第十五話 戦果
今回は少し短いです。
「これでいいんだろう?」
にやけた表情のナダは地上に戻った後、第一部隊のクランメンバーたちに中層のモンスターを狩って獲ってきた大量のカルヴァオンを机の上に出した。
第一部隊の一回での冒険で手に入れる量に比べれば少ないだろうが、今回のナダ達の冒険は時間が短く、メンバーも精鋭ではない。むしろこれまで隠れていたメンバーであるルルドとパウロの実力が浮き出た冒険とも言えるのだ。
「……実力は認めるよ」
第一部隊のエースであるアスが代表してナダの事を無表情で評価した。
「それはよかった――」
「でも、未だに信じられないよ。強いけどまさかここまでとはね……」
アスは、ナダを信じられない目で見ていた。
強い、とは思っていた。
アスが思うに、ナダの佇まいは強者の“それ”に近い。上を目指すのではなく、既にいるからこそ、周りを冷静に見定める。
アスの尊敬するフォカオンと似ている場所でもあった。
だが、アスはナダの能力に関して、秀でた情報は聞いていない。強いアビリティどころか、“何も持っていない”という情報だけが耳に残っているのだ。
――落ちこぼれ、そんな言葉が喉から出かかる。
本来なら日の目を見ない冒険者の筈なのに、ナダは腕っぷし一つでその評価を覆したのである。他のアーザの冒険者達もナダが中層のカルヴァオンを手に入れるのに、何日で諦めるか、との賭けをしていた冒険者たちがいたと聞いている。
だが、そんな下馬評をナダは覆した。
圧倒的な力のみで。
同じことをできる冒険者がいるのだろうか。まだ見習いのルルドとパウロと共に迷宮に潜り、コルヴォの助力があるとはいえ、中層で安定してカルヴァオンを稼ぐ。
「別にそうでもないさ――」
ナダは余裕綽々な笑みを浮かべて言った。
「本当に、君自身もそう思っているのかい?」
「ああ、だって、もっと強いのなら、ティラノサウルスを倒しているだろうからな。残念ながら命からがら逃げだしたよ――」
ナダはやれやれ、と言った。
だが、第一部隊の冒険者達は驚きで言葉を失っていた。
――ティラノサウルス。その名は、ソールに挑む冒険者の中では有名だ。未だに討伐実績が数例しかなく、何度か別のクランが戦ったことがあるが、倒し切れずに何人かの冒険者が亡くなった事もあるような相手である。
しっかりと仲間を揃えて、準備を整えて、戦うまでに消耗がない状態でやっと戦うような相手である。それでも勝てない事が多々あるのがティラノサウルスだが、残念な事にティラノサウルスは徘徊するはぐれであって、準備を整えても必ず戦えるとは限らない。むしろ準備もせずに出会う事の方が多い。ナダ達のように。
「戦った……のかい?」
アスは目をぱちくりとしていた。どうやら動揺しているようだ。
「ああ、強かったぜ。負けたけど――」
「そうなんだ。それは出会ったことが不幸だったね――」
アスは仲間達が無事だった事にほっとする。
アーザにおいて、ティラノサウルスの討伐例は未だない。第一部隊のアスたちも出会ったことは何度かあるが、遠くで見つけた時点で逃げ出している。交戦経験すら一度としてなかった。
「……」
だが、コルヴォは眉を顰めていた。
――ナダがティラノサウルスと戦い、武器を失ったが無傷だったことを知っているからだ。
コルヴォは先に逃げ出したので、ナダとティラノサウルスの戦闘がどのようなものであったかは知らない。聞いてもナダにはぐらされたからだ。だが、ただ武器を失うような戦いをナダがするとは考えられない為、少しは相まみえたのだろう、と考えている。
「で、これで、俺が第一部隊に入ってもいいんだろう?」
ナダは第一部隊を挑発するように言った。
第一部隊の、アス、ナザレ、ガスパロ、マルチーザはナダを睨んだ。
最後の一人であるコルヴォは好戦的なナダの態度に「やれやれ」と困ったように額を押さえながら、クランリーダーとして皆を纏めるように口を開いた。
「これでナダの実力に文句がある奴はいないな。もしもあるなら、ナダと同じ条件で、より多くのカルヴァオンを獲ればいい。まあ、そんな事をすれば、きっとナダが対抗してより多くのカルヴァオンを集めるだろうがな――」
コルヴォはちらりとナダを見る。
前回の冒険、ナダの実力は未だに全て発揮されているとは言い難い、と言うのがコルヴォの評価であった。
(さて、蛇が出るか鬼が出るか――)
コルヴォはナダが入った事で、第一部隊にどんな化学反応が起こるのか一抹の不安を感じながらも楽しみだった。
いつも感想や評価などありがとうございます!
よければ外伝の『美人な師匠の愛が重い』もよろしくお願い致します。




