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64 小麦粉ってパン以外の食べ方の方が多いよね

 ラノベではイースト菌が無いから柔らかいパンが無いと言うのは定番中の定番。


 でもパンが無いと言うのは流石に聞いたことが無いから、私はすごくびっくりしたのよ。


「えっと、呼び方が違うのかな? 小麦粉を練ってそれを発酵させて膨らませたものをオーブンで焼いたものなんだけど……」


「小麦粉を練るの? 溶くんじゃなくて?」


 説明をしても、どうやらミラベルさんはピンとこないらしい。


 でも、小麦粉はこの世界にもあるよね? さっきヒルダさんが作った小麦はすべて売ってしまって代わりに芋を食べているって言っていたし。


 だからその小麦はどうやって食べているのと聞いてみたところ、納得の答えが返ってきた。


「水で溶いて薄焼きにするけど……アイリスちゃんのところでは違うの?」


「ああ、なるほど。ガレットやクレープ、インドのチャパティみたいに焼いて食べてるのか」


 異世界物ではパンが主流だけど、現実世界ではパンを焼いているのなんて欧米だけなんじゃないかな?


 日本でも昔から麦は作っていたけどパンは作らずにうどんや麦がゆにして食べていたっていうし、そもそもヨーロッパでもイタリアだとパスタやピザのイメージだもん。


 オーブンが必要なパンを作っていると頭から思い込んでいた私の方が間違いだった。


「う~ん、とりあえず現物を見てもらうのが一番かな。今の気候なら保存も効くだろうし、全粒粉のパンなら脚気の薬にもなるからなぁ」


 ミラベルさんが食事を用意してくれているようだから今のところは大丈夫だとは思うけど、やっぱりビタミンBが含まれた食料を渡しておいた方がいいと思う。


 だって少し良くなったらまた芋を食べる生活に戻って脚気が悪化してしまいそうだし。


「そうだ! ちょっと待ってて。パンがどんなものか、今から家に帰って持って来るから」


「ええ、待つのはいいけど……わざわざ持って来なくてもいいんじゃないの?」


「いや、話が出たついでだし、パンがどんなものかが解れば食事の幅も広がるでしょ。それにパンはすっごくおいしいんだから」


 私はそう言うと、メイヴィスちゃんの家を飛び出したんだ。だってストレージの中にはいろいろな食材は入っているけど、流石に全粒粉のパンは無いからね。


 ってことで家に帰ると早速台所へ……行かずにそのまま地下へ。転移ポートが置いてある部屋に入ると、そのまま城へと転移した。


 なぜかと言うと簡易料理ユニットを手に入れるためだったりする。


 この世界に来てから職業スキルの自由度が大幅にアップしたんだけど、それは料理スキルにも同じことが言えるんだ。


 ゲームだったころはバフ料理しか作れなかったけど、ここでは普通の料理にもスキルの影響が出ているのよ。


 だから自分で料理するとすごくおいしくなるのは当然として、スキルで発酵とか熟成なんかもできるようになったんだよ。


 魔法を併用すれば凍らせたり、逆に熱を加えたりもできるから料理に関してはまさに万能って感じ。


 それにね、なんと一度作ってライブラリーに登録されると普通の料理でも自動作成が使えちゃうの。


 ただ自動作成は材料が固定されてしまうのが欠点で、ぺスパの家には簡易料理ユニットは持って来なかったのよ。だってこっちでは、この世界の食材の方が使う機会が多そうだったもの。


 でもこれがパンとなると話が変わってくる。基本小麦粉はこっちのでもウィンザリア産でも同じ小麦粉と判定されるみたいだし、塩や水だってそう。


 これは全粒粉だって当然同じなのよね。それなら使う機会もあるだろうと思い直して、自販機から買って来ようと思ったってわけ。


 城に帰ってくると聞こえてくるおなじみのメキメキメキというゴーレムが木を倒している音を聴きながら扉を開けると、そこにはいつものメイドさんが。


「お帰りなさいませ、アイリス様。ミルフィーユさんに御用ですか?」


「ああ、違う違う。自販機……トレードボックスで買わないといけないものがあったから来ただけよ。だから、買ったらすぐに帰るわ」


 自販機はプレイヤー間の通称みたいなものだからNPCには伝わらないかと思って言い直すと、メイドさんとはそこでお別れ。そのまま自販機の元へと移動する。


「簡易料理ユニットは当然として、せっかく来たんだから全粒粉や持っている量が少ない食材も買い足しておくかな」


 そんなことをつぶやきながら自販機のタッチパネルを操作して何種類かの食材を購入。その際貯金箱の中身を確認してみたんだけど、


「うわっ、なんかすごい勢いで数字が増えてるよ」


 ちょっと目を離した隙に、なんと100万以上Gの表記が増えていた。


 だからと言って何がどうなるってことも無いんだけど、なんとなく遠い目をしながら自販機のタッチパネルをそっと閉じて玄関へ。


「それじゃあ、また来るわね」


 玄関ホール担当のメイドさんに挨拶をしてからぺスパの家へと帰還したんだ。



「さて、それじゃあさっさと作っちゃうかな」


 地下の作業部屋に簡易調理ユニットを設置すると、早速全粒粉パンを作ることに。


 とは言っても、他の職業ユニットとは違って簡易調理ユニットでは普通の調理はできなかったりするのよ。


 料理を作るのにはコンロやオーブンだけじゃなく、材料を洗ったり切ったりするところも必要でしょ。だから通常のユニットは普通のシステムキッチンくらいあるの。


 それを簡易化なんてできるはずも無いから、材料を上に置いて自動作成を選択すると下のオーブンのようなものの中にできあがった料理が出て来るっていう形になっているのよね。


 ってことで、材料である全粒粉、強力粉、蒸留水、オリーブオイル、塩、ドライイーストを置いて準備完了。


 人によってはオリーブオイルの代わりにバターを使う人もいるそうだけど、私は小麦の香りが強い方が好きだからこちらで。


 簡易料理ユニットを起動して自動作成を選択(このボタンしか無いんだけどね)すると、直径20センチほどの丸い全粒粉パンが5つできあがった。


「自動作成で料理を作る時は問答無用で5個できてしまうのが欠点と言えば欠点よね」


 これはゲーム時代、料理スキルで作ったバフ料理は1つで5食分だったところから来てるんじゃないかな?


 でもこんな大きなパン、一度にまるまる1個なんて普通は食べられないよね。


 そんなことを考えながら木のツルを編んで作られているバスケット型かごバックにできたばかりのパンを入れてその上から布をかけたんだけど、


「あっ、そうだ!」


 そこであることを思いついた私はストレージの中からいくつかの食材を取り出してかごバッグに追加で放り込むと、それを持ってメイヴィスちゃんの家に向かうのだった。


 読んで頂いてありがとうございます。


 レビューなどと贅沢は言いません。感想を頂けるとありがたいです。続きを書く原動力になるので


挿絵(By みてみん)


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