第十話 エース部隊
2巻の発売も決定しました!
また詳細が決まり次第、活動報告や後書きで報告致しますので、楽しみにお待ち頂けると幸いです!
次の日の朝、冒険者の装いに身を包んだ冒険者が、コルヴォの一声によって同じ家のリビングに集められていた。
もちろん迷宮に潜るためであり、そのパーティーは――アーザ第一部隊であった。
その中には当然のように、アスとナザレがいる。
「さて、今日のアーザ第一部隊には――ナダが入る。昨日、言った通りだ――」
コルヴォの声と共に、他の冒険者の目が全てナダに向いた。
アスはナダへと楽しそうに嗤いかけ、ナザレは今にも殺しそうな目で睨み、他の仲間は誰一人として好意的な目をナダに向けなかった。
それもその筈、第一部隊はこれまで五人での冒険に向けて準備していた。もう一人増えれば六人だ。これまでの隊列も作戦も全て変更しなければならない。現在深層を目指している筈なのに、そうなれば浅層からのやり直しだ。そうやってせっかく進んだ
「どうしてそいつのせいで冒険が遅れなければならないんだ?」
そう言ったのはナザレではなく、第一部隊の縁の下の力持ちであるガスパロだった。頭を丸めた坊主であり、角ばった顔をしており苛立つと怖い形相になる男だった。
「別に冒険が遅れる事はないさ。なあ、ナダ?」
だが、コルヴォはガスパロに凄まれても、怯える様子は一切なかった。冒険者とは荒くれ者が多い職業だから慣れているのかも知れない。
「そうだな。で、他の奴も同じ意見か?」
ナダは挑発するように見渡した。
アスは苦笑いしながら頷いた。
ナザレは頷きもせずナダと目線も合わせもしなかった。
ガスパロは当然ながら大きく頷いた。
コルヴォは楽しそうに嗤っていた。
最後の一人であるギフト使いのマルチーザは曖昧に笑っていた。
「じゃあ、こうしようぜ? お前らは俺の実力が無いと思っている。なら、中層に問題なく潜れる実力なら問題ないんだろう?」
「このパーティーで、か?」
ナザレが鼻で笑った。
私たちの力を借りれば、誰でも中層に潜れると思っているのだ。
「いや、お前たちの力は借りないさ。だって、ここは“クラン”だろう? 他にも冒険者は沢山いる。そいつらに力を借りればいい。それで、中層のモンスターからカルヴァオンを持って帰ってこれば、お前たちのパーティーに俺は堂々と入る。どうだ?」
ナダとしては一人で中層に潜ることも考えたが、流石に普通の冒険者としては頭がおかしいので自重した。
このクランはナダが作ったクランではなく、コルヴォが迷宮攻略という夢の為に作ったクランなのだ。彼の顔を潰すわけにはいかず、あくまでナダはコルヴォの協力者の一人という立ち位置を守りたかったのだ。
「お前は頭がお花畑らしいな。自慢できる話じゃないが、アーザの冒険者は精鋭ぞろいじゃない。並みの冒険者で、皆が浅層で頑張っているんだ。それで中層に行くだと? 無謀極まりないし、大切な仲間を犠牲にするつもりか?」
ナザレはナダを叱責した。
だが、それは当然な事だった。実力が伴わない冒険は時に命が代償になる。だから自分の強さを見極めたうえで、安全マージンを取り必ず無事に生還できる冒険を計画するのが優れた冒険者だ。一か八かの命がかかった冒険など、決してプロが行うようなものではない。
「じゃあ、保険にコルヴォを連れて行くか。付き合ってくれるだろう?」
「まあ、いいが――」
コルヴォは憮然とした表情で頷いた。
「――お前は、大切な仲間を殺すつもりか?」
ナザレはナダへと近づいて凄んだ。その目には殺気が確かに籠っており、今にも剣を抜きそうな雰囲気であった。
だが、ナダは怯える様子もなく言った。
「死ぬことはないさ。所詮、“中層”だろう?」
あっけらかんとした態度だった。まるでソールの中層を侮るような態度に、ナザレは咄嗟に手が出そうになるのをアスが腕を掴んで止めた。
「やらせればいいよ――」
「だが――!」
「どうせ参加する冒険者もいないさ。ソールの中層の恐ろしさは誰もが知っている。この新人の言う事に従って潜るような愚かな冒険者はここにはいないよ」
アスはナザレを宥めるように言った。
「確かにそうかも知れないが――」
「“ここ”の中層はそんなに簡単な場所じゃない。ここをポディエやミラなんかと同じと思っているんだ。この新人も、パーティーメンバーが集まらない事で気づくさ――」
アスの意見に、他の第一部隊のメンバーたちは賛同した。
「流石アスだぜ! とても正論だ! オレの言いたいことを全部言ってくれたぜ! ナダ、お前の案はどうせうまく行かねえよ! オレ達に泣きつくはめになるさ! その時はコルヴォに命令させて第一部隊に入るのか? そんなことしてもオレ達は認めないがな!」
ガスパロはナダを嘲笑いながら言った。
「じゃあ、もしもうまく行った時は第一部隊に大手を振って入っていい、というわけだな――」
ナダは第一部隊の冒険者達へ、簡単に言い放つ。
「ナダ、ちなみに聞くが、他にメンバーが集まらない時はどうするんだ?」
「俺とコルヴォだけでも十分だろう?」
「そう言うと思った。まあ、オレがいるだけマシか――」
コルヴォはナダの言う事を予想していたのか、特に驚きもしていなかった。
コルヴォは、学生時代のナダをよく知っている。
当時最高のパーティーの一つであったアギヤから追い出されて暫くの間、ソロでの冒険を行っていたことも。その時にはぐれを倒し、中層を超えて深層に行き、それからも学園からいなくなるまで基本的にはソロでずっと迷宮に潜っていたのだ。何度かはぐれを倒すなどの目的があって一時的にパーティーを組むことはあったが、それ以外ではずっとソロだった。それでも安定したカルヴァオンを稼ぎ、常に五体満足で帰って来ている。
だから彼の冒険の基準が、ソロという冒険者としては異常なのも当然の如くよく分かっていた。
「痛い目を見ればいい――」
楽しそうに話すナダとコルヴォを見て苛ついたナザレは吐き捨てるように言った。
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