こんにちは、アンダーワールド(3)
「……炎陣の術……ッ!」
「…………ッ」
リュウは残像が見えるほどの速さで印を組み、術を発動した。大男を取り囲むようにして炎が噴き上がる。彼はほんのわずか、身動きを止めた。
「もらったぜ! 影千本……ッ!!」
シオンが影を操って、少しばかりの隙に狙いをつける。一本の太い影が虫を捕食するハエトリグサのように、グワッっと何本もの細い糸に分裂した。
大男を串刺しにしようと、鋭い影先で襲いかかる。
しかし。
「…………ふんぬッ!!」
大男はその強靭な肉体で炎の壁を突っ切り、凄まじいスピードですべての影を叩き潰した。すべては、その拳一つで、である。
「くっそォ……あの野郎はバケモンかよ!」
「……襲撃された時と同様、全力でかからないと俺たちに未来はない」
憤慨するシオンに、リュウはそう助言を与えた。
リュウの言う通り、メラメラと燃える炎を背にして立ちそびえる大男の姿は、さながら百戦錬磨の覇者だ。修行して強くなったリュウたちでさえ、力を出し切っても大男の足元に及ぶかどうかは分からない。
ともすれば、対策は一つである。
「……炎竜鎧の術!!」
「瞬雷風の術!!」
二人が術を唱えた瞬間、嵐と雷を伴って炎の身体を持つ双竜が現れた。
双竜は火花を散らしながら、リュウと一つになるように彼の身体を包み込んでいく。
雷は轟音を起こしながら嵐に導かれ、シオンの真上に落下した。
自然なる力を纏った二人が、姿を現す。
一人は、竜の形をかたどった紅蓮の鎧に身を包み。
一人は、烈風と電撃を従え、髪を逆立てて。
二人の戦士が、雄叫びをあげる。
「……よっしゃァ……ッ!!」
「勝負はここからだぜ……ッ!!」
「ちょっと待ったぁ……ッ!!」
「「えぇ!!?」」
久しくも恰好がつき、心をたぎらせていた男子たちに水が差される。声の主が、二人の肩をバシッと快活に叩いた。
「私だって戦えるんだから! 二人だけで盛り上がらないでよね~!」
「「……うっ」」
二人の男子が、嫌なところをつかれたとばかりに顔を歪ませる。
けれど今度は、すぐに口が歪む。
「……あぁ、そうだなナツミ!」
「三人であのバケモノを倒そう!!」
「お~ッ!!」
三人の気持ちが今ひとつとなり、勝利に向かって走り出した。




