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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第3章 思いがけない邂逅
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ハナれていく仲間(5)

「僕たちもこのまま王宮に向かう。シオンやハナちゃんたちと合流するんだ」

「合流ですか……?」

「私たちも、ってことだよね?」


 唐突な僕の発言にギンとアミちゃんがキョトンとする。

 しまった!

 合流する以前に、ギンたちが僕らについてくるって決まったわけじゃないんだ!


「やや、急に変な事って言ってごめんっ! あのその、もしよければ協力してくれないかななんて思ってたわけで別に無理強いしてるとかそんなわけじゃなくて――――」

「コーくんっ、あわてすぎだよっ! 落ち着いてっ」

「う、うんっ。ありがとイッちゃん」


 目をグルグル回して混乱する僕を、イッちゃんが落ち着かせてくれる。

 リュウたちと違って、僕はすぐテンパるなぁ……。

 はぁ…………。

 自身の不甲斐なさに肩を落とす。

 僕の周りは怨霊が漂っているようにドンヨリと濁りを見せる。

 だけど、ギンたちは意外とそうでもなかった。

 彼らはふふっと笑みをこぼしながらこう言う。


「まったく。見た目だけでなく、中身まで王にそっくりですね」

「おもしろい人だよね! 私、結構好きだよ!」

「ほ、褒められてるの、かな……?」


 重苦しかった雰囲気が浄化され、今となっては恋しい温かな空気に包まれる。

 ほっこりした気持ちになったところで、ギンが咳ばらいした。

 温かな空気の中に、心地の良い緊張感が生まれる。


「わかりました。私たちもついていきましょう」

「ほんとに?」

「もちろんです。ちょうど、王もいらっしゃるようですしね…………(会ったらどんなおしおきくれてやりましょう)」

「あ、あはは……」


 小声で呟いたギンの独り言に、僕は苦笑いを浮かべた。

 隣では、イッちゃんとアミちゃんが仲良さげに手をとりあっている。


「これからよろしくね、イネ!」

「わたしのほうこそっ、アミっ!」


 にひひーっと無邪気に笑いあう二人。

 その様子だけでも、僕の乾いた心は満たされた。


「あのねーイネ。私、探してる人がいるんだー」

「えっ、そうなのっ? 教えて教えてっ」


 女の子たち二人はおしゃべりに夢中のようなので、僕はギンと今後の打ち合わせをする。


「ねぇ、ギン。ここから王宮までどれくらいなの?」

「そうですね……この旅館からゆっくり歩いて半日、急いで三時間といったところでしょうか」


 顎に手をあて、青い瞳をスッと細める。

 イッちゃんたちの体力を考えて、大体五時間くらいか。

 今からでも出発すれば、ハナちゃんの背中が見えてくるかもしれない。

 となれば、今すぐにでも動き出したほうがいい。


「…………あれ?」

「どうされましたか?」


 ふと窓の外を見て、疑問が生じる。

 途端、それは焦りへと変貌した。


「ちょっと待って!? もう太陽が昇ってるじゃないか!!」


 僕の意識が途絶えたのが夕方ごろ。つまり、ちょうど日没の時間帯だったはずだ。真っ赤な血の海が、出始めた月光に照らされていたのをよく覚えている。

 間違いない。

 僕が眠っている間に、夜が帰ってしまったんだ。

 しかし。

 追い打ちをかけるようにして、僕は衝撃の事態を目の当たりにする。


「ウシオさん。現在は午前十時です。あなたが眠ってしまったあたりから換算すると、まる二日半経ったことになります」

「二日だって……!? 僕はそんな長い間意識を失っていたの!?」

「はい」


 信じたくなかった。

 だけど、これが現実だ。

 立ち止まっているだけじゃ、前へは進めない。

 むしろ、時間という冷酷な悪魔のせいで、後退していることになる。

 一刻でも早く、動き出す必要があった。


「えぇ……っ!? アミちゃん、その人ってっ!」

「なになにイネ! もしかして何か知ってる感じなの!?」


 なにやらイッちゃんたちも驚いているようだけど、お喋りはもう終わりにしないといけない。

 僕は焦燥にかられ、彼女たちの会話に水を差した。


「ごめん二人とも! 今すぐ王宮に向かうよ!」

「ふぇっ?」

「ちょっ、急展開だね!?」


 あっけからんとしている二人だが、この時の僕はなりふり構っていられなかった。

 急かすようにして、頼み込む。


「お願い! 早くしないと気が気でならないんだ!」


 何が僕をここまでにさせたのかはわからない。

 もしかすると。


 ――――本能の部分が、嫌な予感を覚えていたのかもしれない。


 無理やりにでも頼み込む僕。

 そんな情けない頼み事にも、彼女たちは嫌な顔を一つせず了承してくれた。


「よっし! 私、頑張っちゃうぞー!」

「うんっ! わたしも負けないっ!」


 アミちゃんに続き、イッちゃんも気合いをこめた。


 ――ポツリと。



「わたしは、もう――――――」



 何と言ったのか聞き取れなかったが、この時のイッちゃんの表情を、僕は見たことがなかった。


「ウシオさん。私も準備万端ですよ」


 ボーっとしている僕にギンが声をかけてくる。

 こんなところでボーっとしていちゃいけないな……っ!

 ぺちっと両頬を叩き、気合いを入れなおす。

 身体の芯に力を込め、僕は声をあげた。


「みんな! いくよッ!」

「「「おぉーーーっ!」」」


 その場の声が、綺麗に力強く重なった。

 窓の外に昇る、さんさんと輝く太陽に向かって、僕は言う。


「待っててね、シオンたち。ハナちゃん……っ!」



 *



 同時刻。王宮内のとある場所にて。



 ……ガシャンッ


 ガシャンッ……


 ガシャシャシャシャシャシャンッッ!!



 檻をこじ開ける音が、虚しく鳴り響く。

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