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逆襲聖女~婚約解消?わかりました。とりあえず土下座していただきますね♡~  作者: てんてんどんどん@★見捨てておいて コミカライズ開始★


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43話 封印に成功しました

 男は、聖女リネア・ウィル皇子・護衛の一行の後ろから歩きながら、

 ある女の言葉を思い出していた。


 ――リネアが聖なる気を注ぎ込んだら、

 皆が立ち去ったあと封印を解き、魔龍を復活させなさい。

 そうすればリネアもウィルも死ぬ。

 愚かな聖女と皇子として歴史に名が残るわ――


 目的のためなら、手段は問わない。


 男の使命は 封印を破壊し、魔龍を復活させること。


 護衛のふりをし、男は視線を巡らせる。

 シャーマンに続き、ゆっくり進むリネアの後を、静かに歩いた。


 ***


「……ここです」


 シャーマン・ガルザが導いた先――

 洞窟の奥深く。壁は湿り、冷たい空気が肌に触れる。


 中央には祭壇があり、台座に 透き通った水晶 が安置されていた。


「これに聖女の力を注げば、封印が強まり魔物を防げる……と?」


 レティアの問いに、ガルザは神妙に頷く。


「魔物が溢れ出したのは、魔龍の封印が弱まったためです」


 レティアは無言で水晶へ視線を向けた。


 次の瞬間――


 レティアの魔力が、物質に流れ込む。


 魔力構造を“見る”


 これは、レティアだけの能力。

 流れる魔力の回廊、術式、錯誤――すべてを読み取る。


(……なるほど。

 豊穣の女神の力を“封印の力”に変換する魔道具ね)


(水晶に流れた祝福が結界を補強している……仕組みは合ってる)


(でも……この世界、妙に豊穣の女神の力ばかり使う。

 封印と豊穣、結びつきが強すぎる……何かある?)


 さらに意識を奥へ潜らせ――


 ──見つけた。


 封印の底で、黒い波動がうごめく。


(封印が足りなくて、魔龍の力が漏れ出してる)


 魔力が薄れた分だけ、魔物となって外へ溢れているのだ。


 レティアは皆の視線を感じた。

 期待、緊張、そして――ひとつ、不穏な気配。


 その気配に、レティアは くすり と笑った。


「わかりました。力を注ぎます」


 レティアは豊穣の女神の力を、水晶へ流し込んだ。


 ***


「……魔物が消えた」


 封印を終え、外へ出る。

 山肌を覆っていた魔物は跡形もなく消えていた。


「魔物は魔龍の怨念が漏れ出したもの。

 魔力が断たれ怨念が外へ出られなくなったことで、存在が消滅したのです」


 シャーマンが誇らしげに言う。


「良かったですね、ウィル殿下! これで鉱山の採掘ができま――」


 リネアが笑顔で振り返る。しかし――


 ウィルは秘密の入口をじっと見つめていた。


「どうかされましたか?」


 レティアが“聖女の顔”で問う。


「いや……なんだろう。うん、いや、なんでもない」


 そう言ってウィルはばつが悪そうに頭をかいた。


***


(それにしてもよかった。これで魔物もいなくなったし、魔龍が復活することもない)


 魔物が消えたのを確認するため、私達は少し小高い山の頂にきていた。

 目視したかぎり、魔物がいる気配はない。


(これで鉱山の発掘ができる。これならレティアさんも魔法が使いたい放題に――)


 と、考えた途端。


「よくやった。リネア」


 不意に、声が響いた。


 リネアの背筋が凍る。

 顔を上げると――


 なぜか、北部と隣接する都市セドムにいるはずの アンヘル皇子 が兵士を引き連れ立っていた。


「アンヘル殿下、なぜここへ?」


 レティアさんが静かに問う。


 私は神官の法衣を着て、ベールを下げている。

 顔を隠せば気づかれないはず。


(どうして……ここに?)


 北部と隣接する領地に滞在しているとは聞いていた。

 だがこのタイミング、この場所。


 まるで 封印の存在を知っているかのように。


(……噂が広まるのが早すぎるってレティアさんが言ってたけど

 まさか、裏でアンヘル皇子が動いてた?)


「なぜ来たって?決まっているだろう」


 アンヘル皇子は満足げに微笑んだ。


「僕が君に頼んだんだ。

 君がやり遂げたのなら、ねぎらうのが当然だろう?」


(……は?)


 その場にいた全員が息を呑む。


(――そうか!

 魔龍封じの手柄を ウィル様から奪うつもりだ!!)


 私はアレス様を探す。

 だが――いない。


 そういえば、先ほど周囲の安全確認のため

 ウィル様、北部側、神官側と三手に分かれてしまっていた。


 この場にアンヘルを止められる人間がいない。


「アンヘル殿下が頼んだ?どういうことでしょう?」


 レティアさんがにっこりと微笑む。


「怪我なんてしてないんだろう? リネア」


 アンヘル皇子が冷たく遮った。


 レティアさんの手が、一瞬だけ止まる。


「暗殺者に襲われた君を守り、食料支援を続けたのは僕の命令だ。

 もし怪我が嘘だと知れたら――どうなると思う?」


 低く、静かに、脅しのみを込めた声。


「鉱山再開まで最低二年。

 北部の食糧難はこれからだ。

 僕が支援をやめると言えば、冬は越せない」


 空気が凍りつく。


(酷い……北部の人を人質に、手柄を要求してる……)


 私はレティアさんを見た。


 レティアさんは、悔しそうに拳を握り――そして、


「わかりました。アンヘル殿下の指示で、

 シャーマンの案に乗ったことにいたします。

 ……ですので、食糧支援は確実にお願いいたします」


(そんな……レティアさんが負けた……?)


 唇を噛む。


 だが、レティアは微笑んだ。


「ですが」


「……ですが?」


「口約束では困ります。

 書面にて、食料支援を二年間継続すること、

 今回の魔龍封じが殿下の命によるものだとしっかり署名捺印おねがいしますね」


 そう言ってレティアは書類をさしだした。

 満面の笑みをうかべて。

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