第十六話 第一部隊
第一部隊のパーティーは、アス、ナザレ、ガスパロ、マルチーザ、それにナダとなった。最初はコルヴォも入るつもりだったらしいが、どうやら第二部隊に入って現在の調子を確かめたい、とのことなので一時的にパーティーから脱退した。今後、中層を超えて深層に挑戦する際には再度入るとのことだった。
今回の第一部隊の冒険は、“慣らし”である。
初めてのメンバーであるナダが入ることで、パーティーがどう変化するのかを確かめ、パーティーの形を最適化していく。今後、深層に潜るための調整だ。だから中層をメインに冒険を行うが、中層でも蛇人が出現する場所が今回の狩場のメインである。
隊列はパーティーの中で最も早いアスを先頭に、ナザレ、ガスパロが両翼を成し、その後ろに光のギフト使いであるマルチーザが控え、最後尾にナダだ。ナダが最後尾なのはまだ仲間達がナダの実力を把握していない事と、移動系のアビリティを持たないから鈍足だということからである。
そんな第一部隊であるが、迷宮に入ってすぐに火人に出くわした。遠くに四体の火人が見える。今すぐにアスが事どうよ自身の周りに輝く風を発生させるが、その前にガスパロが大きな声で怒鳴った。
「おい! オレのアビリティをよく見とけよ!」
迷宮に入ってからすぐに分厚い服に身を包んだガスパロが、後ろにいるナダを威嚇しながらアビリティを発動させる。
それが『魔弾』だ。
効果としては、光の玉を打ち出す。その気になれば手や口、指などからも大小さまざまな光の玉を発射することが出来るが、ガスパロはその照準を合わせる為に“銃”を使用する。
右手にショートソード、左手に短銃を持つのだ。
ガスパロは素早く銃を火人へと向けて、引き金を引く。すると光の弾丸が打ち出され、簡単に火人を貫いた。すると火人から火が漏れ出て、彼らはすぐに爆発する。遠くから最小限の労力で、ガスパロは簡単にモンスターを倒すことができるのだ。
「どうだ? これがオレの力さ! お前には真似できねえだろ?」
「そうだな。それにしても“銃”なんて、珍しいものを使うんだな――」
遠距離攻撃をほぼ持たないナダはガスパロの力を認めた上で、冒険者として珍しい銃を評価した。
もちろん学園で様々な武器の歴史を習ったナダは、銃についても基礎知識程度は知っている。
パライゾ王国において銃は随分と昔に開発されており、原型は数々あったが、火縄銃が最初の形だと言われている。火薬にもカルヴァオンが混じられており、その威力は絶大だ。鉄板を貫き、強いモンスターの鱗も突き抜くことが出来ると言われている。
銃単体は地上ではよく使われている。昔に行われた戦争では人を殺すのに使われ、現代においても人を律するために騎士達はよく使う。アビリティやギフトがあまり意味をなさない地上では、人を簡単に傷つけられる銃は最良の武器なのだ。
だが、迷宮ではあまり使われることはない。何故なら深い場所に潜る必要のある冒険者にとって、球数制限のある銃はあまり好まれず、またアビリティやギフトとの親和性が低い事もあって殆どの冒険者が使わなくなった。
「“形”があった方が想像しやすいんだ。それに、この方がギフトによって強化されやすいんだよっ――!」
意外にもガスパロはナダに自身のアビリティを説明した。
あまり理解していないナダが首を捻って考えていると、実演してくれるのかナルチーザがガスパロの中に光のギフトによる付加を施す。するとガスパロの銃は淡い光に包まれて、自身のアビリティも注ぎ込み、遠くに現れた五体の火人に人の頭ほどの大きさのある光弾を発射すると火人にあたった瞬間に爆発し、その連鎖反応として全ての火人の身体が爆発した。
「……派手なアビリティだな」
ナダはガスパロのアビリティを優秀だと思った。大きさや威力はきっと自身でも調整できるのだろう。
「……やりすぎだな。控えろ。こんなところでアビリティの無駄遣いをするな」
だが、そんなガスパロを注意するのがリーダーであるナザレだ。こんな下位のモンスター相手にアビリティを派手に使っているようでは、中層まで持たないと判断したのだろう。
「新人にオレの力を見せつけるためさ。その方が冒険をしやすいだろう?」
「そういうのは私の許可を取れ――」
「はいはい。分かりましたよ、リーダー様――」
ガスパロはリーダーのナザレに逆らうようなことをせず、拗ねた様に言った。
「もっと深い所に行くぞ。皆、気を抜くなよ――」
ナザレはパーティーメンバー達に気を引き締めるよう、釘を刺す。特にナダの事は睨みつけていた。
それからの浅層では、基本的に火人との戦いはアスを中心に行われる事となる。アスが敵を発見し、ガスパロやナルチーザがそれぞれ威力を押さえた省エネでの光の玉を出すことでモンスターを牽制し、その間になるアスが風を纏った剣で攻撃する。
『光の鍛冶屋』で棒に光の刃を灯すことで簡易的な槍として使い、アスが打ちこぼしたあるいは皆がした火人に確実に遠くからダメージを与えていく。
「そこそこやるじゃねえか――」
ナダの仕事はあまりなかった。
せっかく持ってきた新しい武器であるロングソードは以前と比べると長く、一メートル程はある大きなものだ。それを手で遊ばせていた。念のため以前から使っているショートソードも二本ほど持ってきているが、このロングソードは上等な物なので簡単には折れないだろう、とナダは踏んでいる。
「当然だ。私達は深層に行く為に選ばれた精鋭だからな。それをお前のような覇気もない野良犬を入れるなど――」
「野良犬で悪かったな――」
ナザレの苦言に、ナダは力のない声で言った。
マゴス攻略という実績が秘匿されているナダにとって、輝かしい経歴は無いに等しい。だからナザレの言葉にもあまり動揺はしなかった。
「どうしてコルヴォはこんな男を――」
ナザレの嘆きが口から漏れる。
「……さあな」
悪感情を向けられることに慣れているナダは、アスが見逃し、ナザレ、ガスパロの元から運よく抜け出したマルチーザを襲う火人を一斬りで楽に殺しながら言った。
アーザ第一部隊は火人がメインの浅層を抜けて、やがて中層に辿り着く。ここまで最速で来たため、数十分しかかかっていない。
「さて、ここから気を引き締めるぞ! 特にアス、単独行動はいいが、私たちの事も考えて行動しろよ」
迷宮内の空気が変わった事で、ナザレがメンバー達にはっぱをかける。それと同時にこれまであまり祝詞を唱えていなかったマルチーザが、手を組みながらギフトを行使する。
「――聖なる信仰を胸に抱き、百人が祈った剣を聖なる証とする。人々に安らぎと希望を与え、我は、光の神――ラーの力を欲す。嗚呼、我が神よ、輝く道を歩くために、我に、我らの聖なる信徒に、光の力を授けよ」
マルチーザの口上が終わると、ナダ、アス、ナザレ、ガスパロの持つ武器に、光の力が付与される。きらきらと輝く粒子の光が武器に纏わりつくのだ。それは破魔の光であり、モンスターにとっては絶対的な破壊の力となるが、人にはあまり効果のない光である。
どうやらマルチーザは自分で攻撃するよりも、仲間の力を上げるギフトが得意らしい。彼女の最も得意で強力なギフトが、今回使う『光の武器』であった。
――光のギフトは武器の攻撃力を上げるわけではなく、相性のいいアビリティやギフトの威力も上げる事が出来るの。
と、マルチーザは言った。
アビリティもギフトも持っていないナダにとっては実感がないが、ナザレの『光の鍛冶屋』はよりより刃が大きくなり、アスの纏っている風には光の粒子が混じる。
「――来るよ。それも蛇人が四体もいる。」
準備を終えた第一部隊が先へ進むと、先頭にいたアスが動きを止めた。
モンスターを待ち構える気だ。
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