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逆襲聖女~婚約解消?わかりました。とりあえず土下座していただきますね♡~  作者: てんてんどんどん@★見捨てておいて コミカライズ開始★


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41話 交差する記憶

「ウィル様。地質に詳しい地元の者がお目通り願いたいと」


 リネアが酔いつぶれて眠った夜更け。

 何とか寝かしつけて、みなでくつろいでいた頃、北部の騎士がウィルへ報告に来た。


「俺に?」


「はい。鉱山について話があるらしく……」


「身元は大丈夫なのか?」


「鉱山近くに住むシャーマンです。

 帝都では馴染みがない職ですが、この土地を鎮める儀式を行う者です。

 土着宗教とでもいいましょうか。

 どうしても鉱山について説明したい、と」


 ウィルはちらりとレティアを見た。


 その瞬間――


 ぐらり、ウィルの視界が歪む。


(そんな胡散臭い奴の話、聞かない方がいい)

(何言ってるのよ! 鉱山をなんとかできるなら聞くべきでしょう!?)


 ――頭の奥に、知らない男女の声が響く。


(誰だ……?)


「どうしました? ウィル殿下?」


 レティアの声で我に返る。


 さっきの感覚は映像のようでもあり、ただの音のようでもあったが、思い出せない。


「……悪い、ぼーっとしてた。で、何だっけ?」


「シャーマンの話を聞くか、断るかです」


 ウィルは顎に手を当てる。


「どうする? 俺は、なんとなく会わない方がいい気がする」


 普段ならレティアに丸投げするウィルだが、今回だけは胸騒ぎがする。

 レティアは少し考え、アレスへ視線を送った。


 アレスは静かに言う。


「殿下は霊感の強い母君の血を継いでおります。

 嫌な予感がするのなら、それも理由の一つかと。

 ……ですが私は会って話を聞き、警戒すべきだと思います」


 レティアも頷く。


 ウィルはしばらく考え――


「わかった。会ってみよう。

 ただし、リネアとアレスも同席させてくれ」


「承知しました」


 騎士は深く頭を下げた。


 ***


「謁見を許していただき、感謝いたします」


 現れたのは、全身にジャラジャラと装飾をつけた白髪混じりの老人だった。

 名はゲルガ。この地を治めるシャーマンだという。


 彼は淡々と語り始めた。


 ――自分たちシャーマンの一族は、代々あの鉱山に魔龍を封じてきた。

 ――だが、制止を無視して鉱山を掘り進めたため、魔物が湧いたのだ、と。


「聖女リネア様が鎮魂の儀式を行えば、魔龍の封印は再び強まりましょう。

 魔物も姿を消すはずです」


 もしそれが本当なら、ウィルにとって喉から手が出るほど欲しい情報だった。


「何故そんな話を俺に? まずは北部の領主に話すべきでは?」


 問いに、ゲルガは深く首を振る。


「領主様にはすでにお伝えしましたが、相手にされませんでした。

『そんな保障のない情報に兵士の命を預ける価値がない』と……」


 北部は今、防衛で手がいっぱいだ。

 余裕がないのだろう。


 ゲルガは必死だった。


「ですが、時間がないのです。このままでは――

 深き暗黒の魔龍が地を覆うと、我らの言い伝えにあります。

 どうか、鉱山最深部で儀式を。聖女リネア様の力が必要なのです」


 深々と頭を下げる。


 ウィルはレティアへ視線を送った。


 ゲルガからは悪意が感じられない。

 魂も濁っていない。だが――引っかかる。


 レティアは微笑んだ。


「神殿としてシャーマンは認めていません。

 ですが、この地を救いたいという想いは同じ。

 ……引き受けてみてはいかがですか、殿下?」


「……わかった。引き受けよう」


 ウィルの言葉に、ゲルガは深く礼をした。


 ***


「ごめんなさい。昨日のこと、全然覚えてなくて……」


 次の日。皆の集まった食堂でリネアは頭を押さえながら、申し訳なさそうにウィルたちへ謝る。


「まぁ気にしないで。それより――リネア」


「はい?」


「貴方も、アンヘルに仕返しする気はある?

 あるなら、手伝ってもらうけど」


 レティアの問いに、リネアはぎゅっと拳を握る。


 そして――


「……はい!! 精一杯がんばります!!」


 勢いよく頭を下げ、笑顔を見せた。


 その様子に、ウィルがぽつり。


「女って……怖いな」


「激しく同意しますね」


 アレスが真顔で頷いた。

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