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暗殺少女は魔力人形の夢を見るか  作者: 鰯づくし
EX:暗殺少女の後日談
256/256

月はきっと、見守っている。

※時系列、前後しております。

 結婚式直後、披露宴の二次会三次会、四次会なところだとお考えください!

「ほんっと、あんた達は仲睦まじいねぇ」


 結婚式の後、二次会、三次会と宴は進み。

 大体の人間が酔いつぶれている中、ドミニクはしみじみと呟く。

 彼女の視線の先にいるのは、ぴったりと寄り添いあうレティとエリー。

 これだけの長時間、全く熱を失っていないのは、若さゆえか。


 それが、少しばかりドミニクには眩しい。

 もしかしたら、こんな選択もあったかも知れない、と思ってしまったから。

 

 けれども、それは訪れることのなかった世界で。

 それが間違いだったかと言われれば、どうにも答えにくい。


 酔いに耽り、そんな思考を巡らせていたら。

 不意に、エリーから声をかけられた。


「やだドミニクさんったら、ラブラブ最高カップルだなんて、そんなそんな」

「いやいや、言ってない、そこまで言ってないっての」


 きゃっ、と弾けそうな声音で言われ、流石のドミニクも呆れたような言い方しかできない。

 けれど。

 今この時だけは、彼女達が最高に幸せな二人なのだろうことは、認めざるを得なかった。

 

 だからこそ。

 かつての時間に思いを馳せてしまう。


「……ドミニク師匠? なんだか……寂しそう」


 不意に、レティから声を掛けられて。

 内心で慌てながら、ドミニクは表情を整える。いつもの彼女としてのそれに。


「この歳になるとね、若い二人の姿を見ると感慨深くなっちまうもんなんだよ」

「そうじゃよなぁ! わかる、わかるぞぉぉぉ!!」


 どこかしんみりとした空気の中、突然割り込んでくる大声。

 すっかり出来上がってしまったボブである。


「うわっ、うっさい! 何しこたま酔っ払ってんのさ!?」

「酔っとらん、わしは酔っとらんぞぉぉ!!」

「どう見ても酔っ払ってるっての!」


 などと、あしらいながら。

 ふと、思い至る。

 彼もまた、あの時を知る一人なのだと。

 そういえばあの時も、別の色で号泣していたなと思い出す。


 これもまた、ここまで続いた縁なのだろう。


「ボブ、落ち着いて……」

「これが落ち着いていられるかぁ! 二人とも、幸せに、幸せになるんじゃぞぉぉぉ!!」


 もう、グダグダである。

 けれど、そんな空気が、心地よくもある。


 騒ぎの中心から少し離れて、ドミニクは窓越しに空を見上げた。


 そこにあるは、蒼く輝く月。

 まるで、あの日のような輝きは……昔を思いださせて。

 それでいて、感傷は覚えども縛られるような感覚は、ない。

 

 ……ようやっと。

 ようやっと未来へと向けて踏み出せた。

 そんな感慨を、ドミニクは得ていた。


「月が、綺麗だよ」


 それからドミニクは、かつての相棒の名前を口ずさむ。


 今日は、月が綺麗な夜だ。

 そして、きっと幸せな夜だ。


 少しばかり笑みをこぼしながら、ドミニクは酒杯を煽った。

※実は、ひっそりと外伝を投稿しておりました。

 ドミニクの過去編、下にリンクを貼っておりますので、よろしかったらお読みいただけたらと思います!!

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