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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第3章 思いがけない邂逅
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ハナれていく仲間(1)

 どれくらいの間、僕はここにいるのだろう?


 何もない真っ白な空間に、ぼんやりと漂っている。肌も髪も白くなったから、空間に溶け込んで僕という存在が消えてしまいそうな。

 かといって、四六時中同じ状況だったというわけでもない。

 時には周りを全て塗りつぶす黒に染め上げられ、僕という生命が浮き彫りになったような。

 時には嵐が襲いかかり、ぐちゃぐちゃに弄ばれるような。

 ただ、どんな環境にあっても、僕は僕でしかなかった。

 僕という存在が、消えることは無かったんだ。



 ――――生きるということは、つまり、そういうこと。



 こうやって手を伸ばしたところで、何かを掴めるわけでもない。


 むにっ


 …………。

 掴めるわけ…………(むにっ)


「なんかつかめたんですけどッ!!?」


 あまりに衝撃的な出来事に、僕の意識は覚醒した。

 カッと目を見開いて、勢いよく上体を起こす。


「…………ほえ?」


 次の瞬間、辺り一面は一変していた。真っ白だった空は木製の天井に、どこまでも続く水平線はふすまに豹変している。

 どこかで見たことある光景。

 ここって……。


「宿屋なのか――――」

「どこ触ってるのコーくんっ!!」

「くうがっ!?」


 部屋の中を見回していると、突然ほっぺたに痛みが走った。衝撃のままに、僕は身体を回転させてゴロゴロと転がっていく。


 ガッ


「いっつぁ!?」


 壁に頭をぶつけ、ぷくりとこぶが出来上がった。

 涙をこらえながら痛みが引くのを待っていると、トタトタと誰かの足音が聞こえてくる。


「だ、大丈夫コーくんっ!?」

「……っ」


 その可愛らしい姿を見て、僕は息を呑んだ。眠っていたはずのイッちゃんが目を覚ましていたからだ。

 慌てふためいて何も言えない僕とは対照的に、イッちゃんは滔々(とうとう)と口を動かす。


「ご、ごめんねっ! いきなり胸を触られちゃったからつい反射的になって……っ!」

「む、むね……?」


 彼女の言葉を反芻しながら、柔らかい感触の残った左手を見つめる。

 さっき何かを掴んだと思ったけど、それって……。

 …………。

 無意識のうちに、ワキワキと指を動かしてみた。


「……(タラーっ)」

「思い出しちゃダメっ!(ペチイっ!)」

「あぎとっ!?」


 ぼくおっぱいもんだんだーなんて自覚したから、ついつい鼻血が出ちゃったよ。

 流れ出る鼻血をおさえながら、その手についた血を見て。

 ウロコなんてない瑞々しい自分の腕に気がついて。


 ――――すべてを思い出した。


 さぁっと顔から血の気が引くのを感じる。

 僕は夢中になって、イッちゃんの肩を掴んでいた。


「イッちゃん! ハナちゃんは!? ハナちゃんはいったいどこにいるのっ!?」

「い、痛いよコーくんっ」


 彼女が苦痛の表情を浮かべていることにさえ気づかないほど、僕は焦燥にかられていた。


「こらっ! か弱き乙女に何をするかー!(ガツンッ!!)」

「efあえ*hふぉ?oae☆」


 意識を根こそぎ持っていかれるくらいの衝撃が、脳天から足の指先にむかって駆けていく。

 そうやって我に返った僕に、声がかけられた。


「まったく……これだから王は困ったお方なのです」


 声の主は、戦っているハナちゃんのもとへ戻ろうとした際に離れてしまった、


「ギ、ギン! それにアミちゃんまで!?」


 黒い執事服に身を包んだ銀髪のギンと、高級な大坪を両手で抱えているアミちゃんだった。

 …………まさか、それで僕の頭を?

 色んな意味でショックを受けている僕に、イッちゃんが説明してくれる。


「この人たちがねっ、倒れたコーくんを運んでくれたんだよっ?」

「倒れた僕を?」

「うんっ」


「――――ハナちゃんと戦って意識を失ったコーくんをっ」



 それから僕は、自我を失った後の話を聞くことになる。

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