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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第4章 王宮の手触り
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こんにちは、アンダーワールド(1)


 リュウがライオネルと出会う、二日前のこと。

 さらわれたリコを取り戻すべく、リュウとナツミそしてシオンは大男の背中を追いかけていた。


「……ハア、ハアッ。 くそ……ッ!」


 でかい図体をしている割に、大男の駆ける速度ははやい。それに、体力も相当あるらしい。走るそのフォームに一切のブレがない。

 彼はまさしく精錬され磨き上げられた戦士だ。


「リュ、リュウ! あれ見てっ!」

「……もうこんな近くにまで来てたのか」


 並走しているナツミの指さす先には、例の白い王宮がそびえたっていた。

 それを一目見たシオンの顔に、しわが生じる。

 心境を察したリュウが彼に一声かけようとするが、


「覚悟はできてる、よな……?」


 重ねるようにして、シオンが言葉を発した。

 リュウやナツミに投げかけたのか、それとも自身に問いかけたのか。

 駆け抜ける森のどこかから、ガサリと音した。

 夕闇に遊ぶ、一筋の風だった。

 通ってきた細道がひらける。

 森の中から、リュウたちは飛び出した。

 出口の外は、王宮の裏側のようだ。

 裏口のそばで、二人の人物がやりとりをしている。


「…………頼んだぞ」

「承知いたしましたわ」


 彼らの視界に入ってきたのは、リコをさらった大男と、黒いローブを纏った小柄な人物だった。声からして、シオン達よりも少し年上の女性だろう。

 小柄な人物は、大男からリコをお姫様だっこの形で受け取る。


「追い詰めたぞ! リコは返してもらう!!」


 三人の中から一歩踏み出して、シオンが咆哮した。

 大男とローブの女性の視線が、彼に向く。

 ふと、ローブの女性から声がこぼれた。


「……あら、王さまじゃありませんか。久しぶりですわね」

「…………?」


 この上品な声に、シオンは聞き覚えがあった。

 ずっとずっと前の記憶。

 記憶をなくす前の彼が仲よくしていた、誰か。

 彼女の顔は、黒いフードに覆われていて見えない。


「…………任務に私情をはさむな。行け」

「もう、仕方ありませんわね。それでは」

「あ……っ!」


 声をかける前に、リコを抱えた女性は裏口を通り抜け、王宮の中へと消えていった。懐かしき想いで心がいっぱいになったシオンは、ただその後ろ姿を見つめるだけだった。


「……バカ! 何見とれてんだよ! リコを連れていかれたじゃねえか!」

「あっ! しまった!?」


 呆然とするシオンの背に、リュウがバシッと気合いを入れる。

 リュウに続き、ナツミが肩を並べた。


「二人とも、早くあの人を追いかけよう!」

「……あぁ」

「だねっ!」


 王宮の中に連れ込まれたリコを追いかけようと、再び足を動かそうとするが。

 三人の前に、一人の猛者が立ちふさがる。


「……やっぱり。このまま簡単に通してくれるはずがないよなァ……ッ」


 リュウは思わず舌打ちした。

 一方、大男はその無情な言の葉で、こうつぶやく。


「…………アクト1終了。これよりアクト2に移行する」

「……来るぞッ!!」


 歴戦の覇者との戦いが、始まる。

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