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逆襲聖女~婚約解消?わかりました。とりあえず土下座していただきますね♡~  作者: てんてんどんどん@★見捨てておいて コミカライズ開始★


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52話 皇位継承権争い ウィル(まじかー)

「皇妃殿下!!」


 カミラの悲痛な声が帝城に響いた。

 騎士たちに連れられていく皇妃を、必死に呼び止めたのだ。


 皇妃はわずかに振り返り――その瞳にうつるカミラを目にした瞬間、

 すぐに視線をそらすと、うつむいたまま歩き出した。


 結局──あの後。


 審議は帝国本国へ持ち越され、皇帝の指揮のもと

 セドムの民への聞き取りや現地調査が行われた。


 その結果――


 セドム北の砦の民を囮にしたのはアンヘル。

 そして、魔力をウィルに奪われて弱ったセドム貴族を殺害したのは、

 口封じのために動いたミネルバ腹心の騎士団長。


 それで全てが決着した。


 皇妃は「貴族大量虐殺の罪」で幽閉。

 騎士団長には実刑が下された。


(――どうしよう!? 後ろ盾がなくなっちゃう!?)


 皇妃が遠ざかる背を見つめ、カミラは拳を固く握りしめた。


 アンヘルの罪を軽くする代わりに、

 皇妃がほぼ全てを背負う形となったのだ。


 いままで枢機卿グレに対して強気に出られたのも、

 皇妃の存在があったから。


(――どうしたらいいの?

 リネアに前世の私と同じ失敗をさせることもできなかった。

 それに……リネアの力を奪ったはずなのに、なぜか私はリネアより弱い。)


 苛立ちを抑えきれず、自室に戻ったカミラは

 机の上に置かれた《魔族封印のペンダント》を睨みつけた。


(――もう一度願う?

 ……だめ。願うたびに魂が削られる。

 時間逆行と力奪取という大きな願いを叶えたばかり。

 これ以上は危険……)


 逡巡しつつ、ペンダントを取り出した瞬間。


 《我が必要なようだな》


 耳元で囁くような声――ずっと沈黙していた魔族の声が蘇る。


「ね、願いなんてしないわよ」


 《理解している。

 お前はもう願えぬほど魂を失っているのだろう?

 だが、今の状況……良くないな?》


 ペンダントの紫がゆらゆらと揺らめく。


「だ、だったら……何だというのよ」


 カミラは警戒して問い返す。

 甘言を聞いてしまえば、無意識に願ってしまう――それが恐ろしかった。


 《魂を奪うつもりはない。

 お前に**力を貸す“術”**を提案するだけだ》


「……提案?」


 《神殿に我が使い魔が潜んでいる。

 そいつを貸してやろう。ただし――今の我は力が弱く、指示が出せぬ。

 ゆえに、“生贄”を捧げろ。

 聖女の命を我に捧げれば、使い魔がお前を導く》


「使い魔が願いを叶えてくれるの?」


 《そこまでの力はない。

 使い魔は魔族本体のもの。お前の従属にはならぬ。

 だが――人間などとは比にならぬ力を持つ。

 やるか、やらぬか。選べ》


「その使い魔にお願いしても、私の魂は吸わないのね?」


 《当然だ。

 喰われるのは――その聖女の魂だ》


 カミラの口元がゆっくりと歪む。


 そして部屋を出ると、従者を呼びつけた。


「クレーネを呼んできて」


 嬉しそうに、そう告げた。


 ***


「今回の件、体調不良を理由に皇妃の政治介入を許した……

 余にも落ち度がある」


 帝城の会議室。皇帝が重く告げた。

 そこにはアンヘルとウィルの姿もある。


「しかし――見ての通り、余はもう長くない。

 ゆえに、誰が次期帝位にふさわしいか……見極めねばならぬ」


 皇帝の視線がふたりへ向く。


「よって試用期間を設ける。

 ウィルは聖女リネアとともに北部を。

 アンヘルは聖女カミラとともに東部を統治せよ。

 五年間の結果で、どちらが皇帝補佐――しいては皇帝に相応しいか定める」


 会議室が揺れるようなどよめきに包まれた。


(まさか……あのウィルと同列に扱われるなんて……)


 アンヘルは悔しげに奥歯を噛みしめる。


(だが、まだ有利だ。

 北部は魔物との最前線。作物も実らない。

 一方、東部は豊穣。

 カミラに祈らせれば、さらに収穫を増やせる……見てろよ、ウィル)


「よいな? ウィル、アンヘル」


「はい。かしこまりました」


「……かしこまりました」


 アンヘルはウィルを鋭く睨みつけた。


 ***


「まさか俺が皇帝候補になるなんて……」


 北部へ帰るなり、ウィルが深くため息をついた。


「おー未来の皇帝様か。これは仲良くしておかねばならぬな!」


 ギーブが豪快に笑う。


「私もごまをすっておくべきでしょうか」


 デーンも妙に真剣に腕を組んでいる。


「ウィル様なら、アンヘル皇子なんかより立派な皇帝になれます!」


 リネアが励まし、


「いやー、私がついてる時点でもう確定っしょ。覚悟しなさい」


 レティアがとどめを刺す。


「で、最初に何をするつもりなんだ。お嬢さん?」

 

 興味本位でギーブが聞くと、レティアはにっこり微笑んで。


「聖女の祈りなしでも実る作物の栽培♡ 北部に新しい耕地をつくろうかと♡」


 と、この世界においてはとんでもない提案を笑っていってのけた。


 ***


 一方そのころ、東部。


「これより東部の指揮は私がとる」


 アンヘルが宣言すると、貴族たちは歓声をあげた。


(ウィルと争うなど屈辱だが……必ず成果を上げて見せる)


「麦の作付け面積を減らす」


「む、麦を……? しかし麦は主食で――」


「心配ない。カミラがいる」


 アンヘルは収穫データの束を示す。


「普通の聖女の三倍の収穫。薬草なら倍だ。

 麦を四分の一減らし、薬草を植える。交易品として利益を確保する」


 異論は出なかった。


 なぜなら――


 カミラの豊穣がリネアの3倍に跳ね上がっている事実が確かに存在するから。


 だが──誰も知らない。


 その“成果”こそ、


 レティアが裏で魔法を使い、カミラを貶めるために操作していたものだと。

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