第十一話 一時的
意外にも、ナダはコルヴォ以外にもパーティーメンバーが見つかった。
「やっほー! 今日もよろしくねー!」
最初のメンバーがルルドだ。この街に来て最初の冒険に潜った女性のギフト使いであり、ギフト使いの中では珍しい土のギフト持ちだ。
普段は第三部隊のギフト使いで浅層を冒険し、迷宮内の内部変動で変わった道はないか、あるいは日々カルヴァオンを稼ぐことによってクランに役立っている。
実力としては、本人曰くギフト使いの中でも中の下のようだ。
「本当に一緒に行っていいのか?」
「いいよー。だって、ナダって強いじゃん。この前の冒険でよく分かったよ。あれだけ強いなら、後衛の私も安心って感じかな?」
ルルドは軽い空気で言った。
どうやらこの前の冒険でナダの実力を知り、今回声がかかった事で一緒に中層を目指すことになった。彼女自身は中層に挑んだことはないが、そろそろ浅層を卒業したいとも考えていたようだ。
「ルルドはね、優秀だよ。土のギフトによるサポート専門だけど実力は安定しているし、クランにいる他のギフト使いとそう大きく劣っているわけではない。その戦い方から冒険に少し時間がかかるかもしれないけど、中層に挑むことだけ考えるといいメンバーだ――」
ルルドと一緒に迷宮に潜ることに、コルヴォは全く反対しなかった。彼自身もルルドの実力は認めているようだ。
どうやら彼女は前衛でも戦えるギフト使いではなく、後方支援専門のようだ。ギフト使いとしては最も多いタイプの冒険者だった。
そして四人目のメンバーがパウロであった。
パウロはまだ学園を卒業したばかりの、赤毛の青年である。少し背は低く、体躯は細いが、その分身軽な動きが得意な冒険者である。
「ナダ、久しぶりだね。と言っても、覚えているかどうかは知らないけど。それでも、よろしく頼むよ」
パウロは学生時代のナダの同級生だった。
「ああ、こちらこそ――」
パウロの経歴を調べてみると、どうやら卒業時はアメイシャと同じパーティーに所属しており、名が売れていなかったナダの頃とは違い、先輩たちが卒業してから頭角を現した学生の一人のようだ。
「バックアップは任してくれ。と言っても、ナダの後ろで欠伸をしているだけかも知れないけどね」
「その方がいいか?」
ナダは意地悪そうに嗤う。
「暇になるから適当に僕にもモンスターの相手を任せて貰えると嬉しいよ。せっかく迷宮に潜るのに、腕が落ちるのも嫌だからね――」
「なるほど。それなら後ろは任せた。時々、手が滑って“殺し損ねる”かもしれないからな」
「全然、それでもいいよ――」
パウロはナダがパーティーに誘う前に、積極的に手を挙げて自ら立候補した冒険者だった。
どうやらナダが思っている以上に、彼のやる気は高いようだ。
コルヴォに確認してみると、どうやらパウロ自身はまだどこの部隊にも所属していないらしく、まだまだクランの中でも見習いのようだ。と言っても、コルヴォなどの学園卒業組ではあるので、しっかりと八年間も学生冒険者として活動していたので、歴自体はアスより長いのだが。
この日の隊列は、コルヴォと話し合った末にやはりナダが先頭に立つことになった。その後ろにサポートとしてコルヴォとパウロ、そして最後尾にルルドだ。
ナダが先頭に立った理由は、中層に行くための作戦ではなく、単に迷宮に慣れるためだ。
ナダ自身、中層には問題なく行けると思っているが、『ソール』という環境に慣れて今後より深い場所に行くためだ。
本日のナダは、厚手の服に、木製のブロードソード。前回の武器とそう変わりはしない。未だに新たな武器は手に入れていない。クラーテルで手に入る量産型の武器だ。それこそ、各工房で専用武器の為に試作されている剣である。それを今回、ナダは三本も持ち込んでいた。ナダが思う限り耐久性がそう高くないため、使い潰すために数多く持つのだ。
だから左の腰に二本、右の腰に一本の件をぶらさげている。既に左の剣は一本だけ抜いており、いつものように前傾姿勢になっている。構えなどない。ナダはお堅い剣術など、まともに学んでいない。体から力を抜き、いつでも攻撃できる体制がナダにとっての構えなのだ。それにモンスター相手に構えても仕方がないのだ。彼らは人とは違い、型に当てはまっていないのだから。
「ナダ、今日の冒険は好きにしていいよ。どうせ好きにするんだろうけど」
コルヴォは今回の冒険に関しては、作戦も何も立てない事にした。ナダもそれに同意した。
本来なら迷宮探索は緻密な冒険計画を立てるのが必須であるが、今回はナダの実力の試金石であり、他のメンバーは添え物である。だからこのようなことがまかり通ったのだ。
「まあ、お前らは俺の後ろで悠々自適に迷宮探索を楽しめよ。どうせ中層に行く程度なんだからな――」
ナダは剣を右手だけに持って、楽々と後ろに連なる仲間達に言い放った。
仲間達はそんなナダへ苦笑いをするが、誰も否定はしなかった。誰もがナダの実力を知っているからである。まだ慣れていない迷宮に苦戦するような冒険者でないという事は、実際に一緒に潜ったコルヴォとルルドに関しては肌で感じ、パウロは学園時代の強さをよく知っているのだ。
ナダはそんな三人と迷宮を潜った。
まだ浅層であるが、火人を何体も倒した。
今も火人がこちらへと慌てるように走りながら襲い掛かって来る。彼らは武器を持っていないので、基本的には殴る蹴るだが、それに加えて抱き着くという攻撃方法を用いる。彼らはどうやら体が熱く、触れるだけで冒険者を火傷させることを本能で知っているようだった。
だが、問題なのは――
「――それよりも、彼らは瀕死の状態になれば決死の思いで、爆発するから素早く殺さなければならない。全方位攻撃で、範囲は狭いがかなりの破壊力だぞ」
コルヴォに以前の冒険で教わった事をナダは思い出す。
とはいえ、この程度の相手に遠慮する気などない。
ナダは全力で火人の胴体を断ち切った。一太刀で、である。ナダは生まれついての膂力から生み出す馬鹿げた剣の威力によって、無理やりに火人を切ることが出来るのである。
二体目の火人がこちらへと抱き着こうとしてきた。大きく振りかぶって勢いをつける方法はできなかったので、剣の当たる位置を少し変える。斬るのではなく、剣をつかって火人を剣で払って壁に叩きつけるのだ。
すると、火人は壁に当たってすぐに爆発した。
「おお、怖い怖い」
ナダはそんな様子の火人を見ながら楽しそうに嗤った。
彼らが爆発した後からは、赤いマグマの中に小さな赤いカルヴァオンが残るのだ。量は少ないが、上質なカルヴァオンである為、これを狙いに冒険者がこの町には集まるのである。
まだ慣れた迷宮ではないが、一つ一つ体の動きを確かめながらナダは浅層を蹂躙していく。
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