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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第2章 動き出す世界
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強襲(2)

「きゃああああっ!!」

「え……ッ!?」


 僕たちが交戦していると、避難しているはずのイッちゃんたちの悲鳴が聞こえてきた。

 まさか……外で何かが起こったのか!?


「…………貴様らと戦っている暇はない」

「なに……ッ!?」


 大男は地をはじき、その体格からは想像もできないほどの速度で駆けだす。


「……行かせるかよッ! オラァ……ッ!!」


 ゴゴゴゴゴ……ッ


 リュウはさきほどよりも一回り大きい鉄格子を、三重にも連ねて生み出した。修行の時では、僕の氷竜の術でも破れなかったリュウの大技の一つだ。

 なのに。


「…………作戦を続行する」


 ズモモと、ヤツの剛腕が変化していく。

 それはまるで、圧倒的なパワーを秘めたゴリラの腕だった。


 バギギィィィィィィッ!!!


「ぐあ……っつ!?」

「リュウ!」


 三重にも連なった堅固な壁を壊された衝撃で、リュウが倒れる。

 そのままの勢いで、漢は外へと飛び出していった。


「大丈夫、リュウ!?」

「……あぁ。それより、女子の安全が最優先だ!」

「だな! 急ぐぞ!」


 シオンを筆頭に僕たちは焼き尽くされる隠れ家から走り出す。


「……ナツミ!」

「リュウ……っ!!」


 夕焼けに染まった空の中で待っていたのは最悪の光景だった。

 外には先に出ていった大男と、ビキニに包帯まみれの褐色肌をした見知らぬ少女が離れた位置にいた。

 それも。


「コーくんっ!」

「ウシオお兄ちゃん!」

「くっそッッ!!」


 イッちゃんとリコちゃんが人質に取られた形で、だ。

 包帯まみれの少女は年齢に似合わない妖艶な微笑みで隣の大男に話しかけた。


「フフフ……これで我々のお仕事は完了かしらぁ?」

「…………あぁ」


 仕事、だと……?

 会話の中の違和感に僕は眉をひそめた。

 ハナちゃんも同じように感じたようで、


「あなたたちの目的は一体なんですの!?」


 と、叫んだ。

 しかし、少女はクスクスと微笑するだけで何も答えない。


「あんたたちは何者っ!?」

「…………貴様らに教える必要はないな」

「くっ!!」


 あくまでもこいつらは、作戦とやらを遂行し続けるようだ。


「…………ユーリ。作戦を続行するぞ」

「はぁーい」

「あっ!」


 大男はリコちゃんを抱え、その場から走り去っていった。

 ユーリと呼ばれたその少女も、


「ほぉら。あなたはぐっすり眠ればいいのよぉ?」

「ふわぁ……」


 十字架のような金属のスティックを使い、何らかの方法でイッちゃんの意識を奪った。

 続けて少女は、コンコンと地面をたたく。


「ザイちゃーん。出番だよぉー」


 ズゴゴゴゴっと大地が揺れ出し、ひび割れた部分からサイの見た目をした2メートル近くのバケモノが姿を現す。

 こいつはまさか、獣人!?


「そぉーれ、にっげろぉー」


 サイの獣人はユーリを肩に乗せ、イッちゃんを担いで走り出した。

 それも大男とは異なる街の方向にである。


「ど、どうしようリュウ! どっちを追いかければいいの!?」


 焦り出す僕は、頭の切れるリュウに方針を仰いだ。

 リュウは汗を一筋垂らしながら、目を閉じる。

 数秒して、


「……二手に分かれよう」

「二手に?」

「……そうだ。戦力は大男を追うグループに少しだけ割らせてもらう」


 確かに。

 追いついたところで戦えなきゃ意味ないんだ。


「そ、それで、どういうチームか早く教えて! じゃないと見失っちゃうよ!」

「……まぁ落ち着け。リコを追うチームは、俺、シオン、ナツミだ」

「うっし!」

「了解だよ!」


 名前を呼ばれたシオンとナツミちゃんが返事する。

 ということはつまり。


「僕とハナちゃんが、イッちゃんを助ければいいんだね?」

「……あぁ。そういうことになるな」

「わかった!」

「承知しましたわ」


 僕はハナちゃんのほうに向きなおり、


「絶対助けようね、ハナちゃん!」

「もちろんですわ!」

「……ウシオを頼んだぞ、ハナ」


 ……あれ?


「ちょっとリュウ! そこは『……ハナを頼むぞ、ウシオ』じゃないの!?」

「……ハナのほうが強いし頭も回るからな。当然だろ?」

「グワアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」


 バ、バカな……っ!

 でも確かに……そうだと認めざるを得ないかも。

 自分のふがいなさに頭をかかえていると、リュウが出発を宣言した。


「……よし、お前ら。絶対に助けるぞ!」

「「「おう!!!」」」


 こうして、僕らは二手にして別れた。

 イッちゃんを取り返すべく、僕とハナちゃんは白い街のほうへと走り出す。

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