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逆襲聖女~婚約解消?わかりました。とりあえず土下座していただきますね♡~  作者: てんてんどんどん@★見捨てておいて コミカライズ開始★


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50話 本当の英雄


「ウィル皇子、セドムの王都まで至急との皇命が届いております!」


 伝令の声に、砦の空気が一瞬で変わった。


「皇命? それって皇帝陛下しか使えないはずだよな。

 ……なんで皇妃が?」


 ウィルが眉をひそめて書状を開く。


「それが……アンヘル皇子の偉業を祝うために、

 皇帝陛下がセドムの首都まで来ているそうで……陛下直々の命令です」


 伝令の北部騎士が答えると、レティア、リネア、アレス、ギーブが顔を見合わせた。


「はっ……なるほどな。

 民を捨てて逃げたことが帝都に知れたら終わりだ。

 戻る前に“裁いてしまえ”って腹か」


 ギーブが苦笑しながらウィルを見る。


「本来なら無視して籠城が正解だが――」


「もちろん行く♡」


 レティアが満面の笑みで即答した。


「予想はついているんですよね?どんな難癖をつけられるか」


 アレスがため息混じりに問う。


 レティアは指を左右に揺らした。


「もちろん。でもそれがいいんでしょ?

 その場で“ねじ伏せる”から楽しいんじゃない」


 と、どや顔をしてみせる。


 全員の顔が引き攣った。


「なぁアレス、俺こいつについて行って大丈夫か?」


 ウィルが苦笑いを浮かべると


「……あまりおすすめできません」


 真顔で答えた。



 セドムの首都につくなり、予想通りだった。

 レティア達は問答無用で闘技場に招かれた。

 観客席はすでに埋まり、平民も貴族も怒りの形相でレティア達を取り囲んでいる。


 皇帝、皇妃、アンヘルが高位席から見下ろす中、裁きが開始される。


「ウィル第二皇子、そして聖女リネアよ!」


 皇妃の側近、騎士団長が声を響かせた。


「そなたらは己の欲のために魔龍を復活させ、

 その罪を隠すためにセドムの貴族を 生贄にした。

 万死に値する!!」


 ざわ――――っ!!


 野次が飛び、石が投げられる。

 アレスが結界を張り、観客席を睨みつけた。


「お待ちください!

 我々は復活した魔龍に対処しただけです!

 なぜそれが罪に――」


「嘘をつけ!!」


「貴族を殺したんだろ!!」


「家族を返せ!!」


 罵声・怒号・石。


 レティアが小さく笑った。


「ふーん……

 暴徒化させて“殺されたことにする”つもりね。

 舞台装置としては悪くないじゃない」


「いや、なんで楽しそうなんだよ。

 もちろん、何とかするんだろ?」


 ぽつりといったレティアの言葉をすかさず拾いウィルが突っ込む。


「大丈夫、どうにもならなかったら――」


 レティアが拳を握る。


「力ずくで☆」


「やめろ。お前のその発想が一番怖い」


 ウィルが真顔で突っ込んだ。



「静粛に!」


 闘技場の観客席の一番目立つ位置から騎士団長が言い放つ。


「証拠映像を見せよう」


 魔導具の映像が壁一面に映し出された。


 そこには――

 魔方陣の上で、血まみれで倒れた貴族たちの姿。


 観客席から悲鳴があがる。


「見ろ!これがセドムの貴族たちの遺体だ!」


「魔力を使うため、生贄にしたのだ!!」


 騎士団長が手を挙げると、白髪の貴族――グランゼ伯爵が前へ出た。


「ウィル皇子は我が息子を殺した!!」


 伯爵が机を叩き、観客が沸く。


「そ、そんなこと――!」


 リネアが反論しかけた瞬間――レティアが手を伸ばして制した。


 そして。


「――ええ。認めます」


「「は?」」


 ウィルもリネアも素で固まる。


 観客席が爆発した。


「やっぱり!!」


「殺人者!!」


 しかしレティアは視線を逸らし、静かに続ける――


「彼らは選んだのです。」


「……は?」


「グランゼ伯爵。

 あなたの息子さんは正義感が強く、誇り高い男でした」


 伯爵の瞳が揺れる。


「領民のために戦い、勇敢に魔力をウィル様へ託した。

 ――“英雄”として」


 観客が動揺する。


「皆様、彼らの勇気を称えてください!」


 レティアの声が魔力で増幅して広がる。


「映し出された姿は“無残な死”ではない。

 ウィル様へ魔力を託し、龍を撃破したのは彼らの力があってこそ

 彼らは貴族の誇りと名誉のために自らの命をささげセドムを救った 英雄なのです!!」


 観客席がざわりと揺れ――


「誇り高い……!」


「セドムの英雄だ!」


「彼らは民を救ったんだ!!」


 空気が変わる。


 騎士団長の顔色が蒼白になった。


(何故だ……

 否定すると思ったのにまさか認めただとっ!?)


 レティアは騎士団長を鋭く指さした。


「騎士団長様、彼らは誇り高く魔力を捧げて死んだはず。

 魔力を託した時には外傷はないはずでした

 なぜ 英雄の遺体が切り刻まれた状態 で発見されたのか――」


 レティアの声が低く響く。


「説明してもらいましょうっ!!!!

 帝国の騎士より活躍したことを妬み、

 彼らの尊厳と死体を踏みにじったのはあなたたちなのではないのですかっ!!」


 叫びが――闘技場に響き渡った。

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