代にラルヴァ学園で好成績を収めていたコルヴォは、何度も宝玉祭に呼ばれていた。ナダもそれはよく知っていた。同じように先輩であるイリスが何度も呼ばれていたからだ。


「あれは学生だから、特別扱いされただけさ。現に、卒業してからは一度として呼ばれていない――」


「それは意外だな―――」


「十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人、って言うだろう? オレもが学生時代は強かったが、こうやって社会に出ると、より凄い冒険者が沢山いる。彼らと渡り合うには力が足りないんだ」


 コルヴォはしみじみと語った。その言葉には悲壮感すら浮かんでいた。


「……そうか」


 ナダの知る限り、学生時代のコルヴォは、才覚溢れた冒険者の一人であった。それこそ、ただの筋力増強系アビリティは冒険者の中ではありふれたものだ。それで、上位まで上り詰めたのだから、コルヴォは学園内でも憧れの的だった事を思い出す。

 それが卒業すれば、並みの冒険者など、ナダには信じられなかった。


「ナダ、お前はどうなんだ? 卒業してから、お前はどう変わった?」


 コルヴォの質問は、ナダの本質を解いていたと言ってもいい。

 どう変わったか?

 学園から卒業して早三年と少し、変わった事と言えば一つだけだ。

 ――マゴスを攻略した事。数年かかって、最高の仲間を見つけて、自分の目標の一歩を達成したのだ。

 だから、ナダは嗤いながら言う。


「別に“俺は”変わってないさ。でも、着実に、俺はするべきことをやっている。これ以上の変化は望まないさ――」


 ナダは咄嗟に左胸を押さえてしまった。

 その心臓は、石ころのように固かった。

 自分の状況をもう一度確認するように握ったのである。未だにナダの病気が治っている様子はなかった。


 ――英雄病。ナダはそんな病を抱えている。

 心臓が石のように固くなり、不老不死となり、時々激しい激痛が奔る病である。過去には石化病とも呼ばれたが、英雄のように優れた冒険を果たしたものしかこの病にならなかったから英雄病と呼び方が変わったのである。ナダも未だに思うが、謎が多い不思議な病である。


 ナダは過去に“他の英雄達”と出会った経験から、英雄病は成ったら終わりでなく、進行性であり、心臓だけでなく他の身体の部位も石のように固くなることを知っている。例えば英雄である学園長のノヴァは足が石のように固くなっていた。


 そしてこれは推測であるが、英雄病の最果てが、石像になることだとナダは思っている。そのような実例が以前の冒険で出会ったからだ。マゴスの底で見た石のような黒騎士たちが、英雄のなれの果てだと想像している。


 だからナダは、未だに英雄病の治療法を探して、迷宮に潜っているのだ。


いつも感想や評価をして下さりありがとうございます!


現在第一巻発売中です!

第二巻も発売決定しておりますので、また詳しいことが分かり次第報告します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新ペースがゆっくりだからフラストレーションの溜まる展開はきついな
300話おめでとうございます‼️ これからも楽しみにしてます‼️
更新お疲れ様です。そして300話おめでとうございます コルヴォは理想よりも現実を知ってしまい大人になった感じですね ナダには最後まで滾るような感じでいて欲しいですがどうなっていくのか楽しみにしておりま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ