49 動物さんシリーズを設置しよう
前回の前書きにも追記しましたが、シャルロッテの名前が最初はシャルロットであったことが判明。
悩んだ結果、題名にもなっているということでシャルロットで行くことにして、これまでの話をすべて修正しました。
動物さんシリーズを作った日の夕刻。
そろそろ周りが見えにくくなってきたなぁという暗さになったところで、私とシャルロットは庭に出て来たの。
「よくこんなものがありましたね」
「ああ、これは元々建てる家のアプローチに使うつもりだったのよ」
そんな話をしながら30センチ四方の正方形に近い形の薄い石板、それをあらかじめ決めておいたゴーレムたちを設置する場所に置いて行く。
この世界に来たことで、家の庭を設置するかどうかを選べるようになったでしょ。
庭も一緒に出すなら機能の一つとしてアプローチを設置するという項目があるけど、家だけを置くのならアプローチは自分で設置しないといけないの。
だから城の近くにあった適当な岩を風属性の攻撃魔法であるエアカッターで切りそろえて、それをストレージに入れておいたのよ。
「でもまさか、動物のオブジェを置く台にすることになるとは思ってもみなかったけどね」
因みにこの敷石を置く場所は6枚とも家の正面にある庭にした。
だってこの家は壁も窓も破壊不能オブジェクト扱いだし、入れるかどうかも設定で選ぶことができるから正面玄関に近づいて待ち伏せする不審者だけを気を付ければいいもの。
ならばシャルロットが言っていた家の四方を守らせる意味はないでしょ。
だから見栄え重視で、正面の庭に置くことにしたってわけ。
後々畑を作ることになったら害獣対策兼案山子として一部は移動させる予定だけど、それまではうちのマスコットとして訪れる人たちを楽しませてもらいましょう。
「すべて置き終わりました」
「ありがとう。それじゃあ一度、家に入りましょうか」
暗くなってきたとはいえ、ゴーレムたちをぞろぞろと連れて歩くわけにはいかないでしょ。
家の中で待機を命じておいたから、一度戻って連れてこようってわけ。
「ところで、どこにどの子を置くかは決めているのですか?」
「そう言えば、それも決めないといけないのよね」
すぐに決まるものじゃないからと、夕食を取りながら相談。
「どの子が一番かわいいと思いますか? もしお気に入りがあれば、それを中心に据えるという手もありますが」
「う~ん。どの子もそれぞれの魅力があるからなぁ」
種類は違うけどみんなかわいいから、どれを正面に持って行くかを考えるとちょっと悩んでしまう。
「あと、ポーズも決めないといけませんね」
「それも、置く場所に寄るわね」
入り口に置くなら両手を広げたり、片手をあげて手を振っているような来客を迎えるポーズがいいと思う。
それに対して庭の奥に置くのなら、やっぱり遊んでいるように見えるポーズがいいわよね。
「ネコちゃんはやっぱり、お昼寝しているポーズがいいんじゃないですか?」
「なるほど。なら、ネコは庭に設置ね」
そんな感じでそれぞれがどんなポーズにしたらかわいいかを考えていたら、おのずと設置場所が決まってしまった。
「それじゃあ玄関でお出迎えするのは両手を広げたクマと右手を振っているポーズのトラ、家から見て右にはお昼寝しているネコと、しゃがんで何かを見ているような仕草のブタ、左には元気よくお庭を冒険しているようなポーズのイヌと座りながら鼻を使って水浴びをしているようなポーズのゾウでいいわね」
「はい。将来的にはゾウさんの位置に水場を、イヌさんの位置に小さな畑を作る予定なのでこの配置なら後で移動させる必要がありませんから」
確かに水場にゾウが居てもおかしくないし、イヌは番犬に見えないこともないしね。
「よし。それじゃあ早速、設置してしまいましょう」
食事も終わったし、場所とポーズが決まったということでゴーレムたちを連れて再び庭へ。
1体1体ポーズを支持しながら並べて行き、全部を設置し終わったところで家の玄関から庭を見渡す。
笑顔でポーズをとるゴーレムたちを見て、我ながらうまく配置できたんじゃないかなと自画自賛しながらちょっとご満悦。
「ある低度夜目が効くし、月明かりがあると言ってもこれだけ暗くてはまだはっきりと言えないけど、パッと見いい感じになったんじゃないかな?」
「そうですね。あとは日の光の下で、どのような色見になるかくらいでしょうか」
動物さんシリーズはカラフルだから、明るくなってから見ると印象も変わるんじゃないかな?
でも悪くなることは無いだろうしと、明日の朝を楽しみにすることに。
「それじゃあもうやることもないし、今日は寝ましょうか」
「はい」
そう話して家に入ったところで、シャルロットのベッドをまだ用意していないことに気が付く私。
でも使用人用のベッドをあらかじめ作ってあったので、それをストレージから出して空き部屋に仮置き。
シャルロットの部屋を整えるのはまた明日ということにして、私たちは就寝した。
そして次の日。
目が覚めた私はゴーレムたちが気になって着替えるとすぐに玄関に向かったのだけど、
「あれ? 何やら騒がしい気が」
なんか外から声が聞こえてくるのよ。
だから何事かと思い、ドアをそ~っと開けてみると、そこにはフローラちゃんとリーファちゃんの姿が。
「あっ、アイちゃんだ。おはよう」
「おはよう。どうしたの? こんな朝早くに」
「あのね、近所のおばさんがかわいいのがあったよって教えてくれたから見に来たの」
なんと。農作業に向かった人が私の庭を見て、わざわざ教えてくれたというのだ。
「あのおばさんおしゃべりだから、きっとみんな見に来ると思うよ」
「まさかぁ」
動物のオブジェを置いたくらいでわざわざ見に来る人なんていないでしょと笑うと、フローラちゃんはそんなことないよって。
「だってこんなキラキラしたお人形、見たことないもん」
「キラキラした?」
そう言われて庭先にあったお昼寝中のネコゴーレムを見てみると、確かにキラキラしている気が。
そこでフローラちゃんたちと一緒に近づいてみると、その理由が解った。
「なるほど。細かく砕いた石が小さな光の粒のように見えるのね」
新品で銀色のアイアンゴーレムの上に宝石を砕いて混ぜた透明な塗料を塗った感じに作ったおかげで、プラモデルのクリアパール塗装みたいになってるのよ。
なるほど、確かにこれなら他ではあまり見ることはないだろう。
「こんなのがお庭にあったら、誰かとってっちゃわないかなぁ」
「それは大丈夫。この子たちはどこかに持って行かれても自分で帰ってくるから」
「帰ってくるの!」
「くうのぉ?」
私が笑顔で答えると二人ともびっくり。
物は試しにとネコのゴーレムをひょいっと持ち上げて、そのままちょっと離れた所へ移動。
そこで置くと、元の位置に戻ってねと声をかけた。
するとゆっくりと起き上がるネコゴーレム。
「あっ、ほんとに動いた」
そのまま敷石の上まで移動すると、さっきまでと同じようにお昼寝のポーズに戻った。
私はその様子を見てフローラちゃんたちにほらねって言おうとしたんだけど、そこで予想外の声が。
「人形のネコが動いた!」
振り向くとおしゃべりなおばさんから聞いてきたのであろう、ご近所さんの姿が。
「あちゃあ~」
フローラちゃんたちなら教えてもいいだろうと安易に考えて、またやってしまったみたい。
この後もうわさを聞いてどんどん集まってくるご近所さんたち。
その度にあのネコの人形は動くのよと元々居た人たちが教えるものだから、防犯の魔法がかかっているのだと説明に追われることになってしまった。
「こんなことなら、びっくりさせてやろうなんていたずら心を見せるんじゃなかった」
おまけにその説明で他のゴーレムも動くことがばれてしまって大混乱。
少し離れた家の子たちまでが集まってきてしまい、その対応で忙しくなってしまった私は心の中で後悔の涙をさめざめと流すのだった。




