表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮のナダ  作者: 乙黒
第五章 石の王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

287/303

第九話 エースⅤ

 仲間達が去った後、部屋に残ったコルヴォはいなくなった仲間達の背中を思い出し、深いため息を吐いた。

 その様子を見ていたナダが、重たい口を開いた。


「コルヴォ、よかったのか?」


「何がだ?」


「こうまでして俺を入れて――」


 ナダはぶっきらぼうに言った。

 この部屋にはナダとコルヴォしかいないので、コルヴォは肩を落としながらおどけた様に言った。


「いいさ。別に――」


「本当か?」


 ナダは再三確認をする。


「ああ。前にも言ったかも知れないが、オレはそうまでする価値がナダにはあると思っている。ナダの強さは本物だ。仲間達はあまり分かっていないが、オレはよく知っている――」


 コルヴォはかつてのナダとの冒険を思い出す。

 強く記憶に残っているナダとの冒険は三度ある。


一度目は龍の体内からの脱出である。別々に冒険を送っていた冒険者たちが龍に喰われた事で集まり、生き残るために協力することになった冒険だ。あの時のナダも強かった。


二度目は学園内で、“最強”を決める戦いのときだ。結局は協力することになったが、そのきっかけになったのがナダで、なし崩し的にナダが最強になった冒険である。


そして三度目がナダに誘われた事によって始まった冒険だ。ナダの強さをあの時に本当の意味で思い知った。

短い間に、彼にどんな変化があったのかは知らない。だが、あの時のナダは、自分よりも遥かに高い場所にいた。

確かに、ナダは強かったのだ。

多数のモンスターを簡単に切り殺し、返り血を大量に浴びながらも自身は致命傷一つ負わず、モンスターを殺しきった後には解体するまでのスタミナすらも持ち得ていた。

全てコルヴォが持っていなかった強さである。


「コルヴォにそう言ってもらえると俺も鼻が高いな――」


「本当の事さ。それに今のナダはあの時よりも強い。そうだな?」

「俺はそう思っている――」


 ナダは誇るように言った。

 マゴスでの完全攻略は、ナダに自信と次の冒険の活力を与えていた。きっと今の自分は昔の自分よりも強い、との自信があるのだ。


「だから、だ。だからオレはナダをクランに入れた。是が非でも、他のクランには渡したくなかった。ナダの実力は本物だ。卒業してから数多くの冒険者を見た。それこそオレよりも強い冒険者なんて山ほどいた。それでも、ナダよりも上の冒険者はいないと今でも思っている――」


 コルヴォはクラーテルに来る以前は、学園を卒業してから一時期にミラ、それに王都でも少しの間だけ活動していた。

 その間に様々なパーティーにフリーの冒険者として入り、学んだのだ。時にはトップパーティーに呼ばれる事すらあった身だ。

 それでも、コルヴォはナダが最強だと思った。彼にも足りていない事は多数あるとはいえ、単純なモンスターを倒す強さなら、他の冒険者では持ちえないものを持っていると思ったのだ。


「そこまで評価していてくれるとは嬉しいぜ――」


 ナダは照れたように笑った。


「だからオレはお前に賭けるんだ。ナダが入れば、クランのレベルが上がる。一人の冒険者が入った事によって、強くなったパーティーをオレは幾つも知っている」


「……それはあるかもしれねえな。だが、成長するのは他の誰の力でもなく、自己努力だぜ?」


 ナダはマゴスでの経験を思い出す。

 あの時、“英雄”は自分しかいなかった。

実力のある冒険者としてニレナやオウロはいたが、どちらも“まだ”英雄ではなく、マゴスを攻略しているうちになったのだ。他の仲間達も冒険を経て大きく成長した。もしかしたら自分にそんな力があるのでは、と錯覚するほどだった。


だが、違うのだとナダは思っている。

仲間達が頑張ってくれたからこそ、彼らは強くなったのだ。パーティーに所属したからではなく、彼らが本気で“底”を目指したからこそ、英雄になり、他の仲間も冒険者では類まれな実力になったのだ。


「それは分かっている。だからアーザももう少し活気が欲しいんだ。粒ぞろいだとは思うんだけどね――」


「その中で最も大きい粒がアスなのか?」


 ナダは皆の中心にいた男の事を思い出す。

 若い男だった。まだ若かったが、顔に自信が満ち溢れていた。冒険者としてこれから脂がのる時期だと思うのだ。


「ああ、そうだ。皆があいつに期待している。それぐらいの“箔”がアスにはあるんだ――」


「そうか――」


「あいつは強くなるよ、もっと、もっと――」


 コルヴォは拳を強く握りしめながら言った。


「コルヴォはどうなんだよ?」


 だが、ナダはそんなアスよりも、コルヴォを見ていた。


「何がだ?」


「コルヴォも、強くなるんだろう?」


 ナダは微かに嗤った。


「いや、オレはもう頭打ちだよ。だからこうしてクランリーダーをしている。オレ一人では無理だと思ったんだ――」


「そうか――」


 ナダはつまらなそうに頷いた。

いつも感想や評価などありがとうございます!

よければ外伝の『美人な師匠の愛が重い』もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
マナの深層口外禁止令ってマゴスもなのかな? 話せたら進行が楽になるのに…。 コルヴォは何を諦めているのか…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ