強襲(3)
「はぁ、はぁっ」
「くそ、どこに行ったんだ!」
夕日の差す白い街の中を、僕とハナちゃんは駆け巡る。
イッちゃんを誘拐したユーリと呼ばれる少女はこの街のどこかにいるはずなんだ。早く見つけないと!!
「はぁ、はぁっ……」
「ハ、ハナちゃん? 大丈夫?」
息を荒げるハナちゃんの姿を見て、ハッと気づいた。
僕たちのように毎日修行しているわけではない女の子にはつらいんだって。とても当たり前の事なのにどうして気づかなかったんだろう。
しかし、僕の考えていることを読み取ったかのようにハナちゃんは首を横にふる。
「だ、大丈夫ですわ。このまま見つけ出しましょう」
「で、でも……」
「そうでもしないとイネの身に何が起こるかわかったものじゃありませんわ!」
「…………」
イッちゃんやリコちゃんが人質に取られてから、ハナちゃんの様子は少しおかしい。不安や助けたい気持ちがあるのは当然なんだけど、それとはまた違う何かを感じる。
……そうだとしたら。
「じゃあハナちゃん。また走り出そうか」
「はいですわっ!」
「ただし…………」
「え? きゃっ!」
「こうやっておんぶしながらね?」
僕がハナちゃんを背負っていけば、しんどくないだろうし、こっちのほうが速く動ける。
「えっ、あのっその!」
「ん、なに? ダメだった?」
「そ、そんなことありませんわっ! ……で、でもその。恥ずかしいというか……」
僕の肩越しに、震えた甘い吐息がかかってくる。
か、かわええ……。
「そ、それよりも! コーさまの体力が心配ですわ!」
「僕は大丈夫さ」
「で、でも……」
なんとか納得させようとはするが、ハナちゃんは渋って素直に了承してくれない。
うーん、そうだなぁー。
「ほらっ。ここでハナちゃんの体力がなくなったら、いざというときに戦えないでしょ? 僕、ハナちゃんの力を頼りにしてるんだよ?」
「うぅ……でもぉ…………わかりましたわ」
よっし、説得完了!
「それじゃあハナちゃん。イッちゃんを助けに」
「コーさま」
「ほえ?」
「――――ありがとうございます」
僕の背後から、優しい声色でそう言われた。
「こちらこそ、だよ」
お互い顔を合わせることもなく、心を通わせる。
「じゃ、改めていこっか…………アレ?」
「どうしたのですか?」
「いや、なにかを感じたような……」
その場から走り出そうとした時、突然経験したこともない感覚が僕を襲った。
これは……なんだろう? 熱い? 冷たい?
近くで熱を持った何かとそうでない何かが動いているのを感じ取れる。目をつむり、神経を集中させている僕を怪訝に思って、ハナちゃんが呼びかけてきた。
「コーさま…………?」
「ハナちゃん! もしかすると見つけたかもしれない!」
「どうして分かるのですか?」
「なんか、感じ取れる気がする! 人にはない第六感が目覚めたのかもねっ!」
「は、はぁ……?」
あっ、やばい。
ハナちゃんが悲しそうな視線を送ってきている。
「と、とにかく! そっちのほうに行ってみよう! 急にスピードを出すから気をつけてね?」
「しょ、承知しましたわ(ぎゅっ)」
「おぅ……」
女の子独特の柔らかい感覚が背中に走る。
さらにはお花のいい香りがしてきて…………。
「よっしゃあああ! 出発だぁぁぁあ!」
噴出しそうになる鼻血を抑えて僕は駆けだした。
僕も成長したね……っ!




