月はきっと、見守っている。
※時系列、前後しております。
結婚式直後、披露宴の二次会三次会、四次会なところだとお考えください!
「ほんっと、あんた達は仲睦まじいねぇ」
結婚式の後、二次会、三次会と宴は進み。
大体の人間が酔いつぶれている中、ドミニクはしみじみと呟く。
彼女の視線の先にいるのは、ぴったりと寄り添いあうレティとエリー。
これだけの長時間、全く熱を失っていないのは、若さゆえか。
それが、少しばかりドミニクには眩しい。
もしかしたら、こんな選択もあったかも知れない、と思ってしまったから。
けれども、それは訪れることのなかった世界で。
それが間違いだったかと言われれば、どうにも答えにくい。
酔いに耽り、そんな思考を巡らせていたら。
不意に、エリーから声をかけられた。
「やだドミニクさんったら、ラブラブ最高カップルだなんて、そんなそんな」
「いやいや、言ってない、そこまで言ってないっての」
きゃっ、と弾けそうな声音で言われ、流石のドミニクも呆れたような言い方しかできない。
けれど。
今この時だけは、彼女達が最高に幸せな二人なのだろうことは、認めざるを得なかった。
だからこそ。
かつての時間に思いを馳せてしまう。
「……ドミニク師匠? なんだか……寂しそう」
不意に、レティから声を掛けられて。
内心で慌てながら、ドミニクは表情を整える。いつもの彼女としてのそれに。
「この歳になるとね、若い二人の姿を見ると感慨深くなっちまうもんなんだよ」
「そうじゃよなぁ! わかる、わかるぞぉぉぉ!!」
どこかしんみりとした空気の中、突然割り込んでくる大声。
すっかり出来上がってしまったボブである。
「うわっ、うっさい! 何しこたま酔っ払ってんのさ!?」
「酔っとらん、わしは酔っとらんぞぉぉ!!」
「どう見ても酔っ払ってるっての!」
などと、あしらいながら。
ふと、思い至る。
彼もまた、あの時を知る一人なのだと。
そういえばあの時も、別の色で号泣していたなと思い出す。
これもまた、ここまで続いた縁なのだろう。
「ボブ、落ち着いて……」
「これが落ち着いていられるかぁ! 二人とも、幸せに、幸せになるんじゃぞぉぉぉ!!」
もう、グダグダである。
けれど、そんな空気が、心地よくもある。
騒ぎの中心から少し離れて、ドミニクは窓越しに空を見上げた。
そこにあるは、蒼く輝く月。
まるで、あの日のような輝きは……昔を思いださせて。
それでいて、感傷は覚えども縛られるような感覚は、ない。
……ようやっと。
ようやっと未来へと向けて踏み出せた。
そんな感慨を、ドミニクは得ていた。
「月が、綺麗だよ」
それからドミニクは、かつての相棒の名前を口ずさむ。
今日は、月が綺麗な夜だ。
そして、きっと幸せな夜だ。
少しばかり笑みをこぼしながら、ドミニクは酒杯を煽った。
※実は、ひっそりと外伝を投稿しておりました。
ドミニクの過去編、下にリンクを貼っておりますので、よろしかったらお読みいただけたらと思います!!




