32話 バカ皇子<(あの子かわいい!) 部下<(もうやだこいつ)
「随分活躍したみたいじゃない?」
新聞を見たレティアが、リネアににっこり微笑んだ。
その笑顔にリネアの頬がひきつる。
お祭りが終わった次の日。
逃げた魔物を全部吹き飛ばしたことが新聞に祭りのピンチを救ったヒーローとして大大的に新聞に載ってしまった。
もちろん少女Aとなっていて名前や似顔絵まではでていないのだが、それでも、目立ってしまったことには違いない。すでに広場で魔物を全部倒して、逃げた事はレティアに話してはいたが、その時は「眠いからまたあとで」と詳しく話せなかった。
朝になってリネアとウィルが呼ばれて二人でレティアの部屋に行くと開口一番いわれたのだ。
「よくやったわ。流石私の相棒よ」
と、ガッツポーズをとるレティア。
「お、おこらないのでしょうか?」
「なんで? 目の前にくる敵はその場で速攻容赦なく叩き潰す。素晴らしいことじゃない。まぁ私はそれやりすぎて、敵がいなくなちゃったから、今回は育てる方針ではあるけれど、基本的に気に入らないやつはその場で鉄槌は大賛成」
「また恐ろしい事を言ってるよこいつ……」
レティアの言葉にウィルが薄目で突っ込む。
「悪・即・殺よ。気に入らない者はその場で理由をつけて叩き潰すが前の世界でのモットーだったし」
「そりゃ誰も逆らわなくなるだろ」
ウィルが突っ込むがレティアは気にした風になく、リネアの手を取る。
「とにかく、早速ボディが役立ってよかった」
「はい、ありがとうございます!あ、でもちょっと強すぎるような」
リネアがそう言ってあははと苦笑いを浮かべる。
「問題ないわ。あの場で霧散させておかなければ、被害がでるとAIが判断してあの行動になったはずだから」
「そんな事までできるのですか?」
「まぁ、AIの思考ベースが私の思考回路なんで必ず最適解ってわけでもないけどね。私ならそうしてたっていう行動とってるわけだから、私が怒るわけないでしょ?」
「つまり、最初の褒めは自画自賛ってことかよ」
ウィルが突っ込む。
「もちろん。私ほど自分大好きな人間はそういないわ。常に自分を褒め称えているから」
「いや、それ胸張って言う事じゃないぞ」
ウィルがはーっとため息をつきながら言うのだった。
***
「あの少女の正体はつかめたか?」
皇城のアンヘルの部屋で、アンヘルに問われ、部下は首を横に振った。
豊穣祭で、魔物を倒していた美しいピンク色の髪の少女。あの少女に会いたいと、アンヘルが騒ぎだしたのだが、部下たちが現場に駆け付けた時にはもう少女の姿はなかった。それからというもの、アンヘルは少女を探せとうるさいのだ。
(少し前はリネア様を見張れといったり、気移りしすぎなのでは?)
部下はそう思うが口をつぐむ。
カミラと付き合う前までは、リネアという婚約者がいたにもかかわらずカミラを気にしていたのに、カミラと婚約した途端リネアや別の女性に気が向くのは流石に不誠実すぎないだろうか?
「新聞社や警備兵も探しておりますがなかなか見つかりません。ピンクの色の髪という珍しい特徴があるのでそう時間はかからないと思います。もう少しお待ちください」
部下は深々と頭を下げるのだった。








