表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮のナダ  作者: 乙黒
第五章 石の王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

283/303

第五話 エース

本日から新作『美人な師匠の愛が重い』を公開しています。

こちらですが、本作『迷宮のナダ』と同じ世界観で、アビリティをより詳しく書くために公開したので是非読んで頂けると幸いです。

 その日の冒険は、初めてソーラに潜った結果としては上々だった。倒したモンスターは火人だけだ。だが、その数は十数体程。何度か危なっかしい場面もあったが、ナダはその全てを一人で倒した。コルヴォやルルドはナダの冒険をほぼ見ていただけであった。


 小一時間ほどの冒険であったため、ナダはまだまだ体力に余裕があったが、この日は早めに切り上げた。理由としては、持っていた木剣が中ほどで折れたからである。どうやらクランに放置されてあった木剣だったので、これまでに何度も使っていたことにより、限界が来たようだ。ナダもモンスターと戦っていた時に剣が折れた時には少々驚いたが、問題なく折れた剣でモンスターを斬り裂きながら迷宮外へ戻ろうとしている時、コルヴォが先を歩くナダへ向けて口を開いた。


「ナダ、今後、アーザで活動しておく上で、どうしても紹介しておきたい冒険者がいるんだ。うちのエースが帰って来ているから是非とも会って欲しい」


 そこでコルヴォから説明されたのは、アーザの冒険者の中でのエースに関しての話だった。


「エース?」


 ナダはもう少しで迷宮探索が終わるが未だに体に疲れた様子はなかったが、初めて潜る迷宮は刺激的だったので今日は一足早く休みたいところだったが、これまで自分に対して優しくしてくれているコルヴォの提案を断るわけにはいかなかった。


「ああ、そうだ。これまでどのパーティーでもトップを張っていた身としては恥ずかしいんだが、このクランではオレよりも強い冒険者がいる。英雄の原石だ。一人だけだけどね――」


 一人だけ、というところにコルヴォのプライドを感じた。


「いいぜ。会うよ。これから一緒に冒険する間柄だからな――」


 コルヴォが唯一自分を超える、という冒険者に、ナダはぜひ会ってみたいと言う気持ちになった。



 ◆◆◆




 とあるパーティーがソールの中層に辿り着いた。ここは浅層と変わらず、岩肌からマグマがところどころ溢れ出す迷宮だった。

 ソールは浅層と中層の境目が分かりやすい。何故なら浅層ははぐれを除けば火人しか出ないのに、中層からはモンスターのバリエーションが増えるからだ。ここから先は人外のような姿をしたモンスターが数多く出現するのだ。


 このパーティーが目指す場所は中層、あるいは挑戦が可能ならば深層にまで足を伸ばすのが今回の冒険の目的だった。

 クラーテルにおいて、深層を攻略できるようなパーティーは片手ほどであり、中層を安定して攻略できるパーティーも両手で数えるほどしかいないのが現状だ。どの冒険者も他の迷宮なら深層へ挑戦できるのにも関わらず、ここではそれらの迷宮でのトップ層しか深層に行けないのがクラーテルの現状だった。

 それほど、ソールの攻略は厳しく、彼らを“選ばれし者”とさえ呼ぶ者もいる


 そんな新しい選ばれし者になろうとしているのが、このパーティーである“アーザ第一部隊”であった。

 パーティー構成は五人。ここクラーテルにおいても、標準的な人数だった。


「先を目指す。いいな?」


 そんな中、パーティーメンバーに指示を出したのが、勝ち気の目が特徴的な長身の女性だった。ソールでは標準的な分厚い服を着こなし、手には女性にしては少し長いが細い剣を持っている。

 どうやら彼女がリーダーらしい。


「当然だよ! その為にオレ達は来たんだ! クランの名誉を背負っているんだぞ! 逃げるわけがないよ!」


 そんなリーダーに答えるように、五人の中でもひと際存在感のある男が、直剣を肩に担ぐように持ちながら自信満々に言った。

 男はあどけない顔をしており、茶色の目はまるで獲物を狙う狩猟生物のように鋭かった。

 まだ若いのだろうろうか。浮足立っているようにも見える。


「アス、その焦りがミスを生み、迷宮探索では重大な過失に繋がる。ぬかるなよ?」


「はいはい。ナザレ。分かっているよ。こう見えても、冒険者になってから数年たつんだ。その辺りはよく分かっているさ――」


 アス、と呼ばれたあどけない男は、自信満々に言った。

 他の三人のパーティーメンバーはそんな二人を尊敬の眼差しで見守っていた。どうやらこのパーティーは、アスとナザレが中心のパーティーのようだ。他のメンバーはサポートなのだろう。


「本当に分かっているのか? 今回はコルヴォが中層突破の為に、ここまでのメンバーを集めてくれたんだ。私達に失敗は許されていない」


「ここ、中層の突破だろう? 未だにアーザが達していない深層への挑戦。早く突破して、『アルシャイン』に追いつかないと」


 目に闘志を燃やしながらアスは言う。

 アルシャインとは、クラーテルにて活動するクランの一つであり、その実績はコルヴォが作ったアーザよりも遥かに上である。今も多くの冒険者がアルシャインから作られたパーティーによって迷宮『ソール』に挑戦しており、中には深層に潜る冒険者もいる。


「その意気だ。アス、お前は強いんだ。だから、もっと自信をもって、私たちを頼りながら先を進むぞ――」


 ナザレは先を厳しい目で見据えながら言った。

 それから五人はソールの奥へと進む。

 隊列はアスが先頭であり、次がアスと似た直剣を持った男と短剣を日本持った女が並び、その後ろにナザレが何の変哲もない120センチ程のつえで地面をつきながら歩き、最後尾は全身をローブで身を隠したギフト使いだろう。


 アス以外は年齢が二十五を優に超えているのだろう。ナザレの指示に何も言わず、黙々と迷宮探索に勤しむ。まだモンスターは出ていないが、誰一人として緊張感を無くすことはない。きっと、彼らは冒険者としてベテランなのだろう。

だからコルヴォから、中層の攻略を命じられたのだ。


「でも――」


「“エデル”のことは忘れろ。あいつは私たちを捨てて、他のクランに移ったんだ。それにあいつがここを離れた理由はお前じゃない。金に目が眩んだんだ」


 そんな会話をナザレとアスが交わしながら先を急ぐ。

 五人が暫く前へと進むと、煌めく風を纏ったアスが立ち止まって身を屈めたまま仲間達に剣を持っていない左手で人差し指を立てる。新たなモンスターが出現したことの合図だ。仲間達は目を凝らしてみるが、アスが見つけたモンスターをまだ誰も発見できていない。


 だが、アスの言葉を疑う者は誰もいない。

 このパーティーの中で最も探知能力が高いのが、アスだからだ。

 アスの言葉通り、目の前からモンスターがのっそりと現れた。それはやはり、明らかに“人形”ではなかった。


 言うなれば、大きな蜥蜴の形をした二足歩行を生物だった。当然のように尻尾も生えており、それも火人とは違い、体からマグマを吹き出すことはなく、人よりも大きな体躯を持ち、鉈のように大振りの剣と石の盾を持つモンスターだ。彼らは太い尻尾を引きずるようにのそのそと歩いていた。


 名を、蛇人あるいはエスカマと言う。

 彼らは中層から出現するモンスターであり火人のように爆発することはないが、鱗を持つことでより高い耐久力と人ならざる体を持つことでより強い力を発揮することが出来るモンスターだ。中層からは火人の他に様々な蛇人が出現する。


「相変わらず、凄い“アビリティ”だな。どんなアビリティでも、アスのような副次効果はないぞ――」


 パーティーの仲間の一人は、アスを褒め称えるように言った。


「そうでもないと思うけど、世の中には様々なアビリティがあるからね――」


 アスの持つアビリティを、『そよブリサ』と言う。

 その効果の一つが、風の流れを肌で読むことにより、敵の位置や仲間の位置、果てには先の地形までもを読むことが出来る。と言っても、目で見えるわけではないので、大まかな位置であるが。

いつも感想や評価などありがとうございます!

とても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
美人な師匠の愛が重い、ですかね? 読みます。楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ